借金を抱えている人は、「就職面接で影響が出るのだろうか?」と不安を抱えているかもしれません。しかし、基本的に企業が勝手に個人の信用情報を調査することはできないため、自ら借金の有無を言わない限りは知り得ません。
では、面接時に「借金はありますか?」と聞かれた場合は、どのように答えるのが正解なのでしょうか。
今回は、借金の有無が就職面接で遺教はあるのか、万が一、借金の有無を問われた場合にどのように対応すれば良いのかについて詳しく解説します。これから就職活動を本格化させる方、借金問題に不安を抱えている方はぜひ参考にしてください。
目次
借金の有無が就職面接で影響はある?
借金を抱えている人は、「今後の就職面接で影響が出るのではないか?」と不安を抱えているかもしれません。しかし、基本的には借金が就職面接に影響を与える可能性は低いと考えられます。
まずは、借金と就職面接の関係性や影響について解説します。
基本的に「影響はない」と考えられる
就職活動を行う上で借金の有無は、基本的には関係ないと考えられます。その理由は、以下の通りです。
- 企業は個人の借金の有無を把握できないため
- 借金情報は個人情報であるため
個人情報である借金の事実は、企業が勝手に把握することはできません。そのため、就職希望者に借金があるかどうかがわからないため、影響は出ないと考えられます。
金融機関関連の就職面接では影響が出る可能性がある
基本的に借金の有無が就職面接で影響を与える可能性は低いですが、金融機関に就職を希望する場合であって、実際に面接を受けた際は影響がでる可能性があります。とくに金融機関は大きなお金を取り扱う期間であるため、就職希望者の金銭感覚などを把握しておく必要があるためです。
ただし、金融機関であっても就職希望者の個人信用情報などを自由に閲覧できるわけではありません。個人信用情報を確認するためには、原則「貸付審査の目的」を持っている場合のみです。よって、借金の有無が個人信用情報の紹介によって知られてしまう可能性は低いです。
しかし、高額なお金を取り扱う金融機関では、金銭感覚を確認するために借金の有無などを面接時に確認される場合があります。このとき、個人情報であることを理由に答えなくても問題はありません。
ただ、「借金の有無は答えられません」と聞いた採用担当者は、「もしかしたら借金があるかもしれない…」「言えないってことは、何か隠しているのかな…」と考え、影響が出る可能性が高いでしょう。借金の内容が目的別ローンやクレジットカードの利用なのであれば、正直に答えたほうが印象は良いかもしれません。
最終的に判断するのは企業の判断
企業に就職をする面接にて、借金の有無は基本的には関係ありません。しかし、お金を取り扱う企業などでは、就職に影響を与える可能性は否定できません。
なぜなら、個人が企業を選んで申し込みができるように、企業側も個人を選んで採用できるためです。たとえば、金融機関で経歴などが類似している学生A・Bがいたとします。Aさんは借金100万円を抱えていたとします。一方のBさんは一切の借金を抱えていなかったとします。この場合、金融機関として採用をしたいと思うのはBさんである可能性が高いです。
このように、最終的に判断をするのは採用を決定する企業であるため、借金の有無がまったく関係ないとは、一概に言えません。就職先やその業種その他の就活生などと比較した結果、影響が出る可能性を否定できない点に注意してください。
企業が個人の借金の有無を把握することは難しい
就職を検討している企業で、個人が借金をしているかどうかを判断するのは基本的に難しいです。次に、借金の有無を把握することが難しいと考えられる理由について、詳しく解説します。
企業が借金の調査を行うことはできない
一企業が個人の個人信用情報を調査することはできません。そのため、就活生の借金の有無を把握するのは困難です。
そもそも借金に関する情報はすべて、個人信用情報機関によって管理、運営されています。日本には以下3種類の個人信用情報機関があります。
- シー・アイ・シー(CIC)
- 日本信用情報機構(JICC)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
いずれの個人信用情報機関も以下の条件を満たした場合に限って、管理している情報の開示を行います。
- 本人による開示請求であること(第三者に受領させることは禁止)
- 本人からの委任状がある場合に限って、第三者による開示請求が有効
- クレジット契約等の申込みを受けた場合
基本的には上記の範囲内でしか請求はできません。たとえば、本人の意思によって自ら開示請求を行ったり、代理人を立てて請求したりすることはできます。ただし、企業が本人の意思に反して代理することは許されません。また、仮に代理する場合であっても細かな条件があり、必要書類も複雑であるため勝手に開示請求を行うことはできません。
その他、開示請求できる場合は、クレジット契約等の申込みをした場合や途上与信を行う場合に限られています。
たとえば、ローン契約やクレジットカード契約、割賦契約を申込みをした場合は返済能力を調査するために開示請求が行われます。その他、契約後に定期的に行われる途上与信でも、改めて開示請求を行うことができます。
原則、個人信用情報を開示請求できるのは上記に限定されているため、企業が個人の借金の有無を把握することはできません。また、企業から「個人信用情報を開示請求して提出してください」と言われた場合であっても、応じる必要はありません。
面接に「借金がありますか?」と問われることはある
企業側が借金の有無を勝手に確認することはできませんが、採用・不採用を判断する上で必要と判断された場合は、「借金がありますか?」と聞かれる可能性があります。企業側がお金のトラブルを懸念して借金の有無を聞くことに違法性はないため、聞かれた場合は正直に答えるのが良いかもしれません。
とくに警察官などの職業に就くことを検討している人は、面接時に借金の有無を問われることが多いです。このとき、「借金があります」と正直に答えても問題はありません。しかし、借金があることを理由に採用・不採用の基準に影響を与える可能性があるため注意しなければいけません。
なお、公務員を希望している人は身上調査が行われます。このときも、借金の有無を勝手に調査することはできません。あくまでも、就職希望者本人に問うことしかできません。また、仮に聞かれた場合であって、借金があると伝えた場合であっても絶対に就職できないわけではありません。あくまでも各就職先が判断をするためです。
聞かれた場合は正直に答えるのがベスト
面接時に借金の有無を問われた際は、正直に答えておいたほうが良いかもしれません。
借金問題は個人情報であるため、言いたくないことを無理に伝える必要はありません。そのため、「答えたくありません」といっても良いでしょう。ただ、企業としては「質問に答えてもらえなかった」という印象が残ります。この事実が、採用・不採用を判断する上で影響が出る可能性もあるでしょう。
また、企業として借金がある人を採用したくないと考えているケースもあります。この場合、正直に「借金があります」と答えたり「答えられません」と答えたりした場合は、影響が出るかもしれません。
とはいえ、現在では多くの人がスマートフォンの割賦契約やクレジットカードを持っています。そのため、「まったく借金はありません」という人のほうが珍しいです。借金の有無を問われた場合は、正直に答えておいたほうが良いかもしれません。
すでに借金がある場合の面接時の対処法
すでに借金がある場合は、「大丈夫なのだろうか…?」と不安を抱えていることでしょう。次に、借金がある場合の面接時の対処法について解説します。
借金の有無を聞かれた場合は正直に答える
企業によっては、個人に借金の有無を聞く場合があります。その目的は、お金に関するトラブルを事前に防止するためです。そのため、後のトラブルを回避するためにも、聞かれた場合は正直に答えておいたほうが良いでしょう。
ただ、言いたくないのであればいう必要はありません。「答えたくありません」と正直に答えれば良いでしょう。ただ、その事実が採用・不採用を決定する上での判断材料になる可能性はあるでしょう。そのため、答える際は慎重に検討したほうが良いです。
滞納をしていなければ大きな問題はない
借金を抱えていることが面接にて不利になるのではないか、といった不安を抱えている人が多いかもしれません。しかし、滞納をしていなけば問題はありません。
そもそも、10代〜20代の学生であってもクレジットカードを所有している人が多いです。クレジットカードのショッピング枠も借金の一部であるため、「まったく借金を抱えていない」という人のほうが少ないです。また、自動車などの目的別ローンや奨学金などの借金を抱えている人も多いです。そのため、むしろ「一切の借金を抱えていない人」は珍しいです。
上記のことからも、借金を滞納したり自分のキャパを超えて借入していなければ大きな問題はないと考えられます。よって、面接時に借金の有無を聞かれた際には、「クレジットカードや奨学金の利用があります」などと答えても良いでしょう。
借入件数・借入金額が過剰でなければ問題はない
企業が個人に対して借金の有無を聞く理由は、お金に関するトラブルを事前に防止するためです。たとえば、多額のお金を取り扱う企業に就職を希望している場合、借金の返済苦による横領事件を起こす可能性などを危惧しています。そういったトラブルを事前に回避するために、「借金はありますか?」と問います。
そのため、明らかに高額な借入をしていたり明らかに借入件数が多い場合を除いて、大きな問題はありません。
基準としては、借金総額が自分の年収の1/3を超えている場合、返済比率が月収の30%を超えている場合は危険であると判断できます。また、借入件数が5件以上の人は多重債務者であり、今後破産する危険性が高いです。
企業は個人の詳細な借金状況まで把握できませんが、中には事細かく確認する企業がいるかもしれません。その際は、上記の基準を超えている場合に影響が出るかもしれません。
心配な場合は面接前に精算しておいたほうが良い
借金があることについて後ろめたさを感じているのであれば、面接に参加する前までに精算しておいたほうが良いです。精算方法として有効なのは、すべて一括で返済を済ませる方法です。
貯金を使って、あるいは親などに相談をしてすべて精算をしてしまえば、胸を張って「借金はありません」と伝えられますし、就職に影響が出ることもありません。その他の借金精算方法として、債務整理もありますが、個人信用情報に異動情報が掲載されてしまうためおすすめはできません。
もし、借金の返済が苦しくて就職をする前に精算しておきたいと考えているのであれば、司法書士などの専門家に相談をした上で債務整理を検討されてみてはいかがでしょうか。
就職後に借金が問題になるケース
面接に借金の有無を聞かれなかったり、影響が出なかったりした場合であっても、就職後に問題となるケースがあります。次に、就職後に借金が問題になるケースについて詳しく解説します。
借金を滞納して債務者と連絡が取れなくない場合
借金を滞納してしまった場合は、就職後に影響が出る可能性があります。
まず、借金を滞納すると債務者である個人に対して電話や書面によって支払督促が行われます。その時点で債権者側と話をして支払いに関する約束をした場合は、影響が出る可能性は低いです。
しかし、「電話や書面をもらっても返済できないから…」といって無視や放置をした場合は、勤務先に電話がかかってくる場合があります。もし、勤務先に電話がかかってきてしまった場合は、周囲の人や会社の人に借金があることを知られてしまいます。
ただ、中には「貸金業者は督促を目的として勤務先に連絡をしてはいけない」と思われている人がいるかもしれません。たしかに、貸金業法では「正当な理由なく債務者の勤務先に連絡をしてはいけない」といった趣旨の内容が記載されています。
しかし、連絡をしてはいけないのは、あくまでも「正当な理由がない場合」です。債務者に電話や書面、あるいは訪問をしても一切の連絡が取れない場合は、止むを得ないと判断されても仕方ありません。その結果、より確実に話をできるであろう勤務先に電話がかかってきても違法性はありません。
そのため、就職後の影響を回避するためにもかならず、支払いに遅れないこと、万が一遅れてしまった場合は連絡を密に取り合うことを徹底されたほうが良いでしょう。
借金を滞納して強制執行となった場合
借金を滞納し続けて強制執行となった場合は、かならず就職先で影響が出ます。なぜなら、強制執行によって第三債務者である給与支払い者(勤務先)に対して差し押さえが行われるためです。
強制執行とは、借金を約束通りに返済されなかった場合に債権者が裁判所に対して申し立てを行い、債務者の財産を強制的に差し押さえる手続きのことを指します。債務者本人に借金を一括で返済できるだけの財産がある場合は、その財産を差し押さえて終了するため、勤務先に影響はありません。
しかし、多くの場合は一括で返済できるだけの財力がありません。そのため、給与を差し押さえられてしまうケースがほとんどです。給与の差し押さえは債務者に対して行われるものではなく、給与支払い者である勤務先(これを第三債務者と言います)に対して行われます。
第三債務者とは、主債務者(実際に借金をした人)に対する債務を持っている人を指します。給与支払い者は主債務者に対して「給与支払い」といった債務を持っているため、この債務部分が主債務者の財産です。
給与の支払いが行われると、第三債務者に対して差し押さえの通知が送付されます。その内容を確認した給与支払い者は、主債務者に対して支払う給与の一部を債権者に支払います。そのため、強制執行が行われた場合は高確率で勤務先に借金を知られてしまうと思っておいたほうが良いです。
なお、強制執行を回避するためには以下の方法が有効です。
- 支払いに遅れないこと
- 法的手続き移行前に和解すること
- 法的手続き移行後は異議申し立てをすること
- 債務整理をすること
最も有効な方法は、支払いに遅れないことです。万が一遅れてしまった場合であっても、すぐに返済をしたり返済方法の相談をしたりすることで強制執行は免れます。もし、支払い自体が難しいのであれば、債務整理を検討したほうが良いかもしれません。
何らかの不安を抱えている人は、司法書士などの専門家にご相談ください。
借金を抱えたまま就職面接に挑む際によくある質問
借金を抱えたまま就職面接に挑む際によくある質問を紹介します。
Q.借金の有無で嘘をついたらバレますか?
A .バレる可能性があります。
たとえば、面接時に借金の有無を問われた際に「借金はありません」と嘘をついた場合、バレてしまう可能性があるかもしれません。たとえば、世間話の流れでバレてしまったり、滞納による職場への連絡や強制執行によってバレる可能性が考えられます。
その他、借金の支払い遅延による異動情報掲載でクレジットカードを持てないと、影響が出たりバレたりするかもしれません。勤務先によっては、個人のクレジットカードで立替払いをお願いするケースもあるためです。
ただ、就職後に借金の有無で嘘をついていたことが知られてしまったとしても、そのことを理由に解雇されたり異動となったりする可能性は低いです。そのため、過度に不安を感じる必要はないでしょう。
Q.企業が借金の有無を聞く意図は何ですか?
A .お金のトラブルを事前に防止するためです。
企業が借金の有無を聞く意図は、お金に関するトラブルを未然に防ぐためであると考えられます。とくにお金を取り扱う職種の場合は、横領事件など会社としての信頼に影響を与える可能性があります。
そのため、事前に借金の有無を把握することでお金に関する意識を調査し、採用・不採用を決定する際の判断材料にしている可能性が考えられます。ただ実際にその質問を問う意図は、企業によって異なるかもしれません。気になる方は、企業に直接聞かれてみてはいかがでしょうか。
Q.債務整理をした場合は就職に影響がありますか?
A .影響が出る可能性はあります。
債務整理が原因で就職に影響が出る可能性は以下の通りです。
- クレジットカードを作成できない場合
- 自己破産をした場合
まず、クレジットカードを作成できない場合に影響が出る可能性があります。就職する企業によっては、個人のクレジットカードで立替払いを行ってもらう場合があります。そういった場合に債務整理によるクレジットカードの作成ができず、影響が出る可能性が考えられます。ただ、この場合はデビットカードなどの代替によって対応できるため、大きな影響はないでしょう。
もっとも就職に影響を与える可能性があるのは、自己破産をした場合です。自己破産の手続きを開始し、破産手続き開始決定を受けたあと、その他免責不許可となった場合は職業制限を受けます。
職業制限を受けている間は復権するまで特定の職種に就職することができません。具体的には、警備員や生保募集人、士業などさまざまな職種です。
復権するためには以下の方法があります。
- 当然復権
- 申立てによる復権
当然復権とは、免責許可決定を受けた場合に起こります。免責許可決定を受けたことによって、経済的に再生したことになるため復権するのが当然であるためです。また、免責不許可となった場合であっても、個人再生によって再生計画の許可決定を受けることによって当然復権します。その他、免責不許可となった場合で詐欺破産罪に該当することなく10年経過した場合は当然復権となります。
申立てによる復権とは、破産者ではない状態になり申し立てを行った場合に行われます。たとえば、借金をすべて返済した場合やその他の方法によって免責となった場合、申し立てを行うことにより復権できます。復権されるまでの間は職業制限を受けるため、特定の職種に就職できないため大きな影響が出るでしょう。
ただ、多くの場合は自己破産の免責許可決定によって復権します。これから債務整理を検討している人や、就職を控えていて不安を抱えている人は、司法書士などの専門家に相談をされてみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、借金の有無が面接時にどういった影響を与えるのかについて紹介しました。
基本的に借金の有無を企業などが勝手に把握することはできないため、自ら言わない限り知られてしまう可能性は極めて低いです。しかし、職種によっては、借金の有無を聞かれたり採用・不採用を判断する上で重要な材料となる場合があります。
万が一、面接時に「借金はありますか?」と聞かれ場合は、正直に答えても良いですし答えられないといっても問題はありません。借金問題は、個人情報であるため、伝えたくないのであれば伝える必要はないでしょう。
しかし、多くの人がクレジットカードやスマートフォンの割賦契約、目的別ローンや奨学金など借金を抱えているのが当たり前です。そのため、過剰な金額・件数ではない限り、正直に答えたところでマイナス評価になる可能性は低いでしょう。
嘘をついても後からバレてしまう可能性があるため、その辺りにも十分な注意が必要です。今後、就職するにあたって借金問題に不安を抱えているのであれば、司法書士などの専門家に相談をされてみてはいかがでしょうか。