債務整理のメリット・デメリットを詳しく解説!どんな事に注意するべき?

債務整理のメリット・デメリットを詳しく解説!どんな事に注意するべき?

債務整理をすることによって、借金を減額、あるいは借金の返済義務を免除できるという大きな経済的メリットがあります。そのため、多くの方がリスクやデメリットを懸念されていることでしょう。

実際、債務整理をすることによって、大きな経済的メリットがある反面で多くのデメリットが存在します。

そこで今回は、債務整理の種類と概要をお伝えするとともに、債務整理のメリットやデメリットについてもお伝えします。債務整理のデメリットを懸念して、なかなか一歩を踏み出せない方は、これからお伝えすることをぜひ参考にしてください。

この記事の監修者

近藤邦夫

司法書士法人 浜松町歩法務事務所」代表司法書士。 愛知県岡崎市出身。 昭和64年早稲田大学法学部卒業。 長年にわたり、債務整理を行い、 また宅地建物取引士の資格を生かし、不動産登記や商業登記も行なっている。

目次

債務整理の種類と概要

債務整理をすることによってあなたが抱えている借金を減額できたり、返済義務を免除されたりします。しかし「債務整理」とはいっても、いくつかの種類があることをご存知でしょうか。

どの債務整理を選択するかによって、得られる経済的メリットと自分が受けるデメリットの大きさが変わります。

債務整理によるメリットやデメリットをお伝えする前に、まずは債務整理の種類と概要についてお伝えします。自分がどの債務整理を検討するか?について、ある程度絞っておき、実際どのようなメリットとデメリットが発生するのかを参考にしてください。

利息をカットする「任意整理」

任意整理とはあなたが抱えている借金の利息部分をカットし、元金のみを原則3年以内に返済するよう交渉をする債務整理手続きです。

任意整理は他の債務整理とは異なり、債権者との交渉であるため、相手次第では比較的スムーズに手続きを進められるでしょう。一方で、相手次第では減額できる借金額が少なかったり、厳しい和解条件を提示されてしまう恐れがある手続きです。

ただ、一般的には借金の現在までに発生している利息(発生利息)や遅延損害金(遅延利息)、将来発生する利息(将来利息)をカットできます。本当に元金のみの支払いで済むため、経済的なメリットはとても大きいでしょう。

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借金を大幅に減額できる「個人再生」

個人再生はあなたの借金額や所有している財産の価値に応じて、借金を減額する債務整理手続きです。

たとえば、あなたが500万円の借金を抱えている場合は最大で100万円まで減額できます。さらに、あなたが5,000万円の借金を抱えている場合は、最大で1/10である500万円まで減額できるのが個人再生です。

個人再生にはいくつかの種類があり、どの手続きを行うかによっても減額できる最大金額が異なります。詳しくは下記記事でお伝えしているので、個人再生を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

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借金の返済義務を免除できる「自己破産」

自己破産とは、あなたが抱えているすべての借金(非免責債権は免責できない)の返済義務を免除(免責)にできる債務整理手続きです。借金が1円も残らないという特徴はありますが、多くのデメリットが発生するのも自己破産ならではの特徴です。

なお、「自己破産はギャンブルや浪費で作った借金はできない」と思われがちですが、できる可能性はあります。自己破産を検討されている方で、自己破産について詳しく知りたい方は、下記記事でお伝えしています。ぜひ参考にしてください。

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【債務整理別】メリットとデメリット

債務整理には任意整理・個人再生・自己破産の3種類ありますが、それぞれ得られるメリットとデメリットは異なります。

次に、各債務整理手続きのメリットとデメリットについてお伝えします。これから債務整理を検討されている方は、実際に受ける恐れのあるメリットとデメリットを把握したうえで、どの債務整理を行うか?判断材料にしてください。

任意整理のメリット・デメリット

任意整理のメリットは下記の通りです。

  • 取り立てが止まる
  • ひとつの債務から手続きができる
  • 交渉であるため手続きが簡単かつ費用も安い
  • 利息部分の借金を減額できる
  • 毎月の返済金額が軽減できる

一方で、デメリットは下記の通りです。

  • 借金の減額ができない・自分の思い通りにならない可能性がある
  • 他の債務整理と比較して減額金額が少ない
  • 個人信用情報にキズがつく

まずは、任意整理のメリットとデメリットから詳しくみていきましょう。

任意整理のメリット1:取り立てが止まる

司法書士や弁護士など、法律の専門家に任意整理手続きを依頼すると、債権者からの取り立てが止まります。

通常、借金の返済が苦しくなり、借金を滞納してしまうと厳しい取り立てが開始されます。具体的には、毎日の電話や書面による取り立て、自宅訪問などです。実際、今現在もこれらの取り立てを受けている方がいるでしょう。

しかし、任意整理を専門家に依頼することで、これらの取り立てを一切停止することができるのです。

その理由は、貸金業法という法律によって、取り立て行為の規制を行っているためです。この法律では、債務者が司法書士や弁護士などの専門家に債務の整理を依頼した場合は、正当な理由なく連絡をしてはいけないと定めています。

参考:貸金業法|第21条(取り立て行為の規制)

よって、「借金の返済が苦しい…」と感じている方は、まずは司法書士や弁護士といった専門家に相談をされてみてはどうでしょうか。

任意整理のメリット2:ひとつの債務から手続きができる

任意整理のメリットとして、ひとつの債務から手続きをできるということがあげられます。どういうことかというと、あなたが複数の借金を抱えていた場合であっても、特定の債務のみを整理できるということです。

たとえば、あなたがクレジットカードAと自動車ローンB、住宅ローンCを抱えていた場合、「車と住宅は残しておきたい…」と考えるでしょう。そういった場合は、クレジットカードAのみを任意整理できるのです。

他の債務整理はすべての債務が対象になるため、自動車を手放さなければいけなかったり、住宅を手放さなければいけないこともあります。任意整理であれば、特定の債務のみを清算できるので大きなメリットと言えるでしょう。

任意整理のメリット3:交渉であるため手続きが簡単かつ費用も安い

任意整理は債権者と直接交渉をして、利息を減額してもらう債務整理手続きです。裁判所を介す必要がないため、比較的簡単な手続きで減額ができます。

また、任意整理にかかる費用も他の債務整理と比較して安いため、メリットは大きいと言えるでしょう。

実際、その他の債務整理は30万円程度〜が相場ですが、任意整理の場合は1社4万円程度〜可能です。手元資金が少なくても手続きを開始できるのは、任意整理のメリットと言えるでしょう。

MEMO
任意整理費用やその他の債務整理費用の準備が難しくても、手続きを開始することはできます。司法書士事務所などで分割払いにも応じますし、法テラスの民事法律扶助制度を利用することで、費用を立て替えてもらうこともできます。まずは、相談をされてみてはどうでしょうか。

任意整理のメリット4:利息部分の借金を減額できる

任意整理は利息部分をカットできる債務整理手続きです。つまり、本来支払うはずだったお金を支払わずに済むということです。これは、任意整理最大のメリットと言えるでしょう。

たとえばあなたが、100万円の借金を年率15%で借りていたとして、5年程度での完済を目指していた場合、遅延することがなければ利息で「427,340円」発生します。しかし、任意整理によって0円になるということです。

メリット5:毎月の返済金額が軽減できる

任意整理をすることによって利息がカットされるため、原則元金のみの返済で済みます。元金は原則3年以内で完済できるように調整をしますが、返済が厳しい場合には、5年程度の期間を設定してもらえることもあります。

利息をカットされることによって、毎月少ない金額の支払いでも確実に元金を減らすことができるため、毎月の返済額を軽減できる可能性もあるでしょう。

任意整理のデメリット1:借金の減額ができない・自分の思い通りにならない可能性がある

任意整理は債権者との交渉手続きであるため、債権者が交渉に応じない可能性があります。仮に応じたとしても、利息の全カットを認めないこともあります。つまり、借金を減額できなかったり、自分の思い通りに減額できなかったりする恐れがあるので注意しなければいけません。

とはいえ基本的には、司法書士や弁護士が交渉を持ち掛ければ、減額できる債権者が大半です。ところが、中には断固として任意整理交渉には応じない債権者もいます。運悪く、そのような債権者と付き合いがある方は、その他の債務整理を検討するしかないでしょう。

また、基本的には任意整理に応じる債権者であっても、取引期間が極端に短い場合などは応じてもらえない恐れがあります。まずは、司法書士や弁護士などの専門家に相談をして、今後の対応を検討しましょう。

任意整理のデメリット2:他の債務整理と比較して減額金額が少ない

任意整理はあくまでも「利息」をカットするのみです。そのため、他の債務整理と比較してしまうと、減額できる金額が少ないです。

任意整理には多くのメリットはありますが、あなたが抱えている借金状況次第では、その他の債務整理を検討されたほうが良いでしょう。

任意整理のデメリット3:個人信用情報にキズがつく

任意整理に限ったことではありませんが、債務整理をすることによって個人信用情報にキズがついてしまいます。

その結果、最長で5年間はクレジットカードの作成が難しかったり、ローン契約が難しかったりします。絶対に不可能か?といえば、そうとも言い切れませんが、99%審査通過は困難と思っておいたほうが良いでしょう。

とはいえ、任意整理はその他の債務整理と比較すれば、信用情報が回復するまでの期間が短いです。デメリットとは言いつつ、債務整理として見ればメリットにもなり得るでしょう。

個人再生のメリット・デメリット

個人再生のメリットは下記の通りです。

  • 借金を大幅に減額できる
  • マイホームを残しておける
  • 財産を残しておける
  • 借金の理由を問われない

一方で、個人再生のデメリットは下記の通りです。

  • 合計で3回官報に掲載される
  • かならず借金が残る
  • すべての借金が対象になる
  • 再生計画の認可を受けられないことがある

次に、個人再生のメリットとデメリットについて詳しくみていきましょう。

個人再生のメリット1:借金を大幅に減額できる

個人再生はあなたの借金総額に応じて、最大100万円まで大幅に借金を減額できます。

【個人再生の借金減額】

借金総額 最大減額金額(最低弁済額)
100万円以下 減額なし(全額返済)
100万円〜500万円 100万円
500万円〜1,500万円 1/5
1,500万円〜3,000万円 300万円
3,000万円〜5,000万円 1/10

たとえば、あなたが借金500万円抱えていた場合は、最大で100万円まで減額できます。つまり、400万円の借金を減額できることになるため、相当な経済効果に期待ができるでしょう。一方で、個人再生の場合は5,000万円を超える借金に対する手続きはできません。

とはいえ、一般の方が住宅ローンを除いて5,000万円以上の借金を抱えることはそう多くないため、ほとんどの個人が利用できる制度と思っておいて良いでしょう。

個人再生のメリット2:マイホームを残しておける

個人再生は大幅に借金を減額できる一方で、住宅ローンを省いて手続きを進めることができます。つまり、住宅ローン以外の借金を減額することができる仕組みです。

自分の住まいを確保したまま借金を大幅に減額できるため、マイホームを持っている方は大きなメリットになるでしょう。

たとえば、自己破産をした場合はすべての借金が対象になるため、当然マイホームも手放さなければいけません。しかし、個人再生であれば、マイホームを手元に残しておけるという特徴があります。

個人再生のメリット3:財産を残しておける

個人再生は借金を大幅に減額できる一方で、自分が残しておきたい財産を残しておくことができます。たとえば、「普段から車を使用するから、残しておきたい」などといった場合でも、ローンが残っていなければ残しておけます。

ただし、清算価値保障原則に従って、最低弁済額が増える可能性もあるので注意しなければいけません。清算価値保障原則とは、あなたが残しておく財産の価値と同等の金額は最低でも返済しなければいけないというものです。

たとえば、あなたの借金が500万円だった場合は、本来の最低弁済額は100万円です。しかし、あなたが「時価300万円相当の自動車を残しておきたい」といった場合は、最低弁済額が300万円以上になります。

つまり、最低弁済額の金額が増えてしまう恐れがあるため、経済的なメリットが少なくなる恐れがあります。その辺りも考慮したうえで、個人再生を検討されてみてはどうでしょうか。

個人再生のメリット4:借金の理由を問われない

個人再生は借金の理由にかかわらず、手続きを進められます。

自己破産の場合は、免責不許可事由というものが定められており、ギャンブルや浪費によって作った借金は原則免責許可がおりません。しかし、個人再生の場合はギャンブルや浪費などで作った借金でも減額が可能です。

自己破産を開始したけど免責不許可決定を受けてしまった方などであっても、個人再生ならばできる可能性があります。ぜひ検討されてみてはどうでしょうか。

個人再生のデメリット1:合計で3回官報に掲載される

個人再生手続きを開始した場合は合計で3回、国の機関紙である官報に個人情報が掲載されます。個人情報掲載タイミングは下記の通りです。

  • 個人再生手続き開始決定のとき
  • 書面による決議に付する旨の決定のとき
  • 再生計画許可決定のとき

まず、個人再生手続きを開始したときに掲載されます。掲載する目的は、債権者に対してあなたが個人再生の手続き開始を決定したことを伝えるためです。そのため、事件番号やあなたの氏名、住所などが掲載されます。

2回目は、書面による決議に付する旨の決定をしたときです。債権者からの異議申し立てを聞き入れるために、必要であるため官報によって通知をします。最後に、再生認可決定を受けたときは、その事実を債権者にお知らせするために情報を掲載します。

つまり、官報に掲載される意味や目的は、あなたに対する社会的制裁の意味ではなく、あくまでも債権者に対するお知らせです。

官報は誰でも閲覧できるため、家族や会社の同僚、友人・知人などにバレてしまう可能性は少なからずあります。しかし、官報掲載の目的を理解すれば、過度に不安を感じる必要はないでしょう。

MEMO
官報は誰でも閲覧できますが、毎日膨大な量の情報が掲載されている中で、あなたの官報情報を発見することは非常に困難です。官報に掲載される回数が増えれば、バレるリスクも高まりますが、あまり心配する必要はないでしょう。

個人再生のデメリット2:かならず借金が残る

個人再生は借金を減額する債務整理手続きであるため、かならず借金が残ります。借金が残っても返済できない方や、返済能力がない方は個人再生手続きを開始することができない恐れもあります。

自分の状況を考慮したうえで、本当に個人再生が正解なのか?個人再生をするべきなのか?について検討されたほうが良いでしょう。

個人再生のデメリット3:すべての借金が対象になる

個人再生はマイホームを除くすべての借金が対象になります。そのため、自動車ローンを抱えている方やクレジットカード、その他のローンなどすべての取引が終了してしまいます。

自動車ローンを抱えていた場合は、取引終了に伴って、自動車を引き上げられてしまう可能性があります。今後の生活にも影響をあたえる恐れがあるため、注意しなければいけません。自動車ローンを残しておきたいのであれば、任意整理を検討されたほうが良いでしょう。

なお、個人再生手続きが終了したあとであっても、改めて自動車を購入することはできます。ローンを組むのは難しいですが、購入は可能なので安心してください。

個人再生のデメリット4:再生計画の認可を受けられないことがある

個人再生は小規模個人再生と給与所得者再生の2種類があり、小規模個人再生の場合は債権者の同意がなければ再生認可を受けられない恐れがあります。再生認可が受けられなければ、当然借金を減額することもできないため、そもそも個人再生を行う意味がありません。

小規模個人再生で再生認可がおりるためには、債権者の半数以上の同意がなければいけません。つまり、債権者の半数以上が再生計画を認めなければ、借金を減額できなくなる恐れがあるということです。

万が一、小規模個人再生をできなかった場合で、給与所得者あるいは給与所得者と同等の安定した収入がある方は、給与所得者再生の利用ができます。給与所得者再生は、債権者の同意・不同意に関係なく借金を減額できます。

ただし、可処分所得(手取り給料)の2年分までしか減額できません。つまり、あなたの可処分所得が300万円だった場合は、最大でも600万円までしか借金を減額できないため、借金額次第では個人再生を行う意味がなくなってしまうでしょう。

自己破産のメリット・デメリット

自己破産のメリットは下記の通りです。

  • 借金の支払いが全額免除される(非免責債権あり)
  • 最低限の財産は残しておける

自己破産のデメリットは下記の通りです。

  • 合計で2回官報に掲載される
  • マイホームや自動車など高価なものは処分の対象になる
  • 手続き中は長期間の旅行・転居を規制される
  • 資格制限を受ける
  • 免責不許可事由に該当すると自己破産ができない

次に、自己破産のメリットとデメリットについて詳しくみていきましょう。

自己破産のメリット1:借金の支払いが全額免除される(非免責債権あり)

自己破産をすることによって、非免責債権を除くすべての借金の返済義務を免れます。クレジットカードや消費者金融からの借り入れはもちろん、各種ローンの返済義務も免除されます。

借金の返済が本当に苦しいと感じている方にとっては、最後の砦といっても良いでしょう。他の債務整理も難しく、借金を返済することができないという状況ならば、最終的には自己破産を検討するしかありません。

ただし、自己破産では免除できない借金(非免責債権)もあるので注意してください。非免責債権の一例は下記の通りです。

  • 滞納している光熱費
  • 滞納している公的年金や保険料
  • 損害賠償金
  • 税金
  • 罰金

非免責債権に該当した場合は、自己破産によって借金を免責にすることができません。万が一、非免責債権に該当しそうな債務を抱えている場合には、あらかじめ司法書士や弁護士に相談しておくと良いでしょう。

自己破産のメリット2:最低限の財産は残しておける

「自己破産をするとすべての財産を処分しなければいけない」と思っている方は多いでしょう。実際、一定以上の財産をすべて処分して、債権者に分配をしなければいけません。

しかし、自己破産後にあなたが最低限生活を送るための財産は残しておける可能性があります。一般的に残しておける財産の例は下記の通りです。

  • 99万円以下の現金
  • 新得財産
  • 差押禁止財産
  • 自由財産の拡張が認められた財産
  • 破産管財人が破産財団から放棄した財産

残しておける財産について、それぞれ詳しくみていきましょう。

99万円以下の現金

99万円以下の「現金」は手元に残しておくことができます。

新得財産

破産手続き開始決定後に取得した財産を新得財産と呼びます。新得財産は破産管財に含まれないため、当然残しておくことができます。

差押禁止財産

法律によって差し押さえが禁止されている財産は、自己破産時も当然に差し押さえができません。

自由財産の拡張が認められた財産

自由財産の拡張とは、破産者本人が裁判所に申し立てを行って認められた財産のことを言います。

たとえば、差押禁止財産をある程度定めていても、実際は各家庭の状況によって差し押さえられては困る財産があります。過疎地域に住む方から車を差し押さえてしまえば、その人の生活が立ち行かなくなってしまう恐れもあるでしょう。

また、家族が多くて手元に現金99万円だけあっても当面の生活費が足りない方がいるかもしれません。このように、実情は各家庭によって異なるため、破産者本人が裁判所に対して「この財産は残しておきたい」と申し立て、認められた財産は処分できません。

破産管財人が破産財団から処分した財産

あなたが自己破産をすると、あなたは破産者になります。破産者の財産は破産管財人(弁護士)が管理をしたり処分したりします(破産管財人が管理する財産のことを破産財団と言います)。

しかし、破産管財人の判断で価値をつけることができない財産などは、破産財団から放棄され、破産者が自由に処分できるようになります。たとえば、マニアの間では高値で売買できるようなフィギアなどは、破産財団から放棄される可能性が高いでしょう。

実際に放棄された財産は、自己破産によって失うことはなく、自分の手元に残しておくことができます。

自己破産のデメリット1:合計で2回官報に掲載される

自己破産をした場合は、破産手続き開始決定時および免責許可決定時の合計2回、国の機関紙である官報に個人情報が掲載されます。自己破産による官報掲載も、個人再生同様、債権者に対して破産手続きの開始決定をしたことや免責許可決定を下したことを知らせるためのものです。

よって、官報への掲載はあなたに対する社会的制裁の意味合いはまったくありません。可能性として、家族や友人・知人等にバレてしまう恐れはありますが、その可能性は極めて低いでしょう。

自己破産のデメリット2:マイホームや自動車など高価なものは処分の対象になる

ローンが終わっているマイホームや条件を満たした自動車は、すべて換価処分(現金に変えて債権者へ分配すること)の対象になります。唯一、残しておける財産は、先ほどお伝えしたあらかじめ定められている財産のみ(自由財産の拡張は可能)です。

また、マイホームや自動車ローンが残っていた場合は、自己破産をした時点で手放さなければいけません。自己破産を検討する前に、司法書士や弁護士に相談をしておくことで、住まいの確保資金等を調整してもらえる可能性もあります。

まずは、借金の返済が苦しいと感じた時点で早めに対応・相談するように心がけてください。

自己破産のデメリット3:手続き中は長期間の旅行・転居を規制される

破産手続き開始決定後〜免責許可決定を受けるまでの期間は、さまざまな制約があります。そのひとつとして、長期間の旅行や転居をされる場合には、裁判所の許可が必要になる点です。

もちろん、旅行や転居は可能ですが、裁判所の許可を得なければ出来なくなってしまうため、デメリットになり得るでしょう。

自己破産のデメリット4:資格制限を受ける

自己破産手続きを行った場合、破産手続き開始決定から免責許可決定時点までの期間は資格制限を受けます。万が一、免責許可決定を受けられなければ、最長で10年間は資格制限を受ける恐れがあるので、注意しなければいけません。

資格制限とは、特定の資格を制限することであり、たとえば司法書士や弁護士、税理士などのいわゆる士業から警備員や生命保険募集人など多岐にわたります。

資格制限一覧はこちら – リーガルサポート

万が一、あなたが資格制限の対象に該当する職に就いている場合は、大きな影響を与える恐れがあるので注意しなければいけません。

デメリット5:免責不許可事由に該当すると自己破産ができない

自己破産はすべての人が平等に認められるわけではありません。同じことを短期間で何度も繰り返している方や、借金をした理由が自分勝手な場合は、免責不許可事由といって免責許可を受けられない恐れがあります。

【免責不許可事由一覧】

  • 浪費やギャンブルによって借金を作った場合
  • 財産を隠したり贈与したりした場合
  • 特定の債権者のみに有利な支払いをした場合
  • 破産申し立てより1年以内に身分を偽ってお金を借りたりショッピング契約をした場合
  • クレジットカードなどを利用して商品を購入し、著しく安い金額で売却した場合
  • 今回の破産申立から7年以内に免責許可決定を受けている場合
  • 裁判所や破産管財人に協力をしない場合

参考:裁判所|免責不許可事由

要するに、借金の返済が不可能であるにもかかわらずお金を借りたり、自己破産することを前提で財産を隠したりなど、誰かが不利益を受ける行為をした場合。または、借金の理由が自分勝手な理由である場合には、免責不許可になる恐れがあります。

MEMO
免責不許可事由に該当する場合であっても、債務者がしっかり反省・改善している場合などは、裁判所の判断で免責許可を下します。これを、裁量免責と言い、実際は多くの方が認められています。

【Q&A】債務整理に伴うデメリットでよくある質問

債務整理には多くのメリットとデメリットが発生します。「債務整理のメリットとは?」と問われれば、多くの方が「借金を減額できる」あるいは「借金の返済を免除できる」と答えられるでしょう。

一方で、「債務整理のデメリットとは?」と問われると、なかなか難しいのが事実です。実際、債務整理は種類によってもデメリットは異なります。一概に言えないのが難しいところです。

今回はデメリットについてもお伝えしてきましたが、実際、「どういうことだろう?」と疑問を拭いきれていない方も多いでしょう。最後に、債務整理をする際に伴うデメリットに関わる質問についてお答えしていこうと思います。

これから債務整理を検討されている方は、これからお伝えすることも参考にしていただき、どの債務整理を行うか検討されてみてはどうでしょうか。

債務整理をすると一生ローン契約等ができなくなるのですか?

債務整理後、一定期間経過後はローンの契約やクレジットカードの作成が可能です。

そもそも、なぜ債務整理をするとローン契約が難しくなるのか?その理由は、債務整理によってあなたの個人情報にキズが付く、いわゆるブラックリストの状態になるためです。

実際、ブラックリストというリストは存在しませんが、個人情報にキズがついていることによってローン審査などに通過できない可能性が高くなります。なお、個人信用情報にキズがついているからといって、ローン審査に通してはいけないなどの法律はありません。

よって、あなたが債務整理をした直後であっても、ローン審査などに通る可能性はあります。ただ実態としては、各ローン会社やクレジットカード会社などが、厳しい判断をくだすため審査通過は難しいでしょう。

そして、債務整理をしてから5年〜10年経過した時点で、債務整理をした事実(事故情報)の掲載は終了します。そのため、一定期間経過後はローン契約等も可能になるでしょう。

ただし、債務整理の情報が消えたとしても、審査に通るかどうかは各カード会社等の判断次第です。絶対に通るなどの確証はないので、その辺りは注意してください。

債務整理後もローンは組める?ローン契約が可能になるまでの期間と注意事項を解説 債務整理後もローンは組める?ローン契約が可能になるまでの期間と注意事項を解説

官報とは何ですか?家族や友人にバレますか?

官報は国の機関紙です。ほぼ毎日発行されるもので、個人再生や自己破産に関わる情報のほか、公文や公示など国に関わるさまざまな情報を伝えるためのものです。

官報は一般の方でも購入したりインターネットを介したりしていつでもどこでも閲覧ができるため、家族や友人等にバレてしまう恐れはあります。しかし、官報を日常的に閲覧されている方は少ないため、過度に心配される必要はないでしょう。

ただ万が一、官報の個人再生あるいは自己破産の掲載欄を閲覧されてしまった場合には、ほぼ確実にバレるでしょう。なぜなら、あなたの氏名や住所などが掲載されてしまうためです。

「できればバレたくない」と考えるのは当然ですが、法律で定められていることであるため、情報掲載は避けられません。ただ、誰にもみられないことを祈るしかないでしょう。

債務整理が会社や家族にバレることはありますか?

債務整理が会社や家族にバレるか?については、会社と家族を別々で考える必要があります。

まず、会社にバレる可能性は極めて低いので安心してください。会社にバレる可能性としては、官報の掲載と資格制限によるものです。官報掲載は、日常的に官報を閲覧する会社、閲覧する人がいなければ過度に心配する必要はないでしょう。

そして、資格制限の対象となる職に就いている方が自己破産をした場合には、ほぼ確実にバレてしまいます。なぜなら、資格制限によってその資格、職に就くことができないためです。

つまり、個人再生や自己破産を選択しなければ、債務整理によって会社にバレる可能性はかなり軽減できます。「絶対にバレたくない」と思っているのであれば、経済的メリットこそ少ないですが、任意整理を検討されると良いでしょう。

次に、家族にバレる可能性ですが、同居家族の場合は隠しておくことは非常に困難です。とくに、個人再生や自己破産の場合はほぼ100%バレると思ってください。

その理由としては、同居家族の財産情報の提供を求められること、財産を処分しなければいけないことです。あなたが生計を一にする同居家族の資産状況は、裁判所に開示しなければいけません。あなたが、同居家族に「通帳を見せて欲しい」とか「源泉徴収が欲しい」といえば、当然怪しまれるでしょう。

また、個人再生や自己破産をした場合には、あなたが持つ財産を換価処分(お金に替えて処分)しなければいけません。今まで自宅にあった財産が、突然なくなれば当然怪しまれて、債務整理がバレてしまうでしょう。

唯一、家族にバレずに進められる債務整理手続きは、任意整理のみです。経済的メリットが他の債務整理と比較して少ないです。そのため、自分の借金状況をよく考慮したうえで、任意整理を行うべきかどうかを決定するべきでしょう。

債務整理後に現金で車を購入しても良いですか?

債務整理をしたあとに、現金で車を購入すること自体は、とくに問題ありません。ただし、タイミング次第ではあなたの財産として認められて換価処分などの対象になる恐れがあるので十分に注意しましょう。

まとめ

今回は、債務整理のメリットやデメリットについてお伝えしました。

債務整理には、あなたの借金を大幅に減額できるというとても大きな経済的メリットがあります。そのため、多くのデメリットも存在するので注意しなければいけません。

債務整理によるデメリットは、債務整理によって実際に受けられるメリットに比例する形で増えます。任意整理は経済的メリットが少ない一方で、デメリットも比較的少ないのが特徴です。

しかし、自己破産は借金の返済義務をすべて免除できるという、大きな経済効果がある反面、多くのデメリットが存在します。今回お伝えしたことを参考にしていただき、自分がどの債務整理を検討するべきか?行うべきか?について考えてみてはどうでしょうか。

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