偽装質屋とは?闇金と関係があるの?
偽装質屋という詐欺をご存知でしょうか?
2009年ごろから被害が急増している高齢者などを狙った詐欺行為で、消費生活センターに寄せられる偽装質屋相談の多くは年金の支給対象となる60歳以上の高齢者となっています。
ここでは偽装質屋の実態、手口、被害の実例、トラブルにあった際の対応方法などを詳しくご紹介しています。
偽装質屋の手口を知って、自分も周囲の高齢者も被害にあうことがないように注意喚起していきましょう!
一般的な質屋の仕組み
正当な質屋は、担保となるものを質屋に入れることでその品物に見合った金額を貸してくれるという仕組みになっています。
品物は宝石、貴金属、ブランドバッグ、ゲーム機、家電製品、アップル製品など換金価値のあるものならどのようなものでも良く、審査の上でそれぞれに見合った金額を貸してくれます。
返済期限は設けられますが、万が一返済できなかったら品物の所有権が質屋に移る「質流れ」となります。質流れになると担保とした品物を取り戻すことはできませんが、お金を返す必要もありません。
質流れとなった品物は第三者に販売されて質屋の利益となり、返済されなかった融資分の元金と利息の回収にあてられることになります。
偽装質屋とは?
偽装質屋は闇金の形態のひとつで、一応質屋と名乗ってはいますが実態は闇金と考えて間違いありません。
偽装質屋の手口1:年金受給者・生活保護受給者を狙った高利貸しを行う
偽装質屋が主にターゲットにしているのは年金受給者の高齢者や生活保護受給者です。偽装質屋はこういった人たちから適当な品物を質入れさせてお金を貸します。
一般の質屋からお金を借りる場合は、この質入れする品物で融資額が決まるのでモノが非常に大切になってくるのですが、偽装質屋では100円ショップで買った腕時計などでも良く預け入れるものは本当になんでも良いのです。
ただし、品物と一緒に年金・生活保護の受給口座として使用している銀行口座の預金通帳や印鑑、年金手帳なども預かれられることになります。偽装質屋で借り入れをする際には、口座番号の情報を求められるケースが多発しています。
ここがもっとも注意が必要なところで、偽装質屋は質屋と名乗りながら、年金や生活保護を狙った高利貸しなのです。
口座は偽装質屋が握っているため、返済期限になったら偽装質屋が預かった口座から直接元金と金利を取るのです。
一応担保として預けている品物はあるのですが、それらには一切の価値はなく、実質的な担保になっているのは生活保護・年金の受給口座なのです。
偽装質屋が高齢者や生活保護受給者などの経済的に弱い立場の人たちにお金を貸すのは、振り込まれる年金・生活保護費から確実に長く利息を回収できるからなのです。
偽装質屋の手口2:必ず返済させる
一般的な質屋なら借りたお金を返済できなかった場合は、担保として預けている品物を取り戻すことはできませんが、返済する必要もなくなり質契約もそこで終わりとなります。
しかし、偽装質屋ではこの質物を流すということができません。
年金などが振り込まれる口座を偽装質屋に押さえられてしまっているので、受給日のタイミングで勝手にお金を引き出されて返済に充てられることになるのです。
債務者は高い利息を払った残りで次の受給日まで生活しなければならないため、さらにお金に困ることになるでしょう。
偽装質屋の手口3:繰り返し偽装質屋を利用させる
年金・生活保護費が振り込まれても、偽装質屋に利息を返済することで生活費が足りなくなってしまったことで、生活費を補うために再度偽装質屋からお金を借りてしまう人もいます。
これも偽装質屋の手口で、利用者の借金を増やして長く利息を取り続けることで儲けを出しているのです。
偽装質屋の利息はどれくらい高いの?
一般的な質屋では、上限金利(年利)を109.5%に設定しています。これは質屋営業法によるものです。
しかし全国質屋組合に加盟している質屋では、なるべく流れない設定にするために、100%を超えない年利に設定しているお店もたくさんあり、実際に109.5%まで質料をとっているところは少ない傾向にあります。
ところが偽装質屋は150%を超える質料、高い場合は300%もとっていることもあるのです。
仮に5万円を年利300%で借りて30日後に返済する場合、質料は以下のようになります。
5万円 × 300% ÷ 365日 × 30日 = 12,739円
5万円を30日間借りただけで12,739円もの利息を払わなければいけないのです。
しかし、年金が2ヶ月ごとに15万円ずつ振り込まれる(2ヶ月ごとに返済する)としたら、元金と合わせても2ヶ月後に72,800円程度を払えばすぐに完済できることになり、借りる側も「それほど無理のある金額ではない」と錯覚することになります。
利息制限法の上限金利に基づいて金利を設定している大手消費者金融のアコムの場合、上限金利は年利18%になります。
同じく5万円を30日間借りた場合の利息は739円です。
偽装質屋の金利はそもそも違法で文字通り法外な高さですし、決して安くはないのです。
偽装質屋は闇金と関係があるの?
一応、質屋らしく担保となる品物は預かっているものの、偽装質屋が法外な金利でお金を貸している業者だということがお分かりいただけたと思います。
でも、見方によっては「高い金利で質屋を営んでいるだけでしょ?」と思えてくるかもしれません。
しかし、偽装質屋は違法行為であり、その実態は闇金に近いのです。
偽装質屋のほとんどは、質屋と言いながら古物営業法に基づいた公安委員会の許可を得ていません。
たとえ許可があったとしても、高利貸しをしているのであれば違法でお金を貸し付けている闇金と同じです。
また偽装質屋は実際のところ年金を担保にした貸付を行なっているのですが、年金担保貸付は「独立行政法人 福祉医医療機構」でのみ行われていて、その他の民間業者などが年金を担保にした貸付をすることは禁止されています。
<参考>:独立行政法人 福祉医医療機構 年金担保貸付事業・労災年金担保貸付事業
偽装質屋が100円の品物でも質に入れさせるのは年金担保貸付に該当しないための建前です。
しかし通帳や銀行口座を押さえられてしまうのであれば年金・生活保護を担保に融資しているのと同じで、こういった強引なやり方は闇金の手口になります。
実際にあった偽装質屋の被害と手口
ここでは実際に行われた偽装質屋の手口をご紹介します。記載している事例は、独立行政法人 国民生活センターに実際に寄せられた実例になります。
広告から質屋を利用したのですが・・・「福岡県 60代 男性」
広告を見て質屋に電話をしたら「なんでもいいから質に入れるものを持ってきて」と言われました。なんでも良いとのことだったのでゴミ同然の時計を持って行ったら9万円貸してくれました。
返済は2回に分けて年金支給日に口座引き落としで行うことになりました。
利息が高かったことから一括返済しようと思いましたが、11万円以上も返さなければならず到底支払うことができません。
私のコメント
年金だけでは生活が大変だったのかもしれませんが、これは非常に代表的な偽装質屋の手口になります。もし収入が年金のみだとすると、その中から元金9万円と利息を返済するのは非常に難しいでしょう。
また正規の質屋は返済ができなくても担保を質流れさせることで質料を回収するので、口座引き落としで返済を要求することは絶対にありません。
預けた質草に対して融資額が明らかに高い時にも気をつける必要があります。
チラシで見た質屋で高額融資を受けました「群馬県 70代 男性」
チラシで見た質屋に、壊れた時計と使い古しの布団、母親の古いネックレスを持っていき質に入れて高額な融資を受けました。
その際に質屋から「お金が必要なら年金を担保にして融資できるよ」と言われたので、勧められるままにお金を借りてしまいました。
返済は年金支給日に質屋に通帳を持って行って、質屋が引き出しを行うという方法です。生活に困っていてどうしたら良いかわかりません。
私のコメント
壊れている時計や使用済みの布団で高額融資を受けられたということですが、これも年金を担保にお金を貸すための罠です。
もしこの債務者男性が年金担保貸付は違法だということを知っていたとしても、お金を貸してくれるという目の前の人間に頼りたくなる気持ちは理解できます。
借りてしまった後でも国民生活センターに相談して情報提供したことは良い判断だったと思います。
高齢者でもお金を貸してくれると書いてあったので「熊本県 80代女性」
チラシに高齢者でも融資できると書いてあったので、事務所に行って指輪を預けて5万円借りました。
ひと月4,000円の利息を払えば何度でも借り換えができるとのことだったので、事務所に行っては利息を返済してお金を借りて・・・という行為を繰り返していました。
すると、返済を口座引き落としにするようにとすすめられたので引き落としにしたのですが、引き落とし額が多いように感じらました。
友達から、この借入先は問題があると教えてもらいました。次回の年金支給日の引き落としを止めることはできるでしょうか。
私のコメント
「利息は1ヶ月4,000円」と聞いたら、収入が年金のみであっても年金支給日に無理なく返済できると感じる人も多いでしょう。
しかし、偽装質屋は質流れを行なっていないので、元金の5万円を返済しないといつまでたっても毎月4,000円を払い続けることになります。
無理なく返済できるから借りても大丈夫だろうという判断は間違っています。
偽装質屋からの引き落としを止めてもらいたいとのことですが、偽装質屋に引き落としを止めて欲しいと言っても、「貸したお金は返してもらわないと」と言われて、設定を外してもらうことはできないでしょう。
自分で年金が振り込まれる口座を変更して、偽装質屋に教えた口座を残高不足にして(または解約する)、引き落としを失敗させるようにするのが早いです。
偽装質屋に騙されない方法はある?
偽装質屋の特徴は、あくまでも質屋を装っていることです。
若者やインターネット利用者を狙った闇金詐欺ならSNSやメールなどが活用されることが多いのですが、年金受給者や生活保護を狙った詐欺の場合は、外観は質屋で高齢者を安心させようとしてきます。
一見、ちゃんとしたような質屋に見えても、以下のようなことに気をつけてください。
「質草(品物)はなんでも良い」は怪しい!
現在の正規の質屋の運営は質屋営業法に基づいて行われていますが、質屋の起源は鎌倉時代にも遡ると言われています。
時代が変わって法律に基づいても質屋の基本的な体制は同じで、「担保となる品物を預けることでお金が借りられて、利息と元金を返済期日までに返せなかったら質流れとなり、返済不要となる代わりに品物の所有権は質屋に移る」ということになります。
つまり質屋の利益は、
・債務者が払う利息
または
・質流れとなり品物を売却した際に得られる儲け
のどちらかになるのです。
そのため、正規の質屋が「質草(品物)はなんでも良い」と言うことは絶対にありません。売ってもお金になる価値がないようなものは断られることもあります。
偽装質屋が品物はなんでも良いと言うのは、結局のところ年金を担保に融資を行うからで、質草をとるのは質屋という形態であることを一応守るためだけのパフォーマンスなのです。
預けた質草より高すぎるお金を貸そうとする質屋には十分にご注意ください。
「返済は口座からの引き落とし」は怪しい!
正規の質屋であれば、万が一返済できなくても品物を質流しして売却すれば利益を上げることができます。
質屋は、返済ができなくても取り立てされることがない融資なのです。そのため返済させるために口座引き落としを要求してくることは絶対にありません。
質屋からお金を借りるときに口座番号を聞かれたり、返済を口座引き落としにするように要求されたら決してお金を借りないで断る勇気を持ってください。
万が一、口座引き落としの設定をしてしまった場合は、受給口座をなるべく早く変更して自動引き落としされないようにしてください。
偽装質屋の実態は悪質な闇金です。「口座引き落としを取り消したい」と言っても引き受けてくれることはありませんので、受給口座を変える方が確実です。
<参考>:日本年金機構 Q年金の受け取り先の銀行を別の銀行に変えるとき。
営業許可を必ず確認して!
正規の質屋は質屋営業法という法律の元に運営を行なっています。
質屋営業法 第2条では、質屋を営むには都道府県公安委員会の許可を受けなければならないとなっています。
さらに第5条では、質屋ではないもの(許可を受けていないもの)は質屋を営んではならないとまで決められているのです。
・第二条(質屋営業の許可)
質屋になろうとする者は、内閣府令で定める手続により、営業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。・第五条(無許可営業の禁止)
質屋でない者は、質屋営業を営んではならない。引用: e-Gov 質屋営業法
正規の質屋は営業許可を示す目的で、都道府県名・公安委員会許可・登録番号が書かれている営業許可プレートを店舗に設置しています。
お店や事務所などに行った際には、この営業許可が掲げられているか確認してみてください。
少しでも怪しかったらすぐにお店を出てください
偽装質屋は年金受給者である高齢者を様々な手で騙そうとしてきます。何か少しでも怪しいと感じることがあったら、お金を借りずにすぐに引き返してください。
偽装質屋の被害にあったらどこに相談すればいい?
偽装質屋からお金を借りてしまって返済に困っている、お金は借りてないけど偽装質屋と思われる質屋に行ってしまい不安・・・という場合など相談窓口をご紹介します。
不安なことがあった場合は、ひとりで悩まずに家族、友達、次にご紹介する窓口などに相談してください。
消費者ホットライン「188(いやや)」
消費者ホットラインは独立行政法人 国民生活センターが運営していて、誰もがアクセスしやすい相談窓口として開設されています。
消費生活に関する相談、問い合わせ、苦情などを受け付けています。
相談電話番号は局番なしの「188(いやや)」です。
消費生活センター
消費生活センターは、全国各地に設置してある窓口で、サービスや商品などの消費生活全般に関する苦情や相談を受け付けています。
消費生活センターはお住いの地域の自治体が窓口になるので、問い合わせ先は地域ごとに異なります。
こちら の「都道府県別一覧」から地域の消費生活センターを探してみてください。
闇金対応の専門家に相談することもできます
すでにたくさんの利息を払ってしまった場合や、偽装質屋と根本的に縁を切りたい場合は、闇金対応に強い弁護士・司法書士に依頼して対策を取ってもらうという方法もあります。
依頼は有料になりますが、契約までの闇金被害の相談は無料で行なっている弁護士・司法書士事務所は全国にあります。
また、費用面の心配がある場合は、法テラスを頼ることもできます。
条件に一致する人向けになりますが、法テラスでは弁護士・司法書士費用の立て替えを行なっていて、生活保護を受けている人であれば立て替えた費用の返済が全額免除になる場合もあります。
<参考>:法テラス 費用を立て替えてもらいたい
まとめ:偽装質屋に騙されないで!
今回は偽装質屋の手口と対策などをご紹介してきましたが、偽装質屋は自分からお金を借りようとしなければ騙されることはありません。
正規の質屋と偽装質屋を見分ける方法は以下の3点です。
・「返済は口座からの引き落とし」と言われたら偽装質屋を疑う
・店舗で営業許可をチェックする
ただ、偽装質屋は主に年金を受給している高齢者を狙っているので、自分ひとりでは見分けることができなかったり、家族が知らないうちに高齢者が騙されていたということもあるかもしれません。
身近な人が騙されないように、ぜひ本記事をご覧になった方が高齢のご家族のことも気にかけてあげてください。
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