ギャンブルの借金は返済義務あるの?
パチンコや競馬などギャンブルにも色々ありますが、借金を作ってしまうほどハマってしまうのは避けたいものです。
すでにギャンブルで借金を作ってしまっている人は、これ以上増やさないようにくれぐれも気をつけなければいけません。
しかし、ギャンブルで作った借金の中には、返済義務がないものもあるかもしれません。
もちろんパチンコで抱えた借金をチャラにできるなんていう都合の良い話はありませんが、返済義務がない借金とはどのようなものなのでしょうか?
麻雀で作った借金は返済義務がない
まず、麻雀で作った借金は返済する必要はありません。
そもそもお金をかけて麻雀をするのは違法行為です。2020年の5月にも当時の東京高等検察庁検事長がテンピン賭け麻雀をしていたということで非常に大きな問題になりました。
麻雀などでお金をかける賭け賭博は、刑法185条で禁止されています。
・第百八十五条
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。・第百八十六条
常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。<引用元> e-Gov 刑法185条・186条
刑法と言われるとなんだか怖いような気もしますが、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」とあるように、例えば彼氏彼女がジャンケンをして負けた方がご飯をおごる行為などは違法ではありません。
では、なぜ違法行為である賭け麻雀の借金は支払わなくても良いのでしょうか?
賭け麻雀は「一時の娯楽に供する物を賭けた」にならない
お金をかけて麻雀をする行為は、法律的にセーフとなっている「一時の娯楽に供する物を賭けた」にとどまりません。
そのため、賭け麻雀は明確に違法となるのです。違法な賭けごとはやってはいけないのですが、民法90条では以下のような条文があります。
・九十条
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。<引用元> e-Gov 民法第90条
賭け麻雀で考えると、賭け麻雀は法律で禁止されている違法行為であり、さらに善良の風俗にも反している行為ということになるので、勝っても負けても法的に無効とされるのです。
法的に無効になるために、返済義務もないということになります。
返済義務がない借金とは?
法的に返済義務がないギャンブルとして、賭け麻雀を例に見てきましたが、他にも違法なギャンブルであれば支払い義務はないということになります。
違法ギャンブルでかけたお金
「ギャンブル=賭博」と考えると、日本においては全ての賭博行為が違法とも言えそうなのですが、パチンコ、競馬、競輪、スポーツくじ、宝くじなどは合法となっています。
違法ギャンブルを一般例で考えると、お金をかけてポーカーをする、賭けゴルフなど、お金をかけて勝負事を行なったり、違法パチスロ、違法カジノなどの賭博のためのお店の利用となるのではないでしょうか。
これらは違法となるので利用すると賭博罪となってしまうこともあるのですが、負けた場合に相手やお店に支払いをする約束をしたとしても法的には無効となります。
違法ギャンブルの店から借りたお金
違法ギャンブルのお店で、「負けた分はツケにしておくよ」とか持ち点がマイナスになったけどお金を借りてゲームを続けたなど、違法ギャンブルのお店に借金をした場合も返済をする義務はありません。
借用書があっても返済義務はない
賭け麻雀で負けが続いて、相手から借用書を書くように言われて実際に書いたとします。
通常であれば借用書まで書いたのならお金を払わなくてはいけないように感じますが、違法ギャンブルによる借金ならたとえ借用書があっても返済義務はありません。
負けた人に都合が良いようも思えるけど・・・
「負けても違法ギャンブルなら返済義務がない」と言われると、負けている人に都合が良いように思えるかもしれませんが、法律は決して違法ギャンブルで負けた人の味方をしているわけではありません。
賭博行為は法的にはダメなことだから無効となっているだけなので、逆に勝った場合も「貸したお金を絶対に払って!」と強く主張することはできません。
また、1度支払ってしまったお金に関しては返済を要求することはできません。
払ってしまったお金は取り戻せない
違法ギャンブルで作った借金は支払う必要がないことを見てきましたが、ではすでに支払ってしまったお金はどうなのでしょうか。
違法ギャンブルの負けとして相手やお店に渡してしまったお金は、法的には請求をすることができません。
違法ギャンブルとわかっていながら楽しんでおいて、負けたからといって「違法だからお金を返して!」と言うのはあまりにもムシが良すぎますよね。
法律は、法を守らなかった人の味方はしません。
お互いに違法ギャンブルとわかっていてお金のやり取りを行なった以上は、払ってしまったお金を取り戻すことはできないのです。
このことも民法708条「不法原因給付」に記載されています。
・七百八条
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。<引用元>e-Gov民法708条
ギャンブルのために金融機関から借りたお金は返済が必要
賭け麻雀をするために消費者金融からお金を借りてギャンブルを続けたとします。
この場合、消費者金融側は貸したお金がどんなことに使われるかはわからないことになります。
そのため、消費者金融がお金を貸すことには何の違法性もなく「不法原因給付」にもなりません。
借りたお金を違法ギャンブルに使ったとしても消費者金融に対する返済義務は無くなりません。
実際に返済が不要になるとは限らないかも?
「違法ギャンブルにおける借金は返済義務がない」ということを見てきましたが、これはあくまでも法的な返済義務はないという見解になります。
しかし、自分から賭け麻雀や違法ギャンブルに手を出しておいて、「法的な支払い義務はないから払わない!」と言ったら、相手はどう思うでしょうか?
人間性を疑われることは間違いないでしょう。
また、違法カジノなどの「違法●●店」「闇●●店」と言われているお店は、闇金や悪質な業者が絡んでいることは簡単に想像つきますよね。
そもそも違法であることをわかった上で運営しているお店なので、自分からそういったお店を利用した客が「違法だから払わない!」と主張したところで、あっさり認めてもらえるとは思えません。
法律の専門家に相談することもできる
相手が怖いからといって法的に無効な支払いをする必要はありません。
だけど、相手がどんなことをしてくるかわからないとか、家族に迷惑がかかりそうで不安など、気になることもあるのではないでしょうか。
相手が怖くて借金が無効であることを強く主張できない場合は、闇金や悪徳業者に強い弁護士・司法書士に相談して、代理人になってもらうという方法があります。
相手が闇カジノなどの場合は、借金を踏み倒すようなことをすると嫌がらせをされてしまうことも実際に考えられます。
弁護士・司法書士に依頼することで嫌がらせ行為を減らしたり、何度でも交渉してもらうことも可能です。
また、違法ギャンブルに支払うお金以外にも、消費者金融などから借りている借金が増えすぎて返済に困っているという状況なら、どうにかしてやりくりすることを考えるよりも債務整理を検討した方が良い場合もあります。
ギャンブルの借金は債務整理できるの?
「ギャンブルで作った借金は自己責任だから債務整理しても借金はなくならない」と聞いたことがある人もいると思いますが、これは間違いです。
そもそも違法ギャンブルで作ってしまった借金は不法原因給付に該当することになり返済義務がないので、債務整理を行なってまで返済する必要はありません。
まずは弁護士・司法書士に相談をして、相手に交渉してもらうなどの方針を立てると解決に近づきます。
パチンコなどの違法とは言えないギャンブルで作った借金はどうなるかというと、こちらは債務整理を行うことで返済額を減らしたり、全額免責(借金をゼロに)とすることも可能です。
ただし、債務整理の内容によっては借金の理由が問われることがあるので、以下を参考にしてみてください。
債務整理の種類 | 手続きの内容 | ギャンブルの借金は? |
任意整理 | 債権者と直接交渉をして利息のカット、毎月の返済額の減額、返済期間の延長をしてもらいます。 | 借金の理由は問われないため、ギャンブルの借金も債務整理できます。 |
個人再生 | 裁判所を通して借金を5分の1程度まで減額します。(借金の額等で減額できる金額は変わってきます) 持ち家がある場合、自宅を残しながら手続きを行うことも可能です。 |
借金の理由は問われないため、ギャンブルの借金も債務整理できます。 |
自己破産 | 裁判所を通して借金を全額免責にします。 車や持ち家と、一定額以上の財産は処分されることになりますが借金はゼロになります。 |
ギャンブルによる借金は「免責不許可事由」となり認められないこともありますが、「裁量免責」とされれば免責が許可されます。 |
「任意整理」「個人再生」は、ギャンブルによる借金でも債務整理を行うことができるのですが、問題となってくるのは自己破産です。
自己破産は、抱えている借金を全てチャラにできる手続きなので、その分だけ厳しい手続きでもあるのです。
ギャンブルの借金は「免責不許可事由」となる
そもそもギャンブルによる借金は「免責不許可事由」に該当するため、原則として免責とはならず、他の借金は帳消しにできたとしても免責不許可事由となってしまった借金はそのまま残ってしまうのです。
免責不許可事由に該当するのはギャンブルで作った借金だけではありません。
▼免責不許可事由とは?
1.浪費やギャンブルによって多額の借金をしてしまった場合
2.財産を隠したり、壊したり、勝手に他人に贈与したりした場合
3.破産申立てをする前の1年間に、住所、氏名、年齢、年収等の経済的な信用に関わる情報について嘘をついた上でお金を借りたり、クレジットカードで買物をしたような場合
4.ローンやクレジットカードで商品を買った上で、その商品を非常に安い値段で売ってお金に替えた場合
5.破産の申立てをした日から数えて7年以内に免責を受けた
6.裁判所や破産管財人が行う調査に協力しなかった場合
ただし、免責不許可事由であっても裁判所が考慮して免責が妥当と判断すれば、自己破産が認められることになります。
このことを「裁量免責」と呼んでいます。
裁判所が自己破産の申し立てをした本人が反省していない、更生が困難だと判断したら、裁量免責を受けることができなくなってしまいます。
自己破産をする場合は、ギャンブルで作ってしまった借金はそもそも免責不許可事由に該当しているということを忘れずに、嘘をついたりしないで誠実な対応で望む必要があります。
まとめ:違法ギャンブル・ギャンブルの借金でもなんとかできる
そもそも違法ギャンブルに手を出してもロクなことはないのですが、とても返済できないような額の借金を抱えてしまっていても、打つ手がないわけではありません。
・賭け麻雀で払っていないお金を執拗に催促されている
・賭け麻雀で負けて、借用書を書いてしまったことを後悔している
など、違法ギャンブルや賭け事で負けた借金で困っているなら、法的な根拠で支払い拒否をすることは可能です。
相手が親しい友達などの場合は今後の人間関係に影響してくることも予想されますが、これはもう違法ギャンブルに手を出してしまった勉強代だと思うしかないでしょう。
ギャンブルによる借金問題で困っている場合は債務整理で減額する、または全額免責にすることも可能です。
いずれの場合もひとりで悩んでいては解決しないこともあります。
違法ギャンブルによる借金は、自分が違法行為に手を出しているという引け目から誰にも相談しにくいかもしれません。
しかし、そういった心理を突いて激しい取り立てをしてくる違法業者もあるので、すでに困っている場合は誰かに相談することをおすすめします。
債務整理の相談は無料で受け付けている専門家も全国にいますので、相談したい場合は問い合わせてみると良いでしょう。
なお、こちらは金融庁が公開している都道府県別の多重債務相談窓口になります。
弁護士・司法書士に全く心当たりがなく、どこに相談して良いかわからない場合や、家族の多重債務について相談したいときなどにも活用できます。
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