住民税は未納していると何が起きる?未納リスクと払えない場合の解決策を紹介

住民税は未納していると何が起きる?未納リスクと払えない場合の解決策を紹介

病気やケガ、収入減や失業等によって住民税が支払えなくなってしまう状況は、誰にでも起こり得ます。

しかし、住民税が支払えるのに未納している状態や、支払えないからと言ってそのまま放置している状態は言語道断です。

国民の義務である「納税」をせずに未納のままだとどうなってしまうのか?気になっている方も多いでしょう。

今回は、住民税を未納のままだとどうなってしまうのか?住民税を支払えないときはどうすれば良いのか?についてお伝えします。

住民税がどうしても支払えない方、現在も未納が続いている方はぜひ参考にしてください。

この記事の監修者

近藤邦夫

司法書士法人 浜松町歩法務事務所」代表司法書士。 愛知県岡崎市出身。 昭和64年早稲田大学法学部卒業。 長年にわたり、債務整理を行い、 また宅地建物取引士の資格を生かし、不動産登記や商業登記も行なっている。

住民税を未納のままだとどうなってしまう?起こり得る3つのリスクとは?

住民税を未納のままにしていると、下記のようなリスクが起こります。

  • 延滞金が発生する
  • 強制執行によって財産を差し押さえられる
  • 相続発生時に相続人が住民税を相続する

住民税は日本に住んでいる以上、絶対に支払わなければいけない税金のひとつです。

住民税は、地方税であり、地方の税収を守るためにとても大切です。

各自治体に住んでいる全員が住民税未納のままだと、子どもたちがまともな教育を受けられなかったり、自治体で所有するものの維持管理ができなかったりします。

「1人くらい未納のままでも大丈夫」と思っていても、そう思っている人が多ければ多いほどその地方は衰退していくでしょう。

まずは、住民税を未納のままだと、支払っていない個人はどうなってしまうのか?について、お伝えしようと思います。住民税を未納のままの方は、ぜひ参考にしてください。

リスク①:延滞金が発生する

住民税は延滞した日から延滞金が発生します。延滞金は「延滞利率」という利率によって計算され、住民税と一緒に請求されるので注意してください。

たとえば、12月31日が納期限だったとすれば、1月1日から延滞金が発生します。延滞利率は、延滞期間等によって異なるため各自治体の税担当者へ確認してください。

仮に、延滞利率が8.9%であり、延滞している住民税が10万円、延滞期間が半年間(180日)だったとしたときの延滞金は下記の通りです。

【10万円✕8.9%÷365✕180日=4,839円】

つまり、半年後には104,839円の住民税(延滞金加算)を請求されてしまうことになります。

もちろん、延滞期間が長ければ長いほど延滞金は膨れ上がりますし、翌年になれば昨年の所得に応じた住民税が請求されます。

住民税未納の期間が長ければ長いほど、住民税が高額になって支払えなくなるでしょう。住民税を未納のままでは、しっかり納めている方に示しが付かないため、自治体は強制執行等をします。

もしも今、住民税が未納のままなのであれば、今すぐに納付しましょう。もしも支払えないのであれば、しっかり支払えない旨を伝えて相談する等の「行動」をしてください。

リスク②:強制執行によって財産を差し押さえられる

住民税が未納のままだと、最終的には「強制執行」を行います。強制執行とはあなたの持っている財産等を強制的に差し押さえる手続きのことです。

「たかが住民税」と思っているかもしれませんが、本当に強制執行をされるので注意してください。

住民税を未納のままで強制執行が開始されてしまえば、現金や自宅内の財産、給与所得者等であればその給与を差し押さえます。

差し押さえられた財産等は官公庁オークションで競売にかけられて、未納分の住民税に充てられます。

官公庁オークションはこちら

結果的に通常よりも安値で売却されてしまう可能性が高いです。自分の財産を守るためには、住民税を未納せずにしっかり納めましょう。

消費者金融等の滞納とは異なり信用情報にキズはつかない

住民税の未納は借金等との未納とは異なるため、信用情報等にキズがつくことはありません。つまり、住民税を未納していても新たなローン契約等は可能ですし、クレジットカード等も持てます。

当然、住宅や車などの大きな買い物もローンを組んで購入できるでしょう。ただこれらのものも、住民税の未納によって差し押さえの対象になるので注意してください。

リスク③:未納のまま死亡すれば相続人が住民税を相続する

住民税が未納の被相続人が死亡すると、相続人が住民税を相続します。相続方法には下記の3種類ありますが、未納を知らずに単純承認をしてしまうと相続人が住民税を支払うことになるでしょう。

  • 単純承認
  • 限定承認
  • 相続放棄

被相続人に未納の住民税があることを知っていれば、限定承認や相続放棄といった方法で住民税の支払いから免れることができます。

しかし、住民税に未納があることを知らずに単純承認をしてしまえば、その時点で相続放棄等をすることはできず、自分の配偶者や子等が住民税を納めなければいけません。

そもそも単純承認とは「すべての財産をそのまま相続します」という相続方法です。

特別な手続きを行う必要はなく、相続を知ったときから3カ月経過もしくは、相続財産を処分した時点で「単純承認したもの」としてみなされます。

つまり、相続人が住民税が未納のままであることを知らずに、あなたの財産に少しでも手を付けてしまえば、単純承認したものとみなされてしまうのです。

仮に、数百万円程度の現金しか残しておらず「財産<未納の住民税」になったとしても、その差額もすべて相続人が背負うことになってしまうでしょう。

住民税はその人の所得や延滞期間等によっては、数百万円になることもあります。相続人が「気付いたときには遅かった…」とならないように、生前にしっかりと対応しておくことが大切でしょう。

住民税を払えないときはどうしたら良い?どのように解決すれば良い?

住民税を支払えないのであれば、しっかり支払えない旨を伝えることで減額や免除、分割等の支払いを認めてもらえます。

ただ、これらを認められるためには「収入要件等」を満たさなければいけません。

もしも「収入<支出」となっていて、住民税を支払える余裕がないのであれば、債務整理等の検討も必要です。

住民税は、国民の義務である以上、未納のままで許されるわけがありません。支払えないのであれば、それなりの対応等をしなければいけません。

自分のみならず後世まで迷惑をかけ続けることになるでしょう。

住民税の免除もしくは減額を願い出る

住民税が支払えないのであれば、未納になる前に相談することで、減額をしたり免除したりできます。

病気やケガ、失業や収入減等によって、住民税の支払いが困難になることは誰にでも起こり得ることです。

しかし、支払えないまま放置をして、未納の状態が続くことだけは絶対に避けなければいけません。

もちろん、住民税を支払うことによって、自分自身の生活が苦しくなってしまうのもあってはいけないことです。そのため、前もって相談することで猶予や免除を認めているのです。

住民税は地方税であるため、相談先は各自治体になります。未納になったあとでは猶予や免除、減額等を認めてもらえない恐れもあります。

かならず「納期限までに相談すること」を徹底してください。

参考:大阪市|個人市・府民税の減額・免除制度について

「収入<支出」で住民税が払えないなら債務整理もひとつの手段

一定以上の収入があり、住民税の減額や免除が認められなかった方は、恐らく生活スタイルに問題があるのでしょう。

たとえば、著しい浪費癖があるとかギャンブル依存症であるとか。恐らく「収入<支出」の状態になっているのではないでしょうか。

もしも、収入が十分であるにも関わらず、住民税の未納が続いているのであれば、生活スタイルの見直しをしてみるのも良いでしょう。

また、住民税が支払えない理由が「借金の返済による生活の困窮」であれば、今すぐに債務整理をするべきです。

債務整理をして借金問題を解決できるのであれば、債務整理をして未納の住民税を支払いましょう。

ちなみに、未納の住民税は債務整理をしても減額したり免責されたりすることはありません。

自分が死んだあとも後世まで残り続けるのが「税金」です。生活を見直して、必要に応じて債務整理も検討してください。

「気付かぬ未納」は要注意!退職したあとの住民税は自分で解決

住民税は前年の所得に応じて翌年1月1日に道府県民税および市町村税が課税されます。

そのため、退職後に住民税の請求が来ることもあれば、引っ越したあとに前の住所から請求が来ることもあります。

とくに会社員等の方であれば、税金とは無縁の方も多く「気付かぬ未納」が発生している恐れがあります。

意図しない未納であっても、最悪の場合には強制執行にもなりかねません。最後に、住民税の気付かぬ未納を防ぐための知識をお伝えしようと思います。

住民税は前年の年収で計算されるので要注意

住民税は前年の所得に対して課税されます。たとえば、2020年1月1日から12月31日までの1年間で稼いだ所得に対して、2021年1月1日に住んでいる市町村等から住民税の請求が来ます。

つまり、1月2日以降に引っ越しをされた方は、旧住所から住民税の請求が来ると思ってください。

また、注意すべきが「前年の所得に対して翌年課税される」という点です。たとえば、2020年12月31日をもって退職し、2021年1月1日からは専業主婦になった方。

今までは、会社等で税務に関することを行っていたため、自分とは無縁と思われている方もいます。

しかし、退職時の選択次第では、自分の自宅あてに住民税の請求が来ます。

最近では巧妙な詐欺等も横行しているため「身に覚えがない請求」とか「自分には関係のない請求だから詐欺だ」と思っていると、気付かぬ未納が発生する恐れがあります。

住民税の課税時期や請求の時期を把握したうえで、未納が発生しないように注意しましょう。

参考:東京都|個人住民税

退職時に選択できる住民税の納税方法に要注意

退職後の住民税納税方法は下記の中から選択できます。

  • 普通徴収
  • 一括徴収
  • 特別徴収の継続

現在の会社を退職したあと、新たな就職先が決まっているのであれば、今までと同じ「特別徴収」を継続すれば問題は発生しません。

しかし、退職後はしばらく休む予定の方、働く予定がない方は注意が必要です。

普通徴収を選択すると、自分で直接住民税を支払わなければいけません。

翌年に住民税の払込用紙が届くので、そちらで支払えば良いです。中には「見に覚えがない」などと思いこんで、放置したり気付かぬ未納が発生したりする恐れがあるので注意しましょう。

そして、気付かぬ未納が不安な方は「一括徴収」を選択してください。

一括徴収を選択することで、最後の給料もしくは退職金から一括で支払ってくれます。自分で納税することはなく、すべて退職する会社で完結するのでおすすめです。

ただ、最後の給料や退職金の手取り額が減ってしまうので、その点だけは注意しておいてください。

気付かぬうちに未納が発生していたら「強制執行」の恐れがあるので要注意

気付かぬ未納が発生していると、最悪の場合「強制執行」に至る可能性もあります。

悪質ではない住民税の未納であっても、再三の請求に応じなければ「支払い義務があるのに未納している」と疑われてしまいます。

退職後、収入減等によって住民税の支払いが難しいのであれば、未納になる前にかならず各自治体へ相談してください。

また、住民税関連の書類や請求書が届き、自分の見に覚えがなくても、かならず各自治体へ確認してください。

確認をするとき、書類等に記載されている電話にかけるのではなく、かならずHP等で検索して電話番号を確認してからかけてください。

万が一、その書類が詐欺であれば、お金を騙し取られてしまう恐れがあるので十分に注意しましょう。

まとめ

今回は、住民税が未納のままだとどうなるのか?住民税が支払えないときはどうすれば良いのか?についてお伝えしました。今回お伝えしたことをまとめると下記の通りです。

  • 住民税が未納のままだと遅延利息が発生したり強制執行を受けたりする。未納のまま相続が発生すれば、後世まで住民税の支払い義務が残り続けるので要注意
  • 住民税が支払えないのであれば、延滞する前に「相談」することが大切。状況次第では減額や免除が認められる
  • 退職したあと等「気付かぬ未納」には要注意。退職時の住民税支払い方法に関する知識は身につけておいて損はない。必要に応じて税務担当者に聞いておくのも大切

住民税は日本という国に住んでいる以上、すべての都道府県や市町村で課税される税金です。

大多数の人が住民税を納めているにも関わらず、一部の人が未納しているのは許されることではありません。

住民税が支払えないのであれば、支払えないなりの対応をすれば良いだけの話です。住民税を払わないまま「未納の状態」を続けているのは問題です。

強制執行等まで発展する恐れもあり、国民の義務であることを再認識しておきましょう。

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