借金減額って罠?借金を減らせる理由とシミュレーションの仕組みを詳しく解説

借金減額って罠?借金を減らせる理由とシミュレーションの仕組みを詳しく解説

インターネットなどを見ていると、「借金を減額できる」などといった謳い文句を見かけることがあります。これらの広告を見ると、「本当に借金を減額できるのだろうか?」「なぜ借金を減額できるのだろうか?」といった疑問が生まれます。

「自分で作った借金を減額できるのであれば、借金をできるだけして踏み倒すことも許されるのか?」など、よからぬことも考えついてしまいます。そのため、多くの人は「借金を減額できるわけがない」と考えているでしょう。

しかし、実際に借金を減額できる制度が実在しています。

今回は、借金が減額できる仕組みについて詳しく解説します。借金を減額したいと考えている人、借金の返済が苦しい人は、ぜひ参考にしてください。

この記事の監修者

近藤邦夫

司法書士法人 浜松町歩法務事務所」代表司法書士。 愛知県岡崎市出身。 昭和64年早稲田大学法学部卒業。 長年にわたり、債務整理を行い、 また宅地建物取引士の資格を生かし、不動産登記や商業登記も行なっている。

借金減額は罠?借金を減らせる仕組みを解説

インターネットCMなどでよく見かける「借金減額!」といった言葉に「なんとなく怪しい…」と考えている人も多いのではないでしょうか。中には「そもそも借金を減額できるわけがない」と考えている人がいるかもしれません。

「借りたものは返す」という基本的なことを考えれば、借金を減額できるということが罠なのではないか?と考えてしまうのも当然です。

しかし、罠ではなく合法的に借金を減額できる方法があります。よく見かける借金減額の仕組みは、債務整理手続きによるものです。

債務整理とは、法律によって認められた借金減額方法のことを指します。主に任意整理・個人再生・自己破産の3種類があり、どの手続きを行うかによって減額できる借金の額が異なります。

まずは、借金減額制度がどういったものなのか、本当に罠ではないのか?について詳しく解説します。

任意整理により利息をカットできる

任意整理とは債権者と交渉を行い、利息をカットして元金を分割で返済し、完済を目指す債務整理手続きです。借金減額方法の中でも比較的簡易的に行える手続きです。

しかし、「そもそもなぜ借金を減額できるのか?」といった疑問が残っている人も多いのではないでしょうか。任意整理は、債権者と交渉をして利息をカット、元金を分割で完済を目指す制度であるため、債権者側に一切のメリットがありません。

むしろ、本来であれば利益を得られるはずであった利息をカットすることにより、損害が発生します。それでも借金を減額できる理由は以下のとおりです。

  • 司法書士や弁護士などの専門家から連絡があるため
  • これ以上の返済が困難であることが明らかであるため

ひとつ目の理由は、司法書士や弁護士などの専門家から連絡があるためです。任意整理を行う場合、専門家へ相談をして交渉を行います。

構図としては「債務者⇄専門家⇄債権者」です。

債務者が専門家へ債務の整理を依頼した場合、消費者金融等の貸金業者は債務者に直接連絡をしたり手紙を送ったり訪問をしたりすることができなくなります。これは、貸金業法という法律によって定められています。

たとえば、債務者Aが専門家へ任意整理の依頼をし、債権者である貸金業者Bに対して任意整理を行うとしましょう。専門家は直ちに、貸金業者Bに対して受任通知を送付します。

貸金業者Bは、受任通知を受け取った時点で債務者Aに連絡をすることができなくなる仕組みです。たとえ、借金の返済が滞っていたとしてもです。

貸金業者Bが債務者Aに対して返済を求めるためには、専門家を介さなければいけない状態になります。つまり、法律によって半強制的に貸金業者Bと交渉の機会を設けられるようになっているのです。

次に、専門家と貸金業者Bで和解に向けた交渉を行います。このとき、一般的には利息部分をカットし、元金のみを3年〜5年程度で完済するように話を進めます。

貸金業者Bとしては、本来得られるはずであった利益を得られません。しかし、任意整理をしている時点で、債務者Aはこれ以上の返済が困難である事実が明らかです。そのため、貸金業者Bも利益を諦め、最低限元金だけ返済してもらえれば良いと考えます。

結果的に和解が成立し、任意整理という制度が成立する仕組みです。

たとえば、貸金業者Bと和解が成立せずに借金がそのまま残ってしまったとしましょう。この場合、債権者Aは借金の返済ができずに滞ったり、その他の債務整理を検討したりするはずです。

そうすると、貸金業者Bは任意整理以上に損害を受ける可能性があります。そのため、任意整理によって借金を減額できる仕組みであり、決して罠ではありません。

注意
任意整理はあくまでも交渉手続きです。中には、「交渉に応じない」という姿勢を持っている業者もいます。交渉に応じてもらえない場合は、借金を減額することができません。

個人再生により借金を大幅にカットできる

個人再生とは、民事再生法という法律に従って借金を大幅に減額できる制度です。法律によって定められている制度であるため、決して罠ではありません。

民事再生法とは、民事再生手続きに関することを定めた法律です。民事再生法手続きは、大きく分けて以下の2種類あります。

  • 民事再生
  • 個人再生

上記の主な違いは、借金総額です。法人や個人の場合であって住宅ローンを除く借金の合計額が5000万円を超える場合は民事再生手続きを行います。5000万円以下の場合で個人が手続きを行う場合は、個人再生手続きです。

個人が行う借金減額の場合は、一般的には5,000万円以下であるケースが多いため個人再生が選択されます。

個人再生は先ほども解説したとおり、法律によって借金を減額できます。つまり、裁判所の判決によって借金を大幅に減額できるということです。そのため、罠ではありません。

民事再生法の目的とは、経済的に困窮している債権者を救済し、経済的な再生を目指してもらうためのサポートを行うことです。

中には事業で失敗をしたり、私的なことで多額の借金を抱えて返済できなくなってしまったりする人がいます。そういった人に対し、チャンスを与えて生活の再生を図ってもらおうとしています。

借金で失敗した人に対し「自業自得である」といって突き放すのではなく、法律によって守られているということです。そのため、安心して手続きを行うことができます。

なお、個人再生を行った場合は、以下の基準で減額できる借金額が変わります。

  • 民事再生法に基づく基準
  • 清算価値保障原則基準
  • 可処分所得基準

民事再生法に基づく基準は以下のとおりです。

借金額 最低弁済額
100万円未満 全額
100万円以上500万円未満 100万円
500万円以上1500万円未満 借金額の1/5
1500万円以上3000万円未満 300万円
3000万円以上5000万円未満 借金総額の1/10

たとえば1000万円の借金がある人であれば、最大で200万円まで借金を減額できます。

清算価値保障原則基準とは、残しておく財産の価値分が最低弁済額となる基準です。たとえば、500万円相当の高級腕時計を残しておく場合、最低弁済額は500万円以上となる基準です。

たとえば、借金が1000万円ある場合、民事再生法の基準であれば800万円減額されて200万円が最低弁済額となります。しかし、清算価値保障原則の場合は、500万円しか減額されず、500万円が最低弁済額です。

可処分所得基準とは、可処分所得(手取り収入)の2年分が最低弁済額となる基準です。たとえば、可処分所得が300万円であれば、600万円が最低弁済額です。

この基準が適用されるのは、個人再生の中でも「給与所得者等再生」という方法によって手続きを行う場合です。少々複雑であるため、実際に個人再生を検討する際に専門家へご相談ください。

注意
個人再生は、必ず借金の残る債務整理手続きです。一切の借金を無くしたい場合は、自己破産を検討されると良いでしょう。

自己破産によりすべての債務を免責にできる

自己破産とは、破産法という法律によって借金を免責にできる債務整理手続きです。自己破産も個人再生同様、法律によって定められている手続きであるため、減額できる仕組み自体、罠ではありません。

破産法の目的は、経済的に困窮している人を救済することです。なんらかの事情で多額の負債を抱えてしまう人は少なくありません。私情で借金を作ってしまい、返済できなくなってしまうこともあります。

そういった人に対し、自分の財産を処分する代わりに借金を免責にし、生活の再建を目指してもらうのが目的です。

自己破産は、裁判所の判断によって免責許可決定を受けられる仕組みです。免責許可決定を受けると、非免責債権を除くすべての債務を免責にできます。

非免責債権とは以下のものが該当します。

  • 一部の損害賠償金(すべての賠償金が非免責債権となるわけではありません)
  • 税金や保険料、公共料金など
  • 教育費
  • 罰金
  • 破産者が意図して報告しなかった債権者に対する債権

基本的には上記を除くすべての債権を免責にできます。

また、自己破産の性質上、破産するに相応しくない事情がある場合は免責不許可事由に該当します。免責不許可事由とは、免責が不許可となる事由です。つまり、自己破産によって借金を減額できない事由を指します。

  • 免責不許可事由には以下が該当します。
  • 財産を隠したり不当に価値を減少させたりする行為
  • 浪費やギャンブルによる借金
  • 破産手続きにおいて虚偽の説明をした場合
  • クレジットカード等でものを購入後、不当に安い価格で売却した場合
  • 支払い能力について相手を欺いた場合
  • 過去7年以内に免責許可決定を受けている場合

上記に該当する場合は、基本的には免責不許可となり借金を減額できません。たとえば、自己破産によって多大な被害を受ける債権者の利益を不当に害する行為は許されません。そのため、財産隠しや欺く行為、虚偽の報告は免責不許可となります。

その他、浪費やギャンブルによって作った借金は自分の娯楽によるものであるため、破産手続きの性質に合いません。また、過去7年以内という直近に何度も破産手続きをするのは、反省をしておらず悪質であると判断される可能性が高いです。

上記のことから、自己破産をするに相応しくない事情がある場合は、免責不許可事由に該当します。

ただし、自己破産には裁判官の判断で免責にできる、裁量免責という制度があります。相当悪質ではないケースの場合、裁量免責によって免責できる可能性があるため安心してください。

たとえば、ギャンブルや浪費で借金を作ってしまった場合であっても、反省してギャンブルをやめている場合は免責許可決定を受けられる可能性があります。自己破産は、失敗してしまった人に対してチャンスを与える制度です。

そのため、免責不許可事由に該当する場合であっても、個別事案ごとに判断をして免責許可決定を受けられる可能性は残っています。

借金減額シミュレーションの仕組み

インターネット上などで見かける「借金減額シミュレーション」の仕組みは、申込者の大まかな情報を聞いた上で、実際に減額できる金額を算出します。

「なぜ減額できる金額がわかるのか?なんとなく怪しい…」と考えている人も多いでしょう。次に、借金減額シミュレーションの仕組みについて詳しく解説します。

債務整理をした場合に減額できる借金額を計算

借金減額シミュレーションの仕組みは、申込者の借金状況を聞いた上で、任意整理・個人再生・自己破産を行った場合にどのくらいの減額が見込まれるか計算します。

たとえば、債務者Aが500万円の借金を抱えていて、借金減額シミュレーションを利用したとしましょう。情報を受け取った専門家は、以下のように考えます。

  • 「任意整理をすれば、500万円に対する利息である◯◯万円を減額できる」
  • 「個人再生をすれば、最大で400万円減額できる」
  • 「自己破産をすれば、最大で500万円減額(免責)できる」

つまり、「利息分〜500万円まで減額ができます」といったシミュレーション結果を報告できる仕組みです。

大まかな情報をもとに減額できる借金額を算出可能

借金減額シミュレーションで減額できる借金額を算出できる仕組みは、大まかな情報を先に得るためです。実際、インターネット上などで見かける借金減額シミュレーションを利用しようとすると、以下の項目が出てきます。

  • 借金の合計額
  • 借入年数

上記2つの情報のみで、債務整理をした場合に減額できる可能性のある金額と過払金の発生可能性を把握できます。

MEMO
過払金とは?

過払金とは、過去にあったグレーゾーン金利でお金を借りていた場合、利息を払いすぎていた可能性があります。もし、払いすぎていた利息がある場合は、その分を元金に充当します。それでもなお残る場合は、返還請求を行います。

ただし、上記情報のみでは正確な減額金額を把握できません。そのため、その後に担当者から連絡があり、詳細を伺った上で実際に減額できる可能性がある金額を提示し、手続きを進めていく流れです。

借金減額シミュレーションの流れ

借金減額シミュレーションの流れは以下のとおりです。

  1. 借金減額シミュレーションへ
  2. 必要事項を入力
  3. 司法書士・弁護士事務所から連絡が来る
  4. 減額できる借金額を提示
  5. 相談の有無を判断

上記までが一連の流れです。その場ですぐに減額できる金額がわかるわけではなく、借金減額シミュレーションを使用した事務所の担当者から連絡が入ります。その後に、債務整理を行うか否かを検討すれば良いでしょう。

なお、借金減額シミュレーションを利用したからといって、必ず手続きを行う必要はありません。実際にいくらくらい減額できるのか?といった興味で利用してみても良いです。

借金減額シミュレーションを利用する際の注意事項

借金減額シミュレーションの利用にあたって、いくつか注意しなければいけないことがあります。次に、注意事項についても詳しく解説します。

正確な減額金額ではない

借金減額シミュレーションの仕組みは、いくつかの簡単な質問に対する回答から算出される減額金額をお伝えするものです。そのため、実際に減額できる正確な金額ではなく、大まかに「〇〇の債務整理を行えば、〇〇万円くらい減額できる見込み」というものです。

たとえば、500万円の借金を抱えている人が借金減額シミュレーションをしたとしましょう。

任意整理をした場合、500万円に対する利息分程度を減額できる可能性があります。しかし、先ほども解説したとおり、任意整理は交渉手続きであるためうまくいかないこともあります。そのため、確実に減額できる金額はわかりません。

あくまでも、利息分程度減額できる可能性があるというものです。

また、個人再生をした場合は最大で400万円を減額できる可能性があります。しかし、債権者次第では給与所得者等再生が選択され、可処分所得基準となる可能性があるでしょう。この場合、可処分所得の2年分が最低弁済額となるため、減額金額は少なくなります。

自己破産をした場合は、500万円が免責となる可能性があります。しかし、免責不許可となれば、この借金を無くすことはできません。よって、減額金額は0円となるでしょう。

つまり、いずれの債務整理手続きをおこなた場合であっても、「〇〇万円まで減額できる可能性がある」といった程度である点に注意しなければいけません。

弁護士や司法書士から電話・メールが届く

借金減額シミュレーションを利用すると、弁護士や司法書士などの専門家から電話もしくはメールなどで連絡がきます。

電話等の内容は、実際に減額できる金額やどういった方法で減額をできるのかといった詳細を伝えるためです。詳細は債務整理であるため、債務整理に関する内容の話を聞くことになるでしょう。

もし、債務整理をする予定がないのであれば、初めから「その気はありません」と断っても良いです。一方で、債務整理に興味があり、具体的な話を聞きたい場合はそのまま詳細を聞いてみると良いでしょう。

シミュレーションのみの相談もOK

借金減額シミュレーションを利用すると、利用したシミュレーションを運営する事務所から連絡がきます。中には「ほんの興味本位でシミュレーションしただけ…」といった人もいるでしょう。そういった人は、はっきりとお断りして良いです。

借金減額シミュレーションは、債務整理することを前提としたものですが、必ずしも債務整理を行う必要はありません。

「自分の借金はいくらまで減額できるのだろうか?」といった興味のみで利用してもまったく問題はないため、安心してください。興味がある方は、まず、シミュレーションをされてみてはいかがでしょうか。

債務整理以外で借金を減額する方法

借金を減額できる主な仕組みは、債務整理によるものです。しかし、中にはその他の方法によって借金を減額する方法があります。

最後に、債務整理以外の方法で借金を減額する方法について詳しく解説します。「債務整理は避けたい…」と考えている人は、ぜひ参考にしてください。

おまとめローンを利用する

債務整理以外の借金減額方法として有効な手段は、おまとめローンの利用です。おまとめローンとは、複数ある借金をひとつにまとめるローン商品のことを指し、借金を減額できる可能性がある手段です。

おまとめローンによって借金を減額できる仕組みは、利息制限法という法律が大きく関係しています。同法では、利息の上限金利を以下のとおり定めています。

借入金額 上限金利
10万円未満 年率20%
10万円以上100万円未満 年率18%
100万円以上 年率15%

たとえば、消費者金融ABCからそれぞれ50万円ずつ、合計150万円借りていたとしましょう。この場合の上限金利は、それぞれ18%です。よって、150万円の借金に対して年率18%という状況が発生します。

しかし、おまとめローンを利用してひとつにまとめることにより、最大でも15%までしか金利を設定できません。つまり、最低でも3%もの金利を引き下げることができるのです。

年率18%で150万円を借りていた場合、1日あたりの利息は「約739円」です。一方、15%の場合は「約616円」です。たった1日でも123円の差がつくため、1か月で考えると相当な差が発生します。また、借入期間(数年単位)で考えれば数十万円程度の減額も可能です。

借金の元本自体を減らすことはできませんが、利息部分を大きく減らせる可能性があります。そのため、複数者から借入をされている人は、おまとめローンの利用を検討されてみてはいかがでしょうか。

ローンの借り換えを検討する

ローンの借り換えとは、現在借りている金融機関よりも金利の低い金融機関のローン商品へ乗り換えることをことを指します。たとえば、年率10%の中古車ローンを利用されている人が、年率3%のローンへ借り換えることにより、7%分の利息をカットできます。

減額できる仕組みは、おまとめローンと同じです。ローンの借り換えは、金融機関などで金融商品として販売されているため、興味がある人は相談をされてみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は、借金減額の仕組みについて解説しました。

借金を減額できる主な仕組みは、債務整理によるものです。債務整理は、法律によって定められているものであり、経済的に困窮している人を救済するためにあります。

決して怪しい制度ではなく、国が認めている借金減額方法のひとつです。

もしも、「借金を減額したい」や「借金の返済が苦しくなってきた」と感じているのであれば、債務整理を検討されてみてはいかがでしょうか。合法的に、借金を大幅に減額することができるでしょう。

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