借金が辛いときはどうするべき?苦しいと感じる理由と現実的な解決方法を紹介

借金が辛いときはどうするべき?苦しいと感じる理由と現実的な解決方法を紹介

「すぐに返済できるだろう」と安易な気持ちから借金に手を出してしまったものの、ギャンブルをやめられなかったり収入が減少したりして計画通りに完済できずに苦しんでいるという人は少なくないでしょう。

借金問題は時間が解決してくれるという類のものではありません。日を追うごとに事態は深刻化し、「誰にも相談できない」という孤独感に苛まれながら、物理的・精神的に債務者を蝕んでしまうものです。

そこで今回は、借金が辛いと感じる原因や、現実的な対処法について解説します。あわせて、どれだけ借金生活を苦しいと感じていてもやってはいけないことも紹介するので、借金地獄から抜け出すためのきっかけとして最後までお役立てください。

この記事の監修者

近藤邦夫

司法書士法人 浜松町歩法務事務所」代表司法書士。 愛知県岡崎市出身。 昭和64年早稲田大学法学部卒業。 長年にわたり、債務整理を行い、 また宅地建物取引士の資格を生かし、不動産登記や商業登記も行なっている。

借金が辛い理由は3つ

消費者金融からの借入・税金の滞納・長期延滞によるストレスなど、債務者ごとに借金の状況には違いがあるでしょう。

ただ、どのような状況であるとしても、借金が辛いと感じる理由は大別すると次の3つに集約できます

  1. 借金の相談相手がいなくて孤独
  2. いつまでも完済が見えないため家計が逼迫している
  3. 債権者からの厳しい取り立てにストレスを感じている

まずは、これら借金を辛いと感じる原因について詳しく見ていきましょう。

借金が苦しい理由1:相談相手がいなくて孤独

借金が苦しいと感じる1つ目の理由として考えられるのが、借金問題を誰にも相談できずに孤独だということ。

そもそも自分の抱えている悩みごとは誰にでも相談できるというものではありません。それに加えて、債務者を苦しめている悩みの種は”借金”です。家族・親友など、自分と距離の近い人にほど隠したくなる・隠さざるを得なくなるのは当然です。

したがって、孤独感が理由で苦しさを感じているのなら、「借金問題を遠慮なく相談できる相手を見つけること」が解決策だと考えられます。

借金が苦しい理由2:完済が見えず家計が逼迫している

借金が苦しいと感じる2つ目の理由として考えられるのが、完済が見えずに家計が逼迫していることが挙げられます。

実は、キャッシング・カードローンなどには、次のように完済を難しくする事情が存在するので注意が必要です。

借金するだけで高利率の利息が発生する
消費者金融からの借金では(借入額次第ではありますが)年利率10%以上の利息が発生するのが一般的。どれだけ懸命に支払いをつづけても元本ではなく利息に充当される金額が多いため、返済が長期化するリスクが高まります。
滞納すると遅延損害金が発生する
借金を滞納すると遅延損害金が発生します。年利20%程度の割合で算出されるのが一般的。延滞日数に応じて日々加算されるため、支払いにお金を用意できない債務者をさらに深刻な状況に追い込みます。
リボ払い・分割払いなどでは高い手数料を取られる
借金以外でも、リボ払い・分割払いの手数料など、利用者側に重い経済的負担を強いるものが存在する点に注意が必要。特に、リボ払いでは毎月の決済総額にかかわらず支払い額が一定になるので、返済長期化のリスクが高まります。

このように、借金やリボ払いでは、元本・利用額とは別に、利息・手数料などの負担が別途発生するため、債務者に課せられる義務がどんどん重くなるという特徴があります。これでは、毎月どれだけ一生懸命返済をつづけても支払いは終わりませんし、完済までのどこかのタイミングで滞納状態におちいるのが明らかでしょう。

そして、問題なのは、返済額を懸命に用意しようとするために、食費や子どもの学費などを支払う余裕がなくなるという点。生活費にまで支障が出はじめると暮らし自体が脅かされてしまうので、借金返済生活をどんどん苦しく感じるようになってしまいます。

したがって、完済が遠のくこと・増えつづける利息負担等が原因で苦しさを感じているのなら、ゆとりをもって返済できるための工夫を凝らすのがポイントです。

借金が苦しい理由3:取り立てが厳しい

借金が苦しいと感じる3つ目の理由として考えられるのが、債権者側による取り立てです。返済日にお金を用意できない債務者にとって、払えない状況なのに「返済してください」と督促されてもどうしようもありません。見知らぬ番号から着信があるだけでもストレス要因になってしまうでしょう。

そして、取り立てに関連して注意しなければいけないのが、いわゆる”闇金業者”から借金をしている場合です。たとえば、アイフルプロミスなどの大手消費者金融からの借入であれば違法な取り立てが行われることはありませんが、貸金業登録をしていない違法業者に手を出してしまった場合には、次のような厳しい取り立てが繰り返されるおそれがあります。

  • 自宅・職場への訪問
  • 早朝・深夜を問わず何十回・何百回も電話がかかってくる
  • 家族・知人に肩代わりするように強要する
  • 他社からの借入での返済を強いる
  • 勝手に自宅内に押し入る
  • 物を壊す・暴力などによって支払いを強要する

このような厳しい取り立てが行われてしまうと、恐怖心から相手の言いなりになってしまうおそれも。これでは、どこまでもお金を奪われつづけるだけではなく、平穏な生活自体が脅かされることになるでしょう。

したがって、取り立てが原因で辛いと感じている場合には、債権者からの連絡を止めさせるための手立てを取るのがポイントです。

MEMO
闇金から借金をした場合にはすみやかな対応が求められます。現在厳しい取り立てに悩まされている方は、「ヤミ金被害の実例と悪質業者の検索(日本貸金業協会HP)」から正規業者・闇金業者を検索できるのでご確認ください。

借金が辛いときの対処法は4つ

借金を辛いと感じる理由は人それぞれ。ここまで紹介した3つの理由のうち1つだけが原因だという債務者もいれば、すべての理由が複合的に積み重なって苦しさを感じているという場合もあるでしょう。

そこで、ここからは借金が辛いと感じるときの対処法について解説します。具体的には次の4つの方法です。

  1. 借金問題を相談できる相手を見つけて孤独感を解消する
  2. 各種支援制度等を活用して生活の安定を目指す
  3. 弁護士・司法書士に債務整理を依頼して今すぐに取り立てを止める
  4. 債務整理で借金問題の改善を図る

それでは、それぞれの対処法について具体的に見ていきましょう。

借金が辛いときは誰かに相談しよう

ひとりで借金について悩みを抱えたままでは何の解決にもなりません。誰かに相談したり苦しさを打ち明けられるだけでも前向きな気持ちになれるので、勇気を出して家族・知人を頼ってみましょう。

もっとも、どれだけ辛くても自分の知っている人には借金のことを隠し通したいという人もいるはずです。次のように、このような人でも無料で借金問題を相談できる窓口が用意されているので、孤独感の解消や現状分析・今後の展望についてアドバイスをもらうためにお役立てください。

開催日時、予約の要否、電話相談の可否など、詳細は異なりますが、いずれの窓口でも無料で借金の悩み相談に対応してくれます。

借金問題の具体的な改善策を教えてくれるだけではなく、ただシンプルに「返済が苦しい」という気持ちを吐露するためだけでも大丈夫なので、閉塞した現状を打破する第一歩としてご活用ください。

注意
たとえば、借入先の消費者金融では「ご返済が難しい場合の相談窓口」などの形で会員のみがアクセスできる部署を用意していますが、具体的な返済交渉等をするケース以外では安易に頼らないようにしてください。なぜなら、できるだけ利息で収益を上げたい債権者側は、おまとめローンへの借り換えや毎月の返済額の減額などを勧めてくる可能性が高いからです。これでは、目先の返済負担は軽減されたとしても、いつまでも借金生活に縛りつけられるだけ。したがって、借金の相談先を選ぶ場合には、先ほど紹介したような公的機関や専門家を頼るのがおすすめです。

借金返済で家計が苦しいなら公的支援制度などを頼ろう

借金返済で生活費の工面さえも難しい状況なら、公的支援制度を活用して家計を整えるという手段が考えられます。

次のように、債務者の家族構成や収入要件次第で利用できる制度が多数用意されているので、行政などの相談窓口までお問い合わせください。

生活保護制度
経済的困窮者を対象に、健康で文化的な最低限の生活を保障するために必要な保護費の支給を行う制度のこと。生活扶助・住宅扶助だけではなく、葬祭扶助・出産扶助など状況に応じた形で支援を受けられます。
緊急小口資金
一定要件を充たす家庭が収入減少等の事情に直面して生活費を工面する必要に迫られている場合、無利子・無担保で20万円を上限に貸付けを受けられます。
生活福祉資金貸付制度
低所得者世帯・障害者世帯・高齢者世帯を対象に、総合支援資金・福祉資金・教育支援資金・不動産担保型生活資金を貸し付けてもらえます。連帯保証人を立てれば無利子(連帯保証人なしなら年利率1.5%の融資条件)。
母子父子寡婦福祉資金貸付金制度
20歳未満の児童を扶養しているひとり親世帯のための制度。修学・就職資金や教育資金だけではなく、事業開始資金など、幅広い用途目的で好条件でお金を借りられます。
教育一般貸付 (国の教育ローン)
子どもの教育費・受験費用などについて、比較的緩い年収要件(たとえば、子ども1人世帯なら年収790万円まで、子ども2人世帯なら890万円まで)で貸し付けてもらえます。特に、ひとり親世帯・子どもが3人以上・世帯年収200万円以内の場合には優遇条件で利用可能。
職業訓練受講給付金(求職者支援制度)
失業中・無職の人がハローワークの職業訓練を受ける場合に、不足する訓練期間の生活費等を支援してもらえる制度。一定要件を充たせば、職業訓練受講手当として月額10万円を受け取れます。

もっとも、これらの制度はそれぞれの融資目的の範囲内で使用しなければいけません。つまり、どれだけ借金で辛い思いをしていたとしても、公的支援制度の融資・支援を返済に充てることは許されないということ。返済への流用が露見した場合には、融資を打ち切られるなどのペナルティが課されてしまいます。

したがって、これらの公的支援制度は、借金返済の準備段階、つまり、「収入から余裕をもって返済を継続できるような家計基盤を整えるためのサポート役」とご理解ください。なお、申請・審査には一定期間を要するので、利用を希望するのならできるだけ早期に申し込みましょう。

MEMO
借金をめぐる不安の相談先として市役所の無料相談の機会を利用した場合、同時に公的融資制度等についても具体的なアドバイスを期待できます。借金問題の相談に赴いたついでに支援制度の窓口にも足を運べるので時間・労力を節約できるでしょう。まずはお住まいの自治体までお問い合わせください。

借金の取り立てが辛いなら専門家に債務整理を依頼しよう

債権者からの督促状・電話連絡などが原因で苦しい思いをしているのなら、専門家に債務整理を依頼するのがおすすめ。なぜなら、司法書士・弁護士という法律の専門家に債務整理を依頼した場合、専門家が債権者に送付する”受任通知”の効果によって債権者からのすべての取り立てがストップするからです。

受任通知とは、専門家が債務者の代理人になったことを債権者に通知する書面のこと。代理人が付いた以上、債務者の借金問題をめぐる問題については代理人である専門家が窓口になるので、債務者が直接債権者とやり取りをする必要はなくなります。

もっとも、受任通知を利用して債権者からの取り立てを止めるにあたっては次のポイントにご注意ください。

  • 受任通知の送付だけを依頼することはできない(何かしらの案件を依頼する必要がある)。
  • 多重債務状態の債務者が任意整理を利用する場合、任意整理の対象から外した借金の取り立ては止まらない。
  • 受任通知の送付から債権者が確認するまでの数日間は取り立てが行われる可能性がある。
  • 受任通知の送付では闇金被害が止まらない可能性が高い。

特に重要なのが、闇金からの厳しい取り立てが原因で苦しい思いをしている場合。貸金業法を遵守しないような違法な闇金業者は、債務者側が専門家に依頼するか否かにかかわらず、自分たちの身に危険(刑事訴追等のリスク)が生じるまではお金を巻き上げようとしてきます。司法書士等が何かしらの文書を送付したとしても、取り立てが止まない可能性も否定できません。

そもそも、闇金からの借金については債務者に返済義務はないということを覚えておきましょう。なぜなら、闇金との間で締結した金銭消費貸借契約はいかなる内容であったとしても無効なものだからです。

したがって、闇金からの取り立てで辛い思いをしている場合には、専門家に相談すると同時に、まさに被害を受けたときにすみやかに警察に相談することを強くおすすめします。司法書士・弁護士に相談すれば警察への対応の仕方についてもアドバイスをもらえるでしょう。

MEMO
専門家に依頼をせずに債務整理は利用できますし、債務整理を利用すれば債権者からの取り立てはストップします。ただ、債務者が独力で債務整理をする場合、”手続きを開始したタイミング”まで取り立てはストップしません。専門家の力を頼った場合に”依頼をしたタイミング”から取り立てが止まることと比較すると、「債務整理の準備に必要な期間分」の差が生じます。準備には意外と労力がかかるもの。借金の督促のない環境で準備を進めた方がスムーズでしょう。

借金が辛いなら債務整理で返済状況を改善しよう

「借金の完済が見えなくて辛い」「返済状況を少しでも楽にしたい」と考えているのなら、債務整理がおすすめです。債務整理とは、国が認めた合法の借金減免制度のこと。借金が原因で苦しい思いをしている債務者の救いとなる手段です。

もっとも、債務整理には任意整理・個人再生・自己破産の3つの手続きが用意されているところ、どの手続きを選択するかによって得られる効果が異なるため、慎重に手続きを選択しなければいけません。

そこで、適切な手続きを選択するために、各債務整理手続きの内容・メリット・デメリットについて紹介します。

任意整理:利息負担を免除、借金元本のみの返済に引き直す

任意整理とは、返済長期化の主たる原因である利息の支払いを免除して、借金元本のみの返済に引き直す債務整理手続きのこと。裁判所を利用せずに債権者と直接交渉できるため、簡便な手続きで返済計画を見直せるという特徴があります。

任意整理のメリット・デメリットは次の通りです。

任意整理のメリット
・裁判所を利用せずに手続きを進められる
・比較的安価で手続きを利用できる
・将来利息(交渉次第では経過利息も)の支払いから逃れられる
・3年~5年を目安とした完済計画を作れる
任意整理のデメリット
・交渉に応じない債権者への強制力がない
・残債総額次第では毎月の返済額が増える場合がある
・ブラックリストに約5年間登録される

毎月の借金返済で苦しむ債務者が任意整理を利用する場合に注意しなければいけないのは、債務者の借金残債総額次第では、任意整理を利用しても毎月の返済額自体は増加するリスクがあるという点。将来利息の発生を抑えられるので最終的な負担は軽減できますが、毎月の返済額増加による負担に耐えられないのなら、任意整理はおすすめできません。

たとえば、借金総額100万円を年利率15%、毎月2万円返済の条件で借り入れた債務者が任意整理をした場合としない場合を比較してみましょう。

比較項目 任意整理利用前 任意整理利用後
完済までの月数 79カ月 36カ月
完済までの利息総額 579,052円 0円
支払い総額 1,579,052円 1,000,000円
毎月の返済額 20,000円 27,778円

このように、返済期間を短縮・返済総額も減額できるというメリットを得る代償として、毎月の返済額が増額するというデメリットに耐えなければいけません。毎月の返済負担額が借金の苦しさの原因である場合には、任意整理を利用しても辛さは和らぐことがないでしょう。

したがって、任意整理を利用すべきか否かは、債務者の状況ごとに返済シミュレーションを実施して、完済計画をクリアできるかを事前に評価することが重要だと考えられます。手続きの簡便さだけに注目して安易に手を出すのではなく、手続き前に慎重な判断が求められます。

なお、任意整理については「任意整理とは何ですか?」で詳しく解説しています。あわせてご一読ください。

MEMO
もちろん、残債総額・現在の毎月の返済額次第では、利息・返済期間・毎月の支払い額すべての面において任意整理の恩恵に与れる場合も少なくはありません。特に、多重債務状態にある債務者が任意整理を利用する場合には複雑な事前シミュレーションが求められるので、かならず司法書士などの専門家に相談をしてから利用を決めましょう。

個人再生:借金総額を減額、分割払いしやすくする

個人再生とは、借入額に応じて一定割合で借金総額を減額し、原則3年で完済できる分割払い計画を作り直す債務整理手続きのこと。裁判所から求められる厳格な手続きを経なければいけませんが、後述する自己破産のデメリットを回避しながらも大幅な減額効果を期待できる点に魅力があります。

個人再生のメリット・デメリットは次をご参照ください。

個人再生のメリット
・借金総額次第で、最大1/10まで減額を期待できる
・住宅ローンを整理対象から外せる(マイホームを残せる)
・3年完済の返済計画を作り直せる
個人再生のデメリット
・会社員など、安定した収入が必要(無職では難しい)
・所有財産が多いと大幅な減額を期待できないおそれがある
・手続きや要件充足判断が難しい
・ブラックリストに約10年間登録される

個人再生の最大のメリットは、財産処分を回避して現在の生活様式を維持したまま返済を継続できるという点。自己破産のようにマイホーム等が処分されることがないので、生活面への支障を考えなくても大丈夫です。

とはいえ、個人再生は安定した給与がなければ認められないのが一般的。たとえば、大幅な収入減・解雇などが原因で借金苦におちいっている場合には、個人再生でのやり直しは難しいでしょう。個人再生を申し立てたものの認められず、後から任意整理・自己破産手続きをやり直すとなると、生活再建の道を歩み出すのが遅れかねません。

したがって、複雑な要件判断が求められる個人再生では、特に司法書士などの事前チェックが欠かせないと考えられます。

なお、個人再生については「個人民事再生とは何ですか?」で詳しく解説しています。あわせてご一読ください。

自己破産:借金返済義務の免責を目指す

自己破産とは、裁判所に借金返済義務を免責してもらう債務整理手続きのこと。債務者の収入条件を問わずに利用できるというメリットがある反面、誰でも簡単に利用できるわけではなく、一定の要件・デメリットを甘受しなければいけません。

自己破産のメリット・デメリットは次の通りです。

自己破産のメリット
・借金返済義務が免責され得る
・無職でも利用できる
自己破産のデメリット
・自由財産以外の債務者名義の財産が処分される
・一定の非免責債権は免責され得ない
・免責不許可事由(財産隠し・借金の原因がギャンブル等)が存在すると免責されない
・管財事件に分類されると費用・時間がかかる
・職業制限を受ける職種・資格が存在する
・手続き中は自由に旅行・出張ができない(許可が必要)
・ブラックリストに約10年間登録される

このように、自己破産で借金問題を解決するには、いくつものハードルを越えていかなければいけません。たとえば、マイホームを処分されても良いのか、養育費・未納税金は免責されないが問題ないのか、借金の原因は免責不許可事由に抵触しないのかなど、債務者の状況ごとにチェックすべき点が異なります。つまり、状況次第では、「自己破産のデメリットに耐えられないから別の債務整理手続きを利用するしかない」という選択をせざるを得ないこともありえるということです。

ただ、裏から表現すれば、「目立った財産がない・現在無職・生活費のために借金をした」という債務者にとっては、自己破産のデメリットは何ら弊害ではないということ。ブラックリスト登録等さえ我慢すれば、自己破産で借金返済の苦しみから難なく解放されるでしょう。

したがって、自己破産で苦しい借金生活から逃れることを希望する場合には、「自分にとっての自己破産のデメリット」を専門家にピックアップしてもらったうえで、我慢できるのか否かを事前に判断するのがポイントです。

なお、自己破産については「自己破産とは何ですか?」で詳しく解説しています。あわせてご一読ください。

債務整理のデメリットを避けたいなら自力で完済する工夫をしよう

以上のように、どの債務整理手続きを利用しても借金返済状況を改善できるというメリットが得られると同時に、色々なデメリットが生じることになります。どれだけ借金で苦しい思いをしていたとしても、「債務整理のデメリットだけは絶対に避けたい」という債務者も少なくはないでしょう。

このように、もし債務整理のデメリットをどうしても回避したいのであれば、自力で借金完済を目指すしかありません

もっとも、現状において借金を辛いと感じているのなら、今まで通りの返済生活をつづけていても状況は一切改善されないまま、むしろ深刻になる一方です。

そこで、債務整理を頼らずに自力完済を目指す債務者は、次の方法が実践可能かをご検討ください。これらを実践できるだけの収入・家計状況が整っているのなら、自分の力だけで苦しい借金生活を終わらせる道筋が見出せるでしょう。

毎月の返済額を増額する
毎月の返済額を増額すれば、それだけ元本が減るスピードがはやくなるので完済が近付きます。
繰り上げ返済する
当月分だけではなく翌月分以降の返済も済ませてしまう方法。翌月分以降の返済額はすべて元本に充当されるので利息の発生を抑えられます。
一括返済する
ボーナス月など、まとまったお金が入ったタイミングで残債を一括返済すれば辛い借金生活がすぐにでも終了します。

いずれの方法にも共通するのが、「少しでもはやく借金を完済してしまうこと」です。利息の発生を抑えられる・返済期間を短縮できるというメリットが得られるため、債務者の負担は大幅に軽減されるでしょう。

もっとも、返済期間の短縮を狙うばかりに生活費をギリギリまで切り詰めるのはおすすめできません。なぜなら、無理をすると完済まで返済を継続できないおそれがあるからです。これでは、せっかく辛い思いをしながら借金を返しつづけていた努力が無駄になってしまうでしょう。

したがって、自力完済を目指す場合、かならず「完済を実現できるのか」を事前に入念に判断するのが重要となります。もし、完済を達成できる自信がないのなら、悪あがきをせずに最初から債務整理を利用した方がスムーズに借金生活を終わらせられるでしょう。

なお、債務整理をすべきか否かの判断基準については以下のリンク先において詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

【債務整理を検討すべき8つのタイミング】早めの対策が借金生活から楽に抜け出すポイント 【債務整理を検討すべき8つのタイミング】早めの対策が借金生活から楽に抜け出すポイント

どれだけ借金が辛くてもやってはいけないことは4つ

最後に、借金の返済が苦しいときでもやってはいけないことを4つ紹介します。

終わりのない借金地獄から抜け出す希望をもてない状況では、どうしても冷静に状況を分析できなくなってしまうもの。しかし、次の4項目に手を出したとしても、本当の意味で債務者が救われることはありません

  1. 借金返済のために他社からの借入でその場しのぎをする
  2. 闇金や違法取引に手を出す
  3. 命を絶って借金地獄から抜け出す
  4. 債権者からの連絡を無視する

それでは、なぜこれらの方法を避けるべきかについて見ていきましょう。

別の借金でその場しのぎをする

返済に迫られているなか期限までにお金が用意できないとなると、他社からの借入でその場しのぎをする誘惑に駆られることもあるでしょう。

しかし、借金返済のために他社から借入をしたところでいわゆる”多重債務状態”におちいるだけ。借金総額は一切減りませんし、むしろ返済窓口が増えることによって管理が難しくなるというデメリットまで背負うことになってしまいます。

したがって、返済日にお金を用意できずに辛い思いをしているのなら、他社から借入をするのではなく、滞納によって遅延損害金等のペナルティが発生する前に債務整理に踏みきるようにしましょう。

闇金・違法取引に手を出してしまう

たとえば、総量規制いっぱいまで借金をしていたり、ブラックリストに登録されていたりする場合には、正規の貸金業者から新規に借入をすることができません。「もうどこからも借りられない」「金策尽きたのに返済日が近付いている」と不安を募らせる債務者に忍び寄ってくるのが闇金です。

追いつめられた債務者にとって、自分に手を差し伸べてくれる存在にはどうしても頼りたくなってしまうもの。しかし、絶対に闇金とかかわってはいけません。なぜなら、闇金とかかわるだけで次の4つのデメリットが発生することになるからです。

厳しい取り立てを受ける
上述の通り、闇金は違法行為によって取り立てをする可能性が高いもの。危害が加えられるリスクも生じます。
違法な利息を請求される
トイチ(10日で1割)・トゴ(10日で5割)など、闇金の利息は法外。いつまでも完済できずに利息の支払いだけに追われることになります。
個人情報が転売される
闇金に個人情報を渡すと、他の業者などに転売されるリスクが高まります。いつまでも闇金からの誘惑に晒されることになるので、生活再建の妨げになる可能性も。
債務者自身が違法行為に巻き込まれるリスクも生じる
闇金が勧誘するのは貸付だけではありません。給料ファクタリング・クレジットカード現金化・口座売買・携帯売買・ひととき融資など、債務者自身が刑事訴追され得る取引をもちかけてくることも。

今債務者が何より大切にしなければいけないことは、「借金生活から抜け出して健全な生活を送ること」のはず。しかし、一度闇金に手を出してしまうと関係を断つのは簡単ではありません。今以上に辛い思いをするだけです。

したがって、闇金からの誘惑に騙されるのではなく、司法書士などの専門家に相談して、前向きな解決策を提示してもらいましょう

命を絶ってしまう

借金問題で苦しむ債務者が自ら命を絶つというケースは少なくはありません。しかし、借金から逃れるために命を絶つのは間違った選択です。

そもそも、借金問題は債務整理でかならず改善できます。特に、自己破産で免責を得られたのならその時点で辛く苦しい返済生活は終わりです。確かにいくつかのデメリットは覚悟しなければいけませんが、自分の命を投げ出してまで回避すべき障害だとは考えられません。

さらに、債務者自身が命を絶つことによって返済義務から逃れられたとしても、相続人に借金が引き継がれるということを忘れてはいけません。もちろん、相続放棄という手段によって相続人が借金を回避することは可能ですが、そうなると他の財産をも承継することができなくなってしまいます。

あなたが今抱えている苦しみはわざわざ命を絶たなくても解決できるものです。まずは誰かに辛さ・苦しさを打ち明けて、冷静な気持ちを取り戻しましょう。

債権者からの連絡を無視する

借金を滞納している債務者がやってしまいがちなのが債権者からの連絡・督促を無視することです。返済できないと後ろめたい気持ちになってしまうため、債権者からの電話を無視したり、着信拒否して逃げ出したりしたくなるのは当然でしょう。

しかし、どれだけ債権者からの連絡が怖くても、絶対に無視をしてはいけません。なぜなら、債権者からの連絡を無視すると、「返済の意思がない債務者だ」と認識されてしまうからです。

特に、消費者金融などのプロの貸金業者は、返済意思の認められない債務者に対して容赦はしません。何度も連絡を繰り返し、それでも返済状況が改善されないのなら、最終的には強制執行によって財産・給与などを差し押さえるという手段で債権回収に踏み出してきます。そして、財産・給与などが差し押さえられると、債務者の生活は二度と強制執行前の状態には戻せません。家族・会社にも迷惑がかかるでしょう。

したがって、たとえ今すぐにお金を支払える状態ではないとしても、かならず債権者に対して常に返済意思があることを示し、差し押さえを先延ばしにしましょう

借金解決への道は早期の相談がポイントになる

借金が原因で辛く苦しい思いをしているとき、現実的な対応方法を考えるのさえ億劫になるのは仕方がないことです。

ただ、悩んでいても借金問題はどんどん酷くなるだけ。逃げたくなる気持ちは理解できるものではありますが、それをクリアしなければ本当の意味での安寧は訪れません。

したがって、まずは誰か頼れる人に辛い気持ちを打ち明けて冷静になりましょう。そして、自力完済を目指すべきかを判断し、これ以上返済継続が難しいのならできるだけすみやかに司法書士などの専門家に債務整理を依頼してください。

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