シングルマザーでも借金完済は可能?返済が厳しいときに検討すべき債務整理と公的制度を紹介

シングルマザーでも借金完済は可能?返済が厳しいときに検討すべき債務整理と公的制度を紹介

一般的に見ると女性の生涯平均収入は少ないため、シングルマザーの方は経済的な部分で苦労を感じることは多いでしょう。とくに、シングルマザーで借金を抱えている方は、このままでは大丈夫かな?と不安を抱えている方も少なくはありません。

そこで今回は、シングルマザーでも借金の返済はできるのか?についてお伝えします。少しでも「借金の返済が厳しい」「この先が不安」「借金を返済すると生活が苦しい」と感じているシングルマザーは、本記事を参考にしてください。

本文では、借金の返済を続けられるかどうかのシミュレーションや、頼れる行政制度や法的制度についてお伝えしています。

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この記事の監修者

近藤邦夫

司法書士法人 浜松町歩法務事務所」代表司法書士。 愛知県岡崎市出身。 昭和64年早稲田大学法学部卒業。 長年にわたり、債務整理を行い、 また宅地建物取引士の資格を生かし、不動産登記や商業登記も行なっている。

シングルマザーでも借金返済・完済は可能?

シングルマザーの方は女手ひとつで子育てをしなければいけず「借金」があると、不安材料のひとつになってしまうでしょう。では、シングルマザーが借金を返済することは不可能なのか?完済は目指せないのだろうか?と思われてしまう方がいるかもしれません。

少なくとも、現代社会でシングルマザーであることは、残念ながら社会的にハンディキャップとなり得るでしょう。

しかし、借金の返済や完済は難しいのか?といえば、そうとは言い切れません。

各家庭の状況や借金総額等によって状況が異なるでしょう。まずは、シングルマザーが借金返済・完済を目指せるのか?について、詳しくお伝えします。

借金総額次第では完済も目指せる

シングルマザーか否かに関係なく、借金総額次第で「借金の返済が厳しい」と感じる人「容易に借金を返済できる人」が分かれるでしょう。ただ、男性と女性の生涯平均収入を見ると大きな差が発生しているため、男性に比べるとシングルマザーの方は借金の返済が難しい傾向にあります。

性別 生涯平均収入
男性 2.92億円
女性 2.44億円

参考:北陸銀行|生涯平均収入の平均

上記のとおり、男性と女性では約4,800万円の差が発生します。仮に、現役として活躍できる年数が同じ40年だとしたら、年間120万円の差、1カ月で見れば10万円もの差が発生するでしょう。

現在借金を抱えているシングルマザーの方も「毎月の収入が10万円増えれば、難なく借金が返済できる」と感じている方が大半でしょう。実際、これが男性と女性の差。であることは悲しい事実です。

しかし、男性に比べて女性の収入が少ないこと、かならずしも借金の返済が難しいに直結するわけではありません

シングルマザーの方でも確実に借金の完済を目指せている方、実際に借金を完済できている方も少なくはありません。

次に、借金総額30万円~100万円を抱えているシングルマザーの方が、完済を目指すために必要な最低返済額についてお伝えします。

借金30万円の返済計画

借金総額が30万円を年率18%で借りている方は、1カ月間(30日間)で約4,438円の利息が発生します。このことを考慮すると、毎月1万円前後の返済を続けられなければ、完済は厳しいでしょう。

毎月の返済額 完済までの期間 総支払金額
10,028円 40カ月 401,120円

シングルマザーで収入が少なく、毎月5,000円程度の返済しかできないときの返済期間等は下記のとおりです。

毎月の返済額 完済までの期間 総支払金額
5,040円 150カ月(12年6カ月) 756,000円

借金30万円を年率18%で1カ月(30日間)借りたときに発生する利息が、約4,438円であるため、毎月5,000円しか返済できないと元金充当分が非常に少ないです。返済期間も10年を超えるうえに総返済金額も200%を超えます。

シングルマザーで経済的に厳しいという方であれば、借金の額に関わらず借金の根本解決をされたほうが良いでしょう。

借金50万円の返済計画

借金50万円を年率18%で借りていると、1カ月(30日間)で約7,397円の利息が発生します。このことを考えると、最低でも毎月15,000円程度返済ができなければ、完済は難しいでしょう。

毎月の返済額 完済までの期間 総支払金額
15,126円 46カ月 695,796円

「15,000円の借金返済は厳しい…。なんとか、10,000円なら…」と思われている方、1万円程度での完済も可能ではありますが、返済期間や総返済金額が大きく変わってしまいます。

毎月の返済額 完済までの期間 総支払金額
10,160円 90カ月(7年6カ月) 914,400円

毎月5,000円程度の差ですが、毎月の利息充当額を考慮すると大きな差が発生します。借金総額が50万円程度あるシングルマザーでも最低、15,000円程度の返済ができなければ完済は難しいと考えておきましょう。

借金100万円の返済計画

借金100万円を1社から借りているときの利息上限は15%であるため、1カ月(30日間)借りたときの利息は約12,328円です。利息を考慮すると、毎月最低でも25,000円の返済ができなければ完済は難しいでしょう。

毎月の返済額 完済までの期間 総支払金額
24,937円 56カ月 1,396,472円

仮に、毎月15,000円程度の返済しかできないとの返済期間等は下記のとおりです。

毎月の返済額 完済までの期間 総支払金額
15,008円 144カ月(12年) 2,161,152円

シングルマザーの方でも年収が300万円程度あれば、100万円の借金が可能です。毎月の総支給金額が25万円程度あれば年収300万円に達するため、一般的な女性でもたどりつく範囲内でしょう。

しかし、毎月25万円から各種税金や保険料を差し引かれたときの可処分所得は20万円前後です。この金額から生活費を支払い、さらに25,000円程度の借金返済は決して容易ではありません。

総量規制という法律によって、年収300万円ある方は100万円までの借り入れが可能です。しかし「借りられる=返済可能」ではないことを覚えておいてください。少しでも、返済が厳しいと感じるのであれば、債務整理等の手続きを検討してください。

参考:日本貸金業協会|お借入れは年収の3分の1までです

母1人で借金を完済するのは容易ではない

厚生労働省の調べによると、シングルマザー(母子家庭)の平均年収は243万円であるのに対し、シングルファザー(父子家庭)の平均年収は420万円です。その差は177万円にもなり、シングルマザーはシングルファザーに比べて圧倒的に借金返済が不利であることがわかります。

女性の社会進出を進めていくための努力がなされている現代でも、女性ひとりで子供を育てながら、働いて満足のできる収入を得ることは困難です。この中から毎月の借金返済をするのは容易ではなく、毎月数千程度の支出ですらも惜しいのが本音でしょう。

「借りたものは自分で返す」と、強い意志を持たれている方も多いかと思いますが、返済が厳しいときは行政や専門家を頼ることも検討してください。

参考:厚生労働省|全国ひとり親世帯等調査結果の概要

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シングルマザーで借金の返済が厳しいときはどうしたら良い?

シングルマザーの方で借金の返済が厳しいときは、下記のことを検討してください。

  • 債務整理で借金を減額もしくは免責
  • 一時的に借金返済が困難なら公的融資制度の活用
  • シングルマザーが受け取れる各種手当金の確認

借金の返済が厳しいときに検討すべきは、借金を根本的に解決する方法と返済できるお金を用意することの2つです。いずれかの方法を行うことで、確実に借金の完済を目指せるようになるでしょう。

債務整理で借金を減額・免責できる

債務整理をすれば、現在抱えている借金を大幅に減額したり免責(借金を0にすること)したりできます。債務整理の方法は下記の3種類で自分に合った方法を選択できます。

  • あらゆる「利息」をカットできる「任意整理」
  • 借金を1/5~1/10程度までカットできる「個人再生」
  • 今抱えている借金のすべてを免責できる「自己破産」

任意整理は、現在発生している利息や将来発生する利息をすべてカットし、元金のみの返済を続けていく手続きです。任意整理をすることで、毎月の支払額の軽減や総支払金額の軽減が見込めます。

個人再生は借金を1/5~最大で1/10程度まで減額できる債務整理手続きです。経済的メリットは任意整理以上ですが、借金を100万円以上まで減額することができません。最低でも100万円の借金は残ってしまうため、借金総額次第では任意整理や自己破産を選択されたほうが良いでしょう。

自己破産は、現在抱えている借金のすべてを免責する手続きです。一切の借金が残らないため、1から生活の立て直しが可能です。

いずれの債務整理を行っても、周囲の人や家族にバレてしまう可能性は低いです。唯一、個人再生と自己破産のみ「官報への債務整理手続きに関する情報掲載」のデメリットがあり、バレてしまう可能性があります。

しかし、一般の人で官報を閲覧する方はほとんどいません。

たまたま知り合いの方が官報を閲覧しても、あなたの情報を見つけることは容易ではないため、過度な心配をされる必要はないでしょう。

その他、子供への直接的な影響は一切ないため、借金の返済が厳しいときは安心して債務整理手続きを進めてください。

債務整理費用は「民事法律扶助制度」で準備可能

シングルマザーで債務整理費用の準備が難しいときは、法テラスの「民事法律扶助制度」を利用してください。民事法律扶助制度は、経済的に困窮している方でも安心して法的制度を利用できるように支援する制度で、債務整理手続きにも対応しています。

原則、無理のない範囲内で返済をしていかなければいけませんが、どうしても返済が厳しいときは猶予等にも応じてくれます。

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参考:法テラス|民事法律扶助制度

また、各弁護士事務所でも債務整理手続き費用の分割払いに応じてくれるので、まずは弁護士へ相談されてみてはどうでしょうか。中には「借金返済をしながら弁護士費用を支払うのは厳しい」と感じている方がいるかもしれませんが、弁護士に債務整理を依頼した時点で返済義務が止まります。

これは、弁護士が債権者に「受任通知」を送付することによる効果で、債権者は受任通知を受け取った時点で債務者に対する取り立て等の行為を禁止しています。よって、毎月借金の返済に充てていた費用を弁護士費用に充てれば、無理なく弁護士費用の準備が可能となるでしょう。

参考:e-gov|貸金業法(第21条)

一時的に返済が厳しいのであれば公的融資制度の利用検討

何らかの理由で一時的に借金の返済が困難なら、公的融資制度の利用を検討してください。過度な借り入れや支払い遅延等で、信用情報に問題がある方でも、下記の公的制度は問題なく利用できます。

  • 社会福祉資金貸付制度
  • 母子寡婦福祉資金貸付制度

社会福祉資金貸付制度は、教育資金や生活資金など使途に合わせたお金を借りられます。

たとえば、借金の返済をしたことに起因して生活費が足りなくなってしまったときは、緊急小口貸付や生活支援費などを借りれば良いでしょう。ただし、借金を返済するための借り入れはできないので注意してください。

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母子寡婦福祉資金貸付制度とは、20歳未満の子供がいる母子(父子)家庭の方が利用できる制度です。あらゆる使途に合わせた借り入れが可能であるため、借金の返済で資金が足りないときは利用を検討してください。

参考:男女共同参画局|母子父子寡婦福祉資金貸付金制度

各種手当て金の受け取りを確認

シングルマザーの方は一般家庭に比べて受け取れる手当てが多く存在します。もれなく手当てを申請することで、借金の返済が少しは軽減できるでしょう。

【シングルマザーが受取可能な手当一覧】

  • 児童扶養手当
  • 児童育成手当
  • 住宅手当
  • 遺族年金

もし、上記手当の中で受け取っていないものがあれば、早急に申請し受け取ってください。それぞれの手当について詳しくお伝えします。

児童扶養手当

児童扶養手当とは、ひとり親世帯を対象に生活の安定と自立を目的として支給される手当です。子供が18歳に達して以降の3月31日まで現金が支給される程度で、各市区町村に申請すれば受け取りができます。

児童扶養手当の支給額は世帯の所得や子供の人数によって大きく異なります。最低でも1カ月あたり1万円以上の現金が支給されるため(支給日は2カ月に1回、2カ月分をまとめて支給)、借金返済の当てにしたり生活費の当てにしたりできるでしょう。

参考:厚生労働省|児童扶養手当について

児童育成手当

児童育成手当も児童扶養手当同様、ひとり親世帯を対象に現金を支給する制度です。児童扶養手当と児童育成手当の違いは「支給要件」であり、児童扶養手当を受給できない方も対象になる可能性があります。

ただし、児童育成手当は執筆時点では東京都しか行っていません。

東京都に住まわれているシングルマザーの方は対象になる可能性が高いので、申請がお済みでない方は申請されてみてはどうでしょうか。なお、児童扶養手当と児童育成手当を併せて受給することも可能です。

住宅手当

シングルマザーの住宅手当について、国単位で定められているものはありません。しかし、各自治体で、ひとり親世帯を対象にした家賃補助を行っているケースはめずらしくありません。

お住まいの市区町村で何らかの住宅補助がないか否か、確認されてみてはどうでしょうか。毎月、数万円程度でも家賃を補助してもらえれば、少しは借金返済の目処を立てられるはずです。まずは、知る努力をしてください。

遺族年金

配偶者と死別してシングルマザーになってしまった方は、遺族年金を受け取れる可能性が高いです。遺族基礎年金および遺族厚生年金それぞれ受給が可能であり、毎月数十万円程度の収入を得られることもあります。

もちろん、年金を受給するための条件をクリアしていなければいけませんが、シングルマザーの方であれば受け取れる可能性が高いでしょう。相談先はお近くの「年金事務所」もしくは「年金相談センター」です。

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なお、配偶者が借金を残したまま死亡してしまったときは、相続を知ったときから3カ月以内に相続放棄をすれば相続せずに済みます。自分の借金ではなく、配偶者の残した借金をシングルマザーになってまで背負う必要はありません。

相続放棄等についても弁護士へ相談できるので、借金問題も含めて不安を抱えている方は、まず相談してください。

最終的には生活保護の受給を検討

シングルマザーで借金の返済がどうしても困難であったり、借金を返済すると生活費が亡くなったりするのであれば、生活保護制度の利用も検討してください。

生活保護の受給を開始しても借金はなくなりませんが、生活費の確保はできます。ただし、生活保護を受給されている方は、借金の返済を認められていません。よって「生活保護の受給開始=自己破産一択」になります。

法テラスの民事法律扶助制度を利用すれば、自己負担無しで自己破産をできるので、あわせて検討してください。

なお、生活保護はお住まいの市区町村で申請ができます。借金問題を弁護士へ相談されるときは、生活保護の受給申請中(検討中)であることもしっかり伝えてください。

参考:厚生労働省|生活保護制度

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まとめ

今回は、シングルマザーの方が借金の返済・完済はできるのか?についてお伝えしました。今回お伝えしたことをまとめると下記のとおりです。

  • シングルマザーでも借金総額と収入額のバランス次第では借金の返済・完済も可能。ただし、利息プラス元金の支払いを続けられなければ完済がかなり難しい
  • 女性の年間平均年収は男性に比べて少ないため、シングルマザーで借金を返済していくのは、とても厳しいのが現実
  • シングルマザーであれば、さまざまな行政の支援制度が準備されているため、うまく活用できれば収入差をカバーできる可能性は高い。
  • 少しでも「借金の返済が厳しい」「借金の返済をすると、生活費が足りなくて困る」などと感じているのであれば、迷わず債務整理を検討すべき。債務整理の費用は民事法律扶助制度や分割制度の利用をすれば準備ができる。なお、生活保護受給者は民事法律扶助制度を利用した際の費用が一時的に猶予される

シングルマザーの方は、一般的な世帯やシングルファザーに比べて収入が少ない傾向です。そのため、借金の返済が厳しいとか、生活が苦しいと感じている方は少なくないでしょう。

しかし、生活や借金の返済が厳しいときにこそ活用できる制度がいくつも用意されていました。少しでも借金の返済が厳しいと感じているのであれば、債務整理を検討したり利用できる制度がないか今一度確認したりしてください。

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