「ギャンブルで作った借金は債務整理ができない」と、誤った情報を認知されている方も多いでしょう。
じつは、ギャンブルで作った借金であっても債務整理が可能です。とくに、債務整理手続きの一種である「任意整理」と「個人再生」については、借金を抱えてしまった理由を問わず債務整理ができます。
ではなぜ「ギャンブルで作った借金が債務整理できない」と言われているのか?
それは、自己破産という債務整理手続きでは、免責不許可事由に該当するため、ギャンブルで作った借金をゼロにすることができないためです。
しかし、債務者本人(借金を抱えている人)次第では自己破産も可能です。つまり、ギャンブルで作った借金はいずれの債務整理も可能です。
今回はギャンブルで作った借金でも債務整理が可能であることについて、なぜ「ギャンブルで作った借金は債務整理ができないと言われるのか」について詳しくお伝えします。
- 任意整理と個人再生は借金を抱えた理由を問われないため、ギャンブルが原因で作った借金も債務整理可能
- 自己破産は免責不許可事由に該当するため、ギャンブルとの相性は悪い債務整理
- 債務者本人の状況では「裁量免責」によって自己破産が認められる可能性あり
- ギャンブルを理由に債務整理をするのであれば、ギャンブルをやめることは必須
どうしてもやめられない方は専門相談窓口への相談も検討したほうが良い
目次
ギャンブルで作った借金も債務整理で減らせる
ギャンブルで作ってしまった借金であっても、本人次第で債務整理が可能です。
債務整理には下記3つの方法がありますが、いずれも可能です。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
「ギャンブルや浪費によって作った借金は、自己破産ができない」と思われている方も多いですが、これは本人次第です。
自己破産には「免責不許可事由」といって、免責許可(借金をゼロにする決定)がおりない事項がいくつかあります。
その中には「ギャンブルや浪費で作った借金」があるため、ギャンブルで作った借金は基本的には自己破産が認められません。
しかし、裁判所の裁量によって「裁量免責」というものが認められることがあります。
裁量免責が認められれば、ギャンブルで作った借金も自己破産を含めたすべての債務整理が可能です。まずは、それぞれの債務整理とギャンブルの関係性について詳しくお伝えします。
任意整理は借金の理由に関係なくできる
任意整理は債務者(お金を借りた側)と債権者(お金を貸した側)の間に弁護士などの専門家が入って、将来の利息を減らせるよう「交渉」をする手続きです。
債権者との交渉を行う過程で「なぜ借金を抱えることになったのか」を問われることはありません。つまり、ギャンブルで作った借金でも任意整理が可能です。
ギャンブルで作った借金を任意整理するのであれば、いくつかの条件があります。あくまでも「交渉」なので、スムーズに手続きを進められるよう下記のことに注意してください。
- 元金のみを3年間(最長5年程度)で返済できる能力がある
- 安定した収入がある
任意整理では和解後も返済を続けていかなければいけません。そのため、和解後に残った元金を確実に返済し続けられる能力が最低条件です。
また、任意整理後もギャンブルを辞められずに返済に行き詰まってしまった場合、2度目の任意整理は原則できません。
なぜなら、任意整理をする意味がないからです。将来の利息をカットする任意整理は、1度目の時点でカットされているため、2度目以降はカットできる部分がありません。
債権者からすれば、1度はかならず返済すると言って約束したものを2度も繰り返されれば、問答無用で交渉に応じないでしょう。
任意整理は債務整理の中でもメリットが多い手続きですが、ギャンブルを辞められなければ、デメリットの多い債務整理を検討せざるを得なくなるでしょう。
個人再生をすれば、借金をした原因に関係なく元金を減額できる
個人再生も借金をした理由が問われることがないため、ギャンブルで作ってしまった借金も減額できます。
そもそも個人再生(個人民事再生、民事再生とも言う)とは、住宅等の財産を残したまま借金を「大幅に減額」できる手続きです。
減額されたあとの借金をおおむね3年以内で完済を目指します。
個人再生ができる人は下記の条件を満たした人です。
- 借金総額が5,000万円以下
- 安定した収入があること
- 過去7年以内に免責決定や再生計画認可決定を受けていない
個人再生も自己破産と同じく法的制度であって、法的強制力を有します。そのため、再生認可決定がおりれば債権者(お金を貸した側)の意志に関係なく、借金を大幅に減額できます。
しかし、過去7年以内に自己破産の免責決定を受けた方や個人再生の再生計画認可決定を受けた方は、個人再生ができません。
つまり、ギャンブルによって作った借金で、短期間で何度も法的手続きを行使することはできません。
個人再生で借金を大幅に減額したところで、ギャンブルを断つことができなければ同じことの繰り返しになります。
ギャンブルで作った借金も個人再生で大幅に減額できますが、最初で最後のチャンスと思うようにしてください。
参考:アディーレ法律事務所|ギャンブルの借金でも民事再生は可能ですか?
自己破産は「免責不許可事由」に該当するため原則できない
ギャンブルで作った借金は免責不許可事由に該当するため、原則自己破産ができません。
ただし、裁判所が「裁量免責」を認める場合に限って、ギャンブルで作った借金も自己破産できます。
そもそも自己破産とは、あなたが今持っている財産を処分して債権者(お金を貸した人)に分配し、すべての借金をゼロにする手続きです。
債務者(お金を借りた人)からずればとてもメリットが大きいですが、債権者からするとデメリットしかありません。
そのため自己破産は、他の債務整理手続きに比べてきびしい条件を定めています。自己破産をできる人の条件は下記のとおり。
- 免責不許可事由に該当しないこと
- 借金が払えない状態であること
- 非免責債権ではないこと
免責不許可事由には下記のことがあてはまります。
- 浪費やギャンブルによって作った借金
- 財産を隠したり壊したり他人に譲渡したりした場合(いわゆる財産隠し)
- 破産申立てより1年前以内に信用等も含めた虚偽の申告をし、借金をした
- ローンやクレジットカードで購入した商品を安い値段で売却した
- 破産申立てから7年以内に免責許可を受けた
- 裁判所や破産管財人の調査に協力しなかった
参考:裁判所|免責不許可事由
「1.」に「浪費やギャンブルで作った借金」と記載してあり、ギャンブルで作った借金は免責不許可事由に該当することが記されています。
また、自己破産の条件では「免責不許可事由に該当しないこと」と記されているため、ギャンブルで作った借金を自己破産することは原則できません。
裁量免責次第では免責許可がおりることもある
裁判所では、免責不許可事由に該当した場合であっても、下記の情報を総合的に判断して免責許可を決定することがあり、これを「裁量免責」と言います。
- 借金を抱えた理由
- 破産者(自己破産の申し立てをした人)の生活や収入
- 破産者の生活再建のためにはどうするべきか
- その行為の悪質性
- 破産者本人の意識や反省度
参考:裁判所|免責不許可事由
ギャンブルで作った借金であっても、破産者本人が深く反省しギャンブルをやめる努力をしているなど、本人次第で免責許可がおります。
実際、相当高額な借金額でなければ、債務者(借金を抱えている人)の経済的生活再建を目的として免責許可を決定することがほとんどです。
その代わり「破産手続き中にギャンブルをした」など悪質性があれば、最終的に免責許可がおりません。
「今回をきっかけに絶対にギャンブルをやめる」といった強い意志のもと、自己破産を開始してください。
万が一、借金の額が高額であった、悪質性が認められて免責許可がおりなかったなどあれば個人再生を検討してください。
借金は残りますが、借金を作ってしまった理由に関係なく債務整理が可能です。
個人再生 | 自己破産 | |
---|---|---|
借金 | 最大1/5~1/10まで減額 | ゼロ |
ギャンブル | 可能 | 原則不可 |
官報掲載 | ◯ | ◯ |
職業制限 | なし | あり |
参考:アディーレ法律事務所|借入の理由にギャンブルや浪費が多少ありますが、免責は認められませんか?
ギャンブルを辞めて生活にゆとりが生まれるなら自己破産は認められない
ギャンブルが理由で借金の返済ができず、自己破産を検討しているのであれば、免責許可は絶対におりません。なぜなら、ギャンブルをやめれば生活ができるためです。
自己破産の条件には「借金の返済ができない人」と定められています。つまり、ギャンブルをやめれば借金の返済ができるのであれば、免責許可は絶対におりません。
ギャンブルで作った借金を債務整理したいなら行うべき3つのこと
ギャンブルで作ってしまった借金を債務整理で減額したりゼロにしたりしたいのであれば、下記のことを行ってください。
- 自己破産が無理なら任意整理や個人再生を検討
- 自分がギャンブル依存症である自覚を持つ
- ギャンブルをやめるための努力を怠らない
いずれかひとつでも欠けていると、債務整理自体が成立しなかったり、同じことを繰り返したりする結果になります。
ギャンブルに対する認識を改め、債務整理で生活再建を目指してください。
1.自己破産が無理なら任意整理や個人再生を検討する
債務整理の中でも自己破産は借金をゼロにできるため、生活再建を目的とするのであればメリットはとても大きいです。
しかし、ギャンブルで作った借金は免責不許可事由に該当するため、自己破産ができないことも考えなければいけません。
もしも免責許可がおりなければ、個人再生や任意整理など借金を抱えた理由を問われない債務整理を検討する他ないでしょう。
2.ギャンブル依存症である自覚を持つ
任意整理や個人再生、自己破産など債務整理と言ってもいくつかの手段がありますが、いずれを検討するにしても「自分がギャンブル依存症である自覚を持つ」ことはとても大切です。
ギャンブルで作った借金でも任意整理や個人再生であれば手続きができます。ただ、2度3度と同じことを繰り返しているとだんだん選択できる債務整理が減っていくでしょう。
そのため「ギャンブルで作った借金も債務整理できた、良かった良かった」で終わりにするのではなく、自覚を持ち2度と同じことを繰り返さない努力が必要です。
必要に応じて家族を頼ったり、各相談窓口へ相談したりしてください。
ギャンブル等依存症でお困りの方、自覚はあるけどやめられない方は消費者庁のギャンブルでお困りの方向けのサイトをご確認ください。
各相談窓口や物理的にギャンブルをできなくする手段等が掲載されています。
3.ギャンブルをやめるための努力を怠らない
自己破産の裁量免責も当然ながら、他の債務整理もギャンブルをやめられなければ同じことを繰り返すだけです。
何度もお伝えしているように、ギャンブルで作った借金の債務整理はたった1度のチャンスであって、そう何回も認められるものではありません。
自己破産の裁量免責が認められるためには「絶対にギャンブルをやめます、今後一切やりません」という言葉のみでは足りません。
具体的にどうやってやめるのか、やめるためにはどのように努力をするのかを問われます。
その答えが曖昧であれば、免責許可がおりないことすらあります。
今回をきっかけに、是が非でもギャンブルをやめること、やめる努力を怠らないという強い意志を持ち、債務整理をはじめてください。
まとめ
今回は、ギャンブルで作った借金でも債務整理ができるの?と疑問を抱えている方に向けて、ギャンブルでも債務整理が可能であることをお伝えしました。
今回お伝えしたことをまとめると
- 任意整理と個人再生は借金の理由を問われない債務整理手続き
- ギャンブルで作った借金は原則、自己破産はできないけど「裁量免責」が認められれば可能
- 裁量免責が認められるためには、ギャンブルとの関係を断つことは必須であり、反ししていることが絶対条件
- いずれの債務整理もギャンブルを理由に2度目はない、同じことを繰り返さないためには相当な覚悟が必要
ギャンブルで作った借金も基本的にすべての債務整理が可能です。唯一、自己破産のみ「裁量免責」が認められなければいけませんが、余程のことがない限り認められます。
債務整理の目的は、借金を抱えてしまったかたの生活再建です。「ギャンブルで作った借金は自業自得」と言われても仕方ないですが、法的制度でまだ救われる余地はあるでしょう。
ギャンブルを理由に債務整理をするのであれば、ギャンブルとの関係を断つことは絶対条件です。債務整理をきっかけに、生活再建を目指してください。
ギャンブル毎の具体的な借金返済については下記記事をご覧ください。
借金をしてるのに競馬をやめられない!現状を変える方法と借金の解決方法 借金が増えるのにパチンコがやめられない?現状を変える為にやるべきことと借金の解決方法を解説