自己破産にはどれくらい期間がかかる?破産後にクレジットカードを作れるまでの期間も解説

自己破産にはどれくらい期間がかかる?破産後にクレジットカードを作れるまでの期間も解説

自己破産の手続きは、主に、同時廃止事件と少額管財事件、そして、通常管財事件の3つの種類があります。

手続きの期間において、それぞれに違いはあるのでしょうか?

自己破産を検討する人にとっては、気になることの1つだと思います。

そこで今回は、自己破産の手続きにかかる期間について、手続きの種類ごとに解説します。

この記事の監修者

近藤邦夫

司法書士法人 浜松町歩法務事務所」代表司法書士。 愛知県岡崎市出身。 昭和64年早稲田大学法学部卒業。 長年にわたり、債務整理を行い、 また宅地建物取引士の資格を生かし、不動産登記や商業登記も行なっている。

自己破産の手続きにかかる期間は?

「自己破産」は、裁判所を通して、借金の支払いを免除してもらう手続きです。

自己破産の手続きは、裁判所から免責の許可を受けることにより、手続きが終結します。裁判所を通すこともあり、多くの時間がかかりそうにも思えますが、実際のところ、どうなのでしょうか。

この点、自己破産の手続きは、大きく分けて、同時廃止事件と少額管財事件、そして、通常管財事件の3つの種類があります。

自己破産の手続きにかかる期間は、手続きの種類によって異なります。

同時廃止事件の場合

同時廃止事件」とは、自己破産を申し立てる際に、破産者が財産を所有しておらず、また、免責不許可事由にあたる事実が認められない場合に採られる手続きです。

ここでいう「免責不許可事由」とは、「免責」について許可を受けられない可能性のある行為として、破産法で定められているものをいいます。

同時廃止事件として扱われた場合の手続きの流れは、以下のとおりです。

  1. 申し立ての準備
  2. 申し立て
  3. 破産手続開始決定と同時廃止決定
  4. 免責審尋期日
  5. 免責許可決定とその確定

1.申し立ての準備

自己破産の手続きは、裁判所を通す必要があるため、まずは、裁判所に自己破産を申し立てる必要があります。

自己破産を申し立てる際には、申立書をはじめ、債権者一覧表や財産目録、預貯金口座の通帳のコピー、源泉徴収票などといった数多くの書類を提出しなければなりません。

申し立ての準備にかかる期間は、人によってまちまちですが、早くても2カ月~3カ月程度かかることが多く、遅いと半年~1年近くかかるケースもあります。

2.申し立て

自己破産を申し立てる準備が整ったら、裁判所に申立書等を提出します。

もっとも、裁判所に申立書等を提出することで、自己破産の手続きが直ちに開始されるわけではありません。

申立書を受理した裁判所は、書類に不備がないか、追加で資料を提出してもらう必要があるかなどについて確認し、必要があれば、その場で書類の訂正を求め、また、追加で資料を提出するよう求めることもあります。

3.破産手続開始決定と同時廃止決定

申立書等の書類に不備がなく、また、不備に対する補正が済むと、裁判所は破産手続開始決定を出します。

自己破産を申し立ててから、破産手続開始決定が出るまでには、およそ2週間~1カ月程度かかることが一般的です。

また、同時廃止事件の場合、破産手続開始決定とともに手続きを終わらせる「同時廃止決定」が、破産手続開始決定と同時に裁判所から出されます。

4.免責審尋期日

破産手続開始決定から約3カ月後に免責審尋期日が指定されます。

ここでいう「免責審尋期日」とは、破産者の借金を免除することの相当性を判断するために、裁判官が、破産者に対して質疑を行う手続きです。

実務においては、申立書に記載されている内容について、裁判官から簡単に確認がなされる程度であり、10分程度で終わります。

5.免責許可決定とその確定

同時廃止事件では、管財事件のように破産管財人による財産調査や債権者集会は予定されていないため、管財事件より早期に手続きが終結します。

自己破産を申し立ててから、免責許可決定が出るまでには、およそ6カ月程度かかることが一般的です。

裁判所により免責許可決定がなされると、その決定日からおよそ2週間後に官報に掲載され、そこからさらに2週間が経過することにより免責許可決定は確定します。

免責許可決定が確定してはじめて、破産者は借金の支払いを免除されることになります。

少額管財事件の場合

少額管財事件」とは、通常の管財事件よりも裁判所への予納金の負担を軽くした手続きのことをいい、弁護士が代理人となって申し立てることが条件となる手続きです。

少額管財事件として扱われた場合、以下のような流れで手続きが進められます。

  1. 申し立ての準備
  2. 申し立てと破産管財人の選任
  3. 破産手続開始決定
  4. 財産調査
  5. 債権者集会及び免責審尋期日
  6. 免責許可決定とその確定

1.申し立ての準備

申立書をはじめ、債権者一覧表や財産目録、預貯金口座の通帳のコピー、源泉徴収票などを準備しなければならないのは、同時廃止事件の場合と同様です。

申し立ての準備にかかる期間についても、基本的には同時廃止事件の場合と同程度の期間がかかります。

2.申し立てと破産管財人の選任

少額管財事件の場合、自己破産を申し立てると、裁判所により破産管財人が選任されます。

ここでいう「破産管財人」は、破産者の財産を管理したり処分したりする権限を有する弁護士のことです。

破産管財人が選任されると、そこから1週間~2週間以内に破産管財人と申立代理人、そして、本人の三者間で打ち合わせが行われ、破産管財人から本人に対して、返済が困難になった経緯や現在の生活状況などの聴き取りが行われます。

3.破産手続開始決定

破産管財人との打ち合わせが終わり、特に問題がなければ、裁判所は破産手続開始決定を出します。

自己破産を申し立ててから、破産手続開始決定が出るまでには、およそ2週間~1カ月程度かかることが一般的であり、この点は同時廃止事件の場合と同じです。

4.財産調査

裁判所から破産手続開始決定が下りると、破産管財人は財産調査を開始します。

具体的には、債権者に配当できるだけの財産があるかどうかを調査し、財産があれば処分して換価する手続きを行うのです。

財産調査の結果は、後に開かれる債権者集会で破産管財人より説明がなされます。

5.債権者集会及び免責審尋期日

債権者集会」とは、破産管財人が管財業務の進捗を報告するために、裁判所によって開かれる集会のことをいい、自己破産を申し立ててから3カ月~4カ月後に開かれることが一般的です。

債権者集会には、裁判官と破産管財人、本人と申立代理人が参加し、破産管財人から財産の換価状況などについて報告がなされます。

少額管財事件においては、弁護士が代理人となって申し立てることが条件となっていることは、先述したとおりです。

そのため、弁護士により一定の調査が行われていることが前提となっているため、債権者集会は基本的に1回で終わります。

また、債権者集会は、免責審尋期日も兼ねているため、本人は特段の事情がないかぎり、裁判所に出頭しなければなりません。

6.免責許可決定とその確定

免責審尋期日から1週間程度が経つと、裁判所により免責許可決定がなされ、その日からおよそ1カ月後に、免責許可決定が確定します。

免責許可が確定するまでには、自己破産を申し立ててから6カ月~1年程度かかることが一般的です。

通常管財事件の場合

通常管財事件」とは、自己破産を申し立てる際に、破産者が一定の財産を所有している場合や免責不許可事由にあたる事実が疑われるような場合に採られる手続きです。

管財事件として扱われた場合、以下のような流れで手続きが進められます。

  1. 申し立ての準備
  2. 申し立てと破産管財人の選任
  3. 破産手続開始決定
  4. 財産調査
  5. 債権者集会及び免責審尋期日
  6. 配当手続と異時廃止決定
  7. 免責許可決定とその確定

1.申し立ての準備

基本的には、同時廃止事件の場合と同じですが、管財事件の場合は、それに加え、財産を証する資料なども提出しなければなりません。

たとえば、持ち家がある場合には、持ち家(不動産)に係る全部事項証明書(登記簿謄本)や住宅ローンの返済計画表なども必要になります。

管財事件では、同時廃止事件に比べ、多くの資料を提出しなければならないため、計画性を持って資料を揃えていかないと、その分だけ申し立ての時期も後にずれ込む可能性があり、注意が必要です。

2.申し立てと破産管財人の選任

通常管財事件についても、少額管財事件と同様に、自己破産を申し立てると、裁判所により破産管財人が選任されます。

破産管財人が選任され、そこから1週間~2週間以内に破産管財人と申立代理人、そして、本人の三者間で打ち合わせが行われますが、この点は、少額管財事件の場合と同じです。

3.破産手続開始決定

破産管財人との打ち合わせが終わり、特に問題がなければ、裁判所は破産手続開始決定を出します。

自己破産を申し立ててから、破産手続開始決定が出るまでには、およそ2週間~1カ月程度かかることが多く、この点は同時廃止事件や少額管財事件の場合と同じです。

4.財産調査

裁判所から破産手続開始決定が下りると、破産管財人は財産調査を開始します。

具体的には、破産管財人は、債権者への配当を行うために、破産者が所有する財産を処分して換価する手続きを行うのです。

財産調査の結果は、後に開かれる債権者集会で破産管財人より説明がなされます。

5.債権者集会及び免責審尋期日

通常管財事件においても、少額管財事件と同様、自己破産を申し立ててから3カ月~4カ月後に債権者集会が開かれることが一般的です。

債権者集会には、裁判官と破産管財人、本人と申立代理人が参加し、破産管財人から財産の換価状況などについて報告がなされます。

破産管財人による財産調査が完了し、換価できる財産がない場合には、債権者集会は1回で終わることが多いです。

しかし、換価できる財産がある場合や財産を換価することが容易でないような場合には、数回にわたり債権者集会が開かれることもあり、その場合、手続きが終わるまでに1年近くの時間を要することもあります。

また、債権者集会が免責審尋期日を兼ねていることは、少額管財事件の場合と同じです。

6.配当手続と異時廃止決定

財産の換価を終えた破産管財人は、債権者に対し配当を実施し、これをもって、破産手続きは終結です。

換価できる財産がない場合には、裁判所により異時廃止決定がなされ、破産手続きは終結します。

7.免責許可決定とその確定

債権者集会から1週間程度が経つと、裁判所により免責許可決定がなされ、その日からおよそ1カ月後に、免責許可決定が確定します。

免責許可が確定するまでには、自己破産を申し立ててから6カ月~1年程度かかることが一般的です。

自己破産後クレジットカードを作れるまでの期間は?

自己破産をすると、一定期間、新たに借り入れをしたり、クレジットカードを作ったりすることが難しくなります。

これは、どのような理由によるもので、また、自己破産後どの程度の期間が経てば、新たにクレジットカードを作ることができるようになるのでしょうか?

自己破産をするとブラックリストに載る

自己破産をすると、ブラックリストにその情報が登録されます。とはいえ、ブラックリストというリストが実際に存在するわけではありません。

正確には、信用情報機関に自己破産の情報が登録されることになります。

ここでいう「信用情報機関」とは、銀行やクレジットカード会社、消費者金融等が加盟する機関のことをいい、主に、借入れの申込情報や返済状況等を管理する機関です。

信用情報機関に情報が登録されると、債務者は経済的な信用を失うことになります。

たとえば、銀行やクレジットカード会社は、新たに借入れやクレジットカード発行の申込みを受けると、申込者に支払能力があるかどうかを審査するために、信用情報機関に申込者の信用情報を照会するわけです。

そこで、申込者に関する情報が事故情報として登録されていると、銀行等から、支払能力がないと判断され、審査に通らない可能性が高くなります。

このように、自己破産をすると、その情報がブラックリストに載るため、一定期間クレジットカードを作ることができなくなるわけです。

ブラックリストに載る期間

ブラックリストに情報が登録されると、一定期間、情報は登録されたままの状態になります。

自己破産でいうと、免責許可決定が確定した日からおよそ5年~10年間は情報が残るとされており、銀行系に至っては、10年間情報が残ってしまうのです。

そのため、この期間に、クレジットカードを作ることは難しいといえ、少なくとも、この期間が経過して、ブラックリストから情報が抹消されてはじめて、クレジットカードを作れるようになります。

「社内ブラック」の場合はカードが作れないこともある

社内ブラック」とは、債権者が社内で独自に保有する信用情報のことです。

通常ブラックリストに載ると、先述したように、免責許可決定の確定後およそ5年~10年間は記録が残ったままとなりますが、その期間が経過すれば、記録は抹消されます。

ですが、社内ブラックのように、ブラックリストとは別に、債権者が社内で債務者に係る信用情報を持ち続ける場合があります。

この場合、ブラックリストから記録が抹消されていても、その債権者との関係では、自己破産をしたという事実が記録として残り続けるということになるのです。

そのため、社内ブラックを保有している債権者に対し、新たにクレジットカード発行の申込みをしても、審査に通らない可能性があります。

まとめ

今回は、手続き別に自己破産にかかる期間についてまとめました。早ければ6カ月程度で免責を受けられますが、場合によっては、1年を超える場合もあります。

円滑に手続きを進めるためにも、手続きの流れを理解しておくことは有益です。

そうすることで、いち早く生活再建への一歩を踏み出すことが可能になります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です