「公務員は借金がしやすい」とはよくいったもので、公務員というだけで借入審査に通過する確率がかなり上がります。
高額な借金であっても回収しやすいため、貸付を行う業者は少なくはないでしょう。
その結果「借りるだけ借りて返せない状態に陥ってしまった」ということにもなりかねません。
公務員の方も借金の返済が厳しくなれば「債務整理」という選択ができます。
しかし、公務員というだけで厳しい和解条件を提示されたり、資産価値を過大評価されたりなど、民間企業とは異なる対応をされる可能性が高いです。
また、公務員がお金を借りられる制度「共済組合からの貸付」を債務整理することで、借金が職場にバレてしまう可能性も高いです。
公務員は一般の人に比べると借金がしやすい反面、債務整理をするときもデメリットが多いといえるでしょう。
今回は、借金の返済が厳しくなった公務員の方が債務整理をできるのか、債務整理をするときの注意点は何か、などの疑問を抱えている方に向けて以下のことをお伝えします。
- 公務員でも債務整理はできるが共済組合からの借り入れがあるときは要注意
- 公務員が債務整理をした事実がバレても免職になることはないが自分が居づらくなるので要注意
- 公務員が債務整理をするときは退職金の評価や厳しい和解条件について要注意
「公務員だけど債務整理をしたい」と思われている方はぜひ参考にしてください。
公務員でも債務整理はできる?職場にバレる可能性はある?
公務員でも債務整理は可能であり、職場にバレる可能性はほぼ0と思っておいて良いでしょう。
中には「公務員は職業制限を受けるから、自己破産ができない」と思っている方もいますが、安心してください。公務員が資格制限を受けることはありません。
また、公務員が債務整理をしても職場に何らかの連絡がいくことはないため「周囲の人にバレてしまうのではないか」といった心配をする必要もないでしょう。
ただし一つ懸念すべきなのが「共済組合からの借り入れ」です。
共済組合からの借り入れを債務整理してしまうと、職場にいる一部の人にバレてしまう可能性があります。
「周囲の人には絶対にバレたくない」と思われているのであれば、どの債務整理をすべきか検討しなければいけません。
まずは、公務員でもできる債務整理の種類や、周囲の人にバレる可能性がある「共済組合からの借り入れ」などについてお伝えします。
公務員はいずれの債務整理もできる
債務整理は以下の3種類がありますが、公務員はすべての整理手続きを選択できます。
- 将来の利息をカットして元金の完済を目指す「任意整理」
- 借金を最大で1/10まで減額できる「個人再生」
- 現在抱えている借金のすべてが免責になる「自己破産」
上記の整理手続きについて、公務員との相性や注意すべき点についてお伝えします。
将来の利息をカットして元金のみの完済を目指す「任意整理」
任意整理は、将来の利息をカットして残った元金のみを原則3年(最長5年程度)で完済する手続きです。
任意整理手続きは「将来の利息」しかカットできないため、他の債務整理手続きに比較して、経済的メリットは限定的です。
しかし、任意整理のみ「一つの債務から整理手続きができる」という最大のメリットがあります。
たとえば、公務員であるあなたがクレジットカードと共済組合からの借り入れがあったとしましょう。
「共済組合からの借り入れは、職場の人に借金の事実がバレる恐れがあるので債務整理をしたくない」と思ったとき、あなたはクレジットカードのみを債務整理(任意整理)できます。
経済的メリットは少ない一方で、公務員が抱える借金との相性は抜群であるといえるでしょう。
任意整理のメリット | 任意整理のデメリット |
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一つの債務から整理できる | 見込める減額が将来の利息カットのみ |
借金を最大で1/10まで減額できる「個人再生」
個人再生は、公務員であるあなたが抱える借金の額に応じて借金を大幅に減額できます。最大で1/10まで減額できる個人再生は、任意整理と比較しても経済的メリットは抜群といえるでしょう。
また、個人再生は原則すべての債務が対象となりますが、唯一マイホームのみ残しておけるのもメリットです。
現在、住宅ローンで自宅を抱えていて、自宅を残したまま借金を大幅に減額したい公務員の方は、個人再生を検討されてみてはどうでしょうか。
なお、個人再生の最低弁済額は以下の中でもっとも多いものとされているので、公務員の方は少し注意しなければいけません。
- 所有している財産価値
- 可処分所得の2年分
- 借金の額(法律によって定められている)
公務員の方が特に懸念すべきが「所有している財産」です。この財産の中には退職金も含まれているため、思うように借金を減額できない可能性が高いでしょう。
もちろん「今すぐに退職して借金を返済しなさい」といわれるわけではありません。しかし、個人再生の再生弁済額を決定するために「公務員の退職金も評価される」と思っておくと良いでしょう。
個人再生のメリット | 個人再生のデメリット |
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・借金を最大で1/10まで減額できる ・マイホームを残しておける |
・退職金も所有財産として評価される ・すべての借金が対象 ・官報に掲載される |
借金が免責になる「自己破産」
自己破産は公務員であるあなたが抱えているすべての借金を免責する債務整理手続きです。借金の返済が厳しいときは、自己破産によってすべて清算すると良いでしょう。
債務整理の中では一番経済的メリットの大きい自己破産ですが、すべての債務が対象になる点、持っている資産のほとんどを換価処分されます。
また、裁判所を介して手続きを行うため、官報に掲載されてしまうことも懸念しなければいけません。
官報が一般の人に見られる可能性は極めて低いですが、公務員のうち市役所の税担当者などは日常的に閲覧する状態になっています。
近い部署に在籍されている方、官報を日常的に扱う部署に居られる方は、個人再生と自己破産による官報掲載を懸念されたほうが良いでしょう。
自己破産のメリット | 自己破産のデメリット |
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・借金のすべてが免責になる | ・すべての債務が対象になる ・ほとんどの財産が換価処分される ・官報に掲載される |
公務員が債務整理をしても職場にバレる心配は少ない
公務員の方が債務整理をしても、職場にバレる可能性は極めて低いためあまり心配する必要はないでしょう。
唯一、公務員が債務整理をした事実がバレる可能性があるのは以下の2つです。
- 共済組合からの借り入れを整理したとき
- 官報を見られてしまったとき
上記2つをクリアできる債務整理手続きは「任意整理」のみです。
任意整理は、将来の利息をカットするのみであるため、経済的メリットが少ないのが難点といえるでしょう。
仮に、他の債務整理を選択して、債務整理の事実や借金の事実が職場にバレてしまったとしても免職されることはないので、あまり心配される必要もありません。
共済組合からの借金を整理するときは要注意
公務員が抱えている借金の中に「共済組合からの借り入れ」があるときは注意しなければいけません。
共済組合からの貸付を債務整理してしまうと、自分が所属する共済組合に債務整理をした事実がバレてしまいます。
借金の事実がバレたことによって受ける影響はありませんが、自分自身が職場に居づらくなってしまうこともあるでしょう。
共済組合からの借り入れがある方で、職場に絶対バレたくない公務員の方は「任意整理」を選択して借金を解決してください。
職場に借金や債務整理がバレても免職になることはない
職場に借金の事実や債務整理の事実がバレても、免職されることは絶対にありません。
中には「自己破産をすると免職されてしまうのではないか?」と思われている方もいますが、公務員の方が心配される必要はないでしょう。
唯一、国家公安委員会や公正取引委員会などの職種に就かれている方は資格制限を受けますが、免職になることはないので安心してください。
また、免責許可決定後は復権も認められているので、過度に心配する必要はないでしょう。
公務員が債務整理するときに注意すべき3つのこと
公務員が債務整理をするときには以下の3つに注意されたほうが良いでしょう。
- 退職金の評価について
- 債務整理後のローン契約について
- 任意整理手続きの「ボーナス払い」について
次に、上記の注意事項についてお伝えします。公務員の方が債務整理をするときはぜひ参考にしてください。
注意点①:退職金が過大評価されるので要注意
公務員の方は確実に「退職金」が支払われます(懲戒免職などを除く)。この退職金も債務整理をするときの「財産」として認められてしまうため、債務整理手続きが少し不利に動いてしまう恐れがあるでしょう。
退職金は原則として現在支給予定金額の1/8を資産として計上するのが一般的です。
もちろん「今すぐに退職して借金を支払いなさい」といわれるわけではないのでその点だけは安心してください。
ただし民間企業などに勤めている方に比べると退職金が多い傾向にある公務員は、債務整理手続きの評価が過大になると思っておいてください。
これによって、自己破産や個人再生などの手続きに影響を与える恐れもあるでしょう。
注意点②:債務整理後5~10年間は新たなローン契約などが難しくなる
「公務員はローン契約を締結しやすい」とは、よくいわれている事実ですが、債務整理手続きをすると5年~10年はローン契約などができません。
債務整理の種類 | ローン契約が難しい期間 |
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任意整理 | 5年 |
個人再生 | 5年~10年 |
自己破産 | 5年~10年 |
参考:JICC|登録内容と登録期間
参考:CIC|CICが保有する信用情報
参考:KSC|情報の登録期間
債務整理をすることでいわゆる「ブラックリスト」に掲載されてしまうためであって、たとえ公務員であっても、新たなローン契約などの締結は難しいでしょう。
ただし信用情報機関から債務整理をした情報が消えれば、新たにローン契約などの締結が可能です。
あくまでも「債務整理後5~10年はローン契約やクレジットカードの作成が難しい」と、思っておけば良いです。
注意点③:任意整理手続きでは「ボーナス払い」を指定されることがある
公務員はその職業上、必ず「ボーナス」が支給されます。民間企業とは異なり、業績などに関係なく安定した収入が確保されています。
そのため、任意整理手続き交渉を行っていると「ボーナス払い」を要求されることがよくあります。
任意整理のボーナス払いとは、毎月の返済額にプラスしてボーナス月のみ多めに借金返済を約束することをいいます。
公務員は、安定した報酬が確約されている分、大企業などよりも厳しい和解条件を提示される職業です。
任意整理をする相手(債権者)によっては、公務員のボーナス払いを絶対としているとこもあります。
「公務員が債務整理をしようとすると、何かと厳しい条件などを提示される」と、思っておいたほうが良いです。
より良い条件で交渉を進めていくためにも、債務整理に強い弁護士へ交渉を依頼するなど、検討されてみてはどうでしょうか。
まとめ
公務員の債務整理について解説しました。今回お伝えしたことをまとめると以下の通りです。
- 公務員でもいずれの債務整理ができるが共済組合からの借り入れを債務整理するときは要注意
- 共済組合からの借り入れがあるときは個人再生や自己破産を選択すると職場に借金や債務整理の事実がバレてしまう
- 公務員が債務整理をしても免職されることはないが借金や債務整理がバレることで自分が職場に居づらくなる
- 公務員はその職業上、厳しい和解条件を受けたり、退職金によって資産が過大評価されたりする
公務員でも債務整理手続きは可能です。しかし、民間企業に勤めている人と比べれば、厳しい和解条件を提示されたり退職金によって過大評価を受けたりなど、思うような効果が見込めないことも多いです。
また、公務員の方が共済組合からの借り入れがあるときは、職場の人にバレてしまう可能性が非常に高いです。
「可能であればバレたくない」そう思うのは、公務員でも同じです。バレたくないのであれば、選択肢の幅が狭まり「任意整理」しかありません。
厳しい和解条件や、債務整理の中でも選択できる種類が少ないなど「公務員」というだけで、さまざまなデメリットを受けることになります。
少しでも自分に有利な交渉をできるように、弁護士などの専門家に依頼することも検討してください。