奨学金を返済できない場合どうするべき?今後に与える4つの影響とは

奨学金を返済できない場合どうするべき?今後に与える4つの影響とは

奨学金を借りている人の平均額は「300万円前後」と言われています。多額の借金をして学校に通い、自分の望む会社に就職し、自分の思い描いた人生を歩んでいける人はどのくらいいるのでしょうか?

じつは、奨学金を借りて学校に通ったけど奨学金が返済できない…。と悩んでいる方は意外と多いのが現状です。中には、自己破産を選択して奨学金の支払いを免れる方もいます。

もしも今「奨学金の返済が厳しい」と少しでも感じているのであれば、本記事でお伝えしている「奨学金の解決方法」を参考にしてください。

この記事では「奨学金を返済しないとどうなってしまうのか?」「奨学金を返せないときはどうすれば良いのか?」についてお伝えしています。ぜひ参考にしてください。

この記事の監修者

近藤邦夫

司法書士法人 浜松町歩法務事務所」代表司法書士。 愛知県岡崎市出身。 昭和64年早稲田大学法学部卒業。 長年にわたり、債務整理を行い、 また宅地建物取引士の資格を生かし、不動産登記や商業登記も行なっている。

奨学金を返済できないとどうなってしまう?今後にあたえる4つの影響

奨学金を返済できないと起こり得ることは下記の4つです。

  • 延滞金が上乗せされて、借りた金額以上の返済を求められる
  • 信用情報機関にマイナスな情報が掲載されてしまう(いわゆるブラックリスト)
  • 連帯保証人や保証人に奨学金の返済を求める請求がされる
  • 強制執行によってあなた自身の財産や給与等を差し押さえられる

奨学金を借りた以上は、かならず返済しなければいけません。

「支払えないから…」と言って放置していると、自分で自分の首を絞めてしまう結果になるでしょう。

どうしても奨学金の返済が厳しいのであれば、利用できる制度を積極的に利用して、奨学金そのものを減額したりなくしたりすれば良いでしょう。

まずは、奨学金を返済しないとどうなってしまうのか?についてお伝えします。

影響①:延滞金が上乗せされる

奨学金を約束どおりに返済せず、延滞してしまえば「延滞金」が発生します。延滞利率は、奨学金を借りた時期や奨学金の種類によって異なり、1.5%~10%の間で決定することになるでしょう。

たとえばあなたが、300万円の奨学金を年率10%で1年間延滞していたとすれば、延滞金のみで「30万円」のお金を支払わなければいけません。

現時点で「支払いが厳しい」と感じていても、黙って延滞していればかならず自分が苦しい思いをします。

また、後ほどお伝えする奨学金の支払猶予や、毎月の返済額を減額できる制度も利用できなくなります。

どうしても奨学金の返済が厳しいのであれば、延滞・滞納するのではなく、根本的な解決方法を考え行動すべきでしょう。

参考:日本学生支援機構|延滞金

影響②:信用情報機関に事故情報が掲載される

奨学金を延滞していると、信用情報機関にマイナスな情報が掲載されてしまいます。

これはいわゆる「ブラックリスト入り」と言われるもので、クレジットカードが作れない、ローン審査に通らないなどの影響が出ます。

日本学生支援機構は、信用情報機関のうち「KSC(全国銀行協会)」にのみ加盟しています。

もしかしたら「クレジットカードや消費者金融はKSCに加盟していないから、契約はできるのではないか?」と思われているかもしれません。

確かに、クレジットカード会社や消費者金融等はCICやJICCといった信用情報機関に加盟しているケースがほとんどです。

KSCに加盟しているのは、ほとんどが銀行系であるため、影響がないようにも思われるでしょう。

ところが、信用情報機関3社は相互に情報を共有し合っています。そのため、奨学金を返済できずに、KSCにマイナスな情報が掲載されてしまうことで、今後の人生にも多大な影響をあたえることになるので注意してください。

参考:JICC|他信用情報機関との情報交流

ローン契約の締結等が難しくなる

信用情報機関にマイナスな情報(延滞や滞納をした事実)が掲載されてしまうことで、各種ローン契約の締結が難しくなります。もちろん、クレジットカードの新規発行や契約更新も難しくなるでしょう。

社会人になれば、自分の車が欲しいとか結婚したらマイホームが欲しいとか、思われている方も奨学金を返済できないままだと難しいでしょう。

少なくとも、延滞が解消されてから5年程度はマイナスな情報が残り続けます。

もっと言えば、奨学金を返済できない状態が続いていると、半永久的にローン契約やクレジットカードの新規発行等が難しくなります。

奨学金を返済できないことで起こり得るリスクは、今後の人生にも多大な影響をあたえることになるでしょう。

影響③:連帯保証人や保証人に迷惑がかかる

主債務者である本人が奨学金の返済ができず、支払いを滞ることで、連帯保証人や保証人に奨学金の返済を求める請求がいきます。

奨学金は原則として保証人もしくは連帯保証人をかならず付けなければいけません。

ほとんどの方が両親のどちらかを(連帯)保証人に選定しているはずです。つまり、あなたが奨学金を返済できないままでいると、ご両親に奨学金の返済を求める請求がいくことになるでしょう。

どうしても奨学金の返済が厳しいのであれば、延滞をする前に両親に相談してください。

延滞したあとで急に請求が来れば、両親も驚かれることでしょう。また、自分自身の信用情報や延滞金等を考慮しても、両親に相談しない理由がありません。

奨学金が返済できないのであれば、少なくとも(連帯)保証人への相談は早めにしておいたほうが絶対に良いです。

影響④:強制執行によって財産を差し押さえられる

奨学金を返済できないままでいると、最終的には裁判所からの「強制執行」が認められることになります。強制執行が認められれば、あなたが持つ財産のほとんどを差し押さえられることになるでしょう。

差し押さえ対象財産の中には、債務者本人の「給与」も含まれています。給与が差し押さえられてしまえば、会社に奨学金の返済が滞っていることがバレてしまいます。

「お金にルーズな人」などと、変な噂を立てられれば自分自身が会社に居づらくなることも考えられるでしょう。

仮に300万円の奨学金を返済できずにいて、延滞金も上乗せされて請求されてしまえば、簡単に400万円近くの借金になる恐れがあります。

400万円の借金を完済できる分の財産を差し押さえられることになるため、今後の人生にも多大な影響をあたえることになるでしょう。

奨学金は、自分の未来を切り開くために借りるお金です。お金を借りて学校に行き、学び、就職し、返済していく、そのようなビジョンだったはずです。

「奨学金を返済できない」たったこれだけのことで、人生が180度変わってしまいます。

強制執行は奨学金を返済できなかったときの「最終手段」ですが、ここまで至らないように早め早めに対策を講じるべきでしょう。

奨学金を返済できないときはどうしたら良い?

奨学金の返済が厳しいのであれば、検討すべきことは下記の3つです。

  • 奨学金の支払猶予制度を利用する
  • 減額返還制度を利用する
  • 債務整理で奨学金を減額したりなくしたりする

奨学金の返済が厳しいのであれば、まず先に検討すべきは日本学生支援機構が認めている「支払猶予」と「返済金減額」2つの制度です。

しかし、どちらの制度も奨学金そのものを減らしたりなくしたりする制度ではありません。

それぞれ制度の概要を把握したうえで、自分に合った奨学金の解決方法を選択してください。

支払猶予制度を利用すれば奨学金の返済を10年間延長できる

日本学生支援機構が認めている「支払猶予制度」を利用すれば、最長で10年間、奨学金の支払いを猶予してもらえます。

この制度を利用するためには、災害や傷病、失業等によって返済が困難であることが認められなければいけません。

また、あくまでも奨学金の支払いを猶予する制度なので、なくなるわけではありません。期間終了後に改めて返済が始まり、2度以上の支払猶予制度は原則認められないので注意してください。

奨学金の平均返済年数は16年と言われていますが、仮に10年間の支払期限猶予を受けられたとすれば、26年後まで返済をしなければいけません。

あなたが22歳だとすれば、38歳まで奨学金と付き合っていかなければいけない計算になります。

とても気が遠くなるような制度ですが「今は奨学金の返済が難しい。10年後であれば、生活を立て直して返済ができる」と思っている方は、利用を検討されてみてはどうでしょうか。

※この制度は現在、奨学金の支払いが滞っている方は利用できないので注意してください。

参考:日本学生支援機構|返還期限猶予

日本学生支援機構へ願い出れば毎月の返済負担を軽減できる

毎月の返済額を少しでも軽減できれば、返済を続けられるという方は、減額返還制度を利用してください。この制度を利用することで、返還期限を延長できるため毎月の返済負担額が軽減できます。

この制度も毎月の返済負担額が軽減されますが、奨学金そのものを減額するものではありません。さらに、返済期間が延長されることによって、今よりも長い期間奨学金と付き合っていかなければいけません。

ただでさえ長い付き合いをしなければいけない奨学金と、さらに長期間と考えれば嫌な気持ちになる方は少なくないでしょう。

よく考えたうえで、減額返還制度を利用するか否かを決めてください。

なお、この制度を利用するためには「返済額を軽減すれば確実に支払いができること」が条件です。失業によって支払いそのものが厳しい方は利用できないので注意してください。

参考:日本学生支援機構|減額返還制度

債務整理をすれば奨学金を減らしたりなくしたりできる

返還期限猶予制度も減額返還制度も奨学金そのものを減額される制度ではなく、奨学金は100%残り続けます。

一方で、債務整理は奨学金そのものを減額したりなくしたりすることができます。

奨学金の返済がどうしても厳しい、奨学金の支払いを猶予してもらったり減額してもらったりしたところで返済できない。

そう思うのであれば、思い切って債務整理を検討してみてはどうでしょうか。

債務整理には3つの種類があり、自分にあった手続きを選ぶことができます。

  • 将来の利息をカットして元金のみを支払う「任意整理」
  • 借金を大幅に減額して完済を目指す「個人再生」
  • 奨学金を含むすべての借金を免責する「自己破産」

奨学金の返済が厳しいのであれば、個人再生や自己破産を選択して借金を大幅に減額もしくはなくしてしまったほうが良いでしょう。

また、現在進行系で奨学金を延滞してしまっている方は、返還期限猶予制度や減額返還制度を利用できません。

奨学金の未納金が膨れ上がれば上がるほど支払いが厳しくなっていることでしょう。

もしも、奨学金の未納状態が続いているのであれば今回をきっかけに、債務整理で清算してしまうのも手段として有効です。

債務整理をすることで信用情報にキズがついてしまいますが、延滞が続いているときも同じ状態です。

債務整理をすれば、解決したときから5~10年経過すれば信用情報も回復します。今のままの状態が続けば、半永久的にキズがつき続けるので、やはり債務整理をしたほうが良いでしょう。

保証人がついている奨学金を債務整理するときは要注意

人的保証制度を利用して奨学金を借りている方が、奨学金を債務整理してしまうと、(連帯)保証人へその債務が移ります。

一般的には、両親が(連帯)保証人になっているケースが多いので、債務整理をする前に両親や弁護士へ相談されたほうが良いでしょう。

あなたと(連帯)保証人どちらも返済できないのであれば、2人同時に債務整理してしまうのもひとつの手段でしょう。

また、債務者本人が個人再生を選択したときは、減額された分を(連帯)保証人が背負うことになります。いずれにせよ、奨学金の債務整理を検討しているときは(連帯)保証人に相談したうえで決定するようにしてください。

まとめ

今回は、奨学金を返済できないとどうなるのか?についてお伝えしました。今回お伝えしたことをまとめると下記のとおりです。

  • 奨学金を返済できないままでいると「延滞金が発生する」「信用情報にキズがつく」「(連帯)保証人に迷惑がかかる」「強制執行で財産等が差し押さえられる」などの影響がある
  • 奨学金を返済できなければ、今後の人生にも多大な影響をあたえることになる
  • 奨学金を返済できないのであれば、日本学生支援機構の制度を利用したり債務整理を検討したりすれば良い
  • 奨学金を債務整理するときは(連帯)保証人に迷惑がかかる恐れがあるので要注意

自分の可能性や未来を広げるために奨学金を借りて学校に通っていたはずの人生も、かならずしもうまくいくとは限りません。

社会人になり「さあ、奨学金の返済を始めるぞ!」と、意気込んだところで出端をくじかれてしまう方も少なくはありません。

奨学金を返済できなくなってしまう可能性は誰にでもあることです。

しかし、奨学金の返済ができないまま放置していると、今後の人生にも多くの影響をあたえることになるでしょう。

どうしても奨学金を返済することが難しいのであれば、思い切った解決策を実行するのも大切です。

今回お伝えした奨学金を確実に完済するための方法を参考にしていただき「奨学金を返済できない状況」から脱出してください。

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