家賃の支払いを滞納すると何が起きる?影響とするべき行動を解説

家賃の支払いを滞納すると何が起きる?影響とするべき行動を解説

病気やケガ、失業等によって家賃が支払えない状況は、誰にでも起こり得ることです。そのような状況に陥ったとき「どのように行動するのか?」は、人によって行動が別れてしまう部分でもあるでしょう。

本来であれば、支払えないことがわかった時点で「すぐに大家さんや管理会社へ相談すること」。これを徹底すべきです。

しかし、中には「正直に話したところで待ってもらえない…」等と思っている方も少なくはないでしょう。

そこで今回は、家賃が支払えないとどうなってしまうのか?どのように行動するべきなのか?についてお伝えしようと思います。家賃が支払えないと悩まれている方は、ぜひ参考にしてください。

この記事の監修者

近藤邦夫

司法書士法人 浜松町歩法務事務所」代表司法書士。 愛知県岡崎市出身。 昭和64年早稲田大学法学部卒業。 長年にわたり、債務整理を行い、 また宅地建物取引士の資格を生かし、不動産登記や商業登記も行なっている。

家賃が支払えないとどうなる?滞納から強制退去までの流れと期間は?

家賃が支払えなくても直ちに家を追い出されてしまう心配はありません。しかし、いつまでも家賃を支払えないままでいると、そう遠くない未来にかならず「強制退去」を言い渡されてしまうことになるでしょう。

また、賃貸借契約を締結するために、家賃保証会社を挟んでいる方は強制退去以外にも「信用情報」の影響も注意しなければいけません。

まずは、家賃が支払えないと起こり得る「強制退去までの流れ」と「信用情報にキズが付く原因」についてお伝えします。

滞納後最短6カ月程度で強制退去になる

家賃が支払えない状況が続いても、すぐに家を追い出したり強制的に退去させたりすることはできません。

強制退去をさせるためには「裁判所の判決」が必要になるうえに、裁判で勝つための状況が必要です。

裁判所で強制退去の判決が認められるためには下記2つの要件を満たさなければいけません。

  • 3カ月程度以上の家賃滞納がある
  • 借主と大家の間で信頼関係が破綻していること

上記のことを踏まえると、最低でも3カ月の家賃滞納+裁判の準備や判決までの期間=最低6カ月は、強制退去を言われる心配は少ないでしょう。

また「信頼関係が破綻していること」も裁判で勝訴するためには必要です。

たとえば、あなたが大家さんに対して「すみません。今月は〇〇で家賃が遅れてしまいます。もう少し待っていただけませんでしょうか?」などと言っていれば、信頼関係が破綻しているとは言えず、強制退去をさせられてしまう可能性は低いです。

ただし「6カ月以内であれば家賃を支払えなくても大丈夫」とか「大家さんとの間で信頼関係すら構築しておけば大丈夫でしょ?」というわけではありません。

家賃を支払えないのであれば、早め早めに対応しておかなければ後悔する結果が待っているでしょう。

家賃保証会社と契約を締結しているときは要注意

家賃保証会社と契約を締結しているときは、家賃保証会社から厳しい取り立てを受けたり、信用情報機関に延滞の情報が記載されたりします。

家賃保証会社は言ってしまえば「債権回収のプロ」であるため、1カ月程度の延滞でも厳しい取り立てを受ける恐れがあるでしょう。場合によっては、自宅への訪問や会社への連絡等の手段を取ることもあり得ます。

また、信用情報機関に延滞情報が掲載されてしまうことで、クレジットカードが利用できなくなったり、新規作成が難しくなったりします。

さらに、延滞解消から5年間はクレジットカードの新規発行を始め、ローン契約等も難しくなるでしょう。

家賃滞納は延滞利息を請求される

家賃が支払えないときは「遅延損害金(遅延利息)」を請求される恐れがあります。遅延利息は契約書に記載のある利率で計算されますが、一般的には6%が相場です。

万が一、契約書に遅延損害金に関する事項の記載がなければ「年5%」で計算をします。また、契約書に記載があれば何%でも良いわけではなく、最大でも「14.6%」が上限なので、家賃が支払えないときは、あらかじめ確認しておきましょう。

遅延利息は【家賃✕利率÷365✕滞納日数=】で計算できます。

たとえば、家賃10万円の家に住んでいて、遅延利率が5%、1カ月間(30日)家賃を滞納してしまったときは下記のようになります。

10万円✕5%÷365✕30=410円】つまり、家賃を1カ月滞納したときは100,410円請求されます。

延滞利息は家賃の延滞期間が長ければ長いほど高額になります。当然、家賃も毎月加算されていくわけですから、支払えないのであれば早め早めに解決しておいたほうが良いでしょう。

家賃が支払えないときはどうしたら良い?直ちにすべき2つの行動

どうしても家賃が支払えないのであれば、直ちに下記のことをしてください。

  • 大家さんや管理会社に支払えない旨を連絡する
  • 一時的な収入減が原因なら、お金を借りて家賃を工面する

一番やってはいけないのが「無断で家賃を延滞すること」です。お互いの信頼関係が破綻してしまうのみならず、最悪の場合は家を失うことになります。

信用情報にキズが付いてしまえば、改めて住居を探すのも難しくなりますし、初期費用も発生するでしょう。「家賃が支払えないから…」と放置することだけは絶対に避けましょう。

行動①:大家・管理会社に支払えない旨を連絡する

家賃が支払えないのであれば、まずはじめに大家さんや管理会社へ相談してください。「家賃を支払えないことがわかった時点」で相談するのがひとつのポイントです。

延滞が始まってから「支払えません」と伝えるのと延滞する前に伝えるのでは、大家さん等が感じる心象にも影響をあたえるでしょう。

とくに、個人で賃貸を行っている大家さんであれば、事情を話して誠心誠意伝えることで、待ってもらえることもあるでしょう。

最近では管理会社に物件の管理を一任する大家さんや、保証会社を間に挟む大家さんも増えてきているため「相談したところで…」と思う方も多いでしょう。しかし、管理会社等も数日程度であれば待ってくれる可能性はあります。

また、支払えない旨を正直に伝えることで「信頼関係」は継続します。家賃を支払えない状況が続いても、信頼関係さえ破綻していなければ、強制退去をさせることができないのは前述のとおりです。

「どうせ支払えないから…」と思われている方がいるかもしれませんが、強制退去を避けるためにも「信頼関係」は継続させておくべきでしょう。

かならず、家賃の支払いに遅れる前に「相談すること」を徹底してください。

行動②:一時的な収入減ならお金を借りて家賃を支払う

病気やケガ、失業等によって一時的に家賃が支払えないのであれば、友人や家族、消費者金融等からお金を借りて支払うのも良いでしょう。

家に住んで生活をすることは人として基本的な部分であるため、多少の無理をしなければいけないときもあります。

ただ「お金を借りて家賃を支払う」という行為に対しては「返済」が伴います。当然、借りたものは返さなければいけないため、失業等によって収入が途絶えてしまった方は、他の手段を検討すべきでしょう。

あくまでも「一時的」に返済が厳しい方は、お金を借りて家賃を支払えば良い。という話です。

もし、今後の収入予定がないにもかかわらず、借金を増やしてしまえば家賃以外の借金を支払うこともできず、かならず破綻します。

自分の状況をしっかりと見極めたうえでどのような行動をとるべきなのか?について考えると良いでしょう。

家賃が支払えないときに利用できる公的制度とは?

病気やケガ、失業等によってしばらくの収入が途絶えてしまった方は、各種公的制度の利用を検討してください。

経済的困窮によって家賃を支払えないのであれば「住宅確保給付金」という制度が有効です。

万が一、強制退去によって住まいを失ってしまった方は「セーフティネット住宅」を利用できます。

日本では最低限度の生活を送れるよう、憲法によって保障されています。家賃が支払えなくなったときは、何かしらの方法でかならず救われるようなシステムができているので、安心して相談してください。

参考:e-gov|日本国憲法

新型コロナの影響なら「住宅確保給付金」の利用で家賃を確保

一家の大黒柱として働かれていた方が2年以内に廃業・離職してしまったとき、もしくは収入が著しく減少したときは住居確保給付金制度を利用できます。

その他、積極的に求職活動を行っていることや、貯金残高が100万円以下であることなどの要件を満たさなければいけません。特別厳しい要件はありませんが「経済的に困窮している方」が対象である点に注意してください。

自分の浪費等が原因で家賃が支払えない人は対象になりません。また、病気やケガ等で働けなくなってしまった方のうち、積極的に求職活動をできない方や求職活動をしても働けない方は、対象から外れてしまいます。

まずは、自分が住居確保給付金の対象になるのか否かについて相談されてみてはどうでしょうか。

住居確保給付金相談窓口一覧

参考:厚生労働省|住居確保給付金

生活福祉資金貸付制度で家賃を確保しても良い

住居確保給付金の利用要件を満たせていない方は、生活福祉資金貸付制度の利用を検討してください。住居確保給付金は「給付金」である一方、生活福祉資金貸付は「貸し付け」であるため返済義務を負います。

その代わり、本当に必要な資金は数十万円単位で借り入れが可能です。家賃のみならず、生活費等、必要なお金があるのであればあわせて借り入れしても良いでしょう。

また、保証人を設定することで原則無利息でお金を借りられます。保証人を付けなかったとしても、わずか1.5%の利率なのでそこまで気にされる金額ではないでしょう。

一般の消費者金融等から借りられない人でも融資を行っています。お住まいの自治体に設置されている社会福祉協議会で相談できるので、相談されてみてはどうでしょうか。

生活福祉資金貸付制度の相談はこちらから

参考:厚生労働省|生活福祉資金貸付制度

強制退去で自宅を失った方は「セーフティネット住宅」の利用を検討

家賃が支払えないままで、最終的に強制退去をさせられてしまった方、初期費用がなくて新たに家を借りられない方は「セーフティネット住宅」を利用してください。

セーフティネット住宅とは、低所得者や高齢者、生活困窮者など「経済的に困窮している人」を対象に入居を拒まない住居を探せます。

とにかく「住」を確保して生活再建を目指そうとしている人であれば利用できますし、かならず住まいを発見できます。

もちろん、自分のイメージに合った部屋を借りられる可能性は低いですが、初期費用や家賃を抑えられるのでおすすめです。まずは、確実に入居できる場所から生活再建を目指してみてはどうでしょうか。

セーフティネット住宅の相談はこちらから

借金の返済が原因で家賃が支払えないなら「債務整理」もひとつの手段

家賃を支払えない理由が「借金の返済」なのであれば、借金を債務整理してしまうのもひとつの手段でしょう。

たとえば、毎月決まった給料が入るけど、借金を返済して生活費を確保したら家賃を支払えないという方は優先して支払うべき順番を間違えています。まずは生活費の確保、その次に住を確保するための家賃を支払わなければいけません。

借金は返済できなくても「債務整理」という手段があります。債務整理を弁護士に依頼すれば、借金問題が解決されるまでの間は取り立てが止まります。

その後は、借金の解決方法に応じて減額されたり免責されたりするでしょう。

仮に今、家賃や借金を延滞しているのであれば、債務整理で減額したり免責したりすることも可能です。借金があって「とにかく家賃が支払えない」と感じているのであれば、債務整理を検討されてみてはどうでしょうか。

まとめ

今回は、家賃が支払えないとどうなってしまうのか?家賃が支払えないときはどうすれば良いのか?についてお伝えしました。今回お伝えしたことをまとめると下記のとおりです。

  • 家賃が支払えなくても、直ちに強制退去させられることはない。最低でも半年程度の期間が必要
  • 強制退去をさせるためには、3カ月程度の家賃滞納と信頼関係の破綻が必須。裁判所の判決をもって強制退去を執行される
  • 家賃が支払えないのであれば、まずは大家さんや管理会社に相談することが大切。これをすることによって、信頼関係の破綻を避けられる
  • 家賃が支払えないのであれば、公的制度や債務整理の利用検討は避けられない。借金の返済が理由で家賃を支払えないのであれば、今すぐに債務整理をするべきでしょう

何らかの理由で家賃が支払えなくなってしまうことは誰にでも起こり得ることです。万が一、家賃を支払えなかったときに、どう行動すべきなのか、どう行動したかによって今後の対応が大きく変わってくることでしょう。

家賃が支払えないときに絶対避けるべきことは「黙って延滞をすること」であり、支払えないことがわかった時点で即時相談しなければいけません。

信頼関係はもちろんのこと、今後の住宅入居審査等にも影響を及ぼす恐れがあります。

人が生きていくうえで「住」はとても大切な場所です。自分が生活をするための拠点になる場所なので、無下にはせず支払えないときには素直に相談する、多少の無理をしてでもお金を工面するなどの対応を行ってください。

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