借金の返済が厳しいけど、債務整理によって発生し得るリスクを考えると、なかなか踏み出せない。そう考えている方は多いでしょう。
債務整理手続きは、法的に借金を減額したり免責したりする手続きです。そのため、当然債務者本人にも多大な影響をあたえることになるでしょう。債務整理によって発生し得るリスクやデメリットは避けては通れません。
では、債務整理によって発生し得るリスクやデメリットにはどのようなものがあるのか。自分で許容できる範囲なのか否かを判断しなければいけません。
そこで今回は債務整理のリスクやデメリット、これらを回避する方法についてお伝えしています。これから債務整理を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
債務整理で起こり得る6つのリスクとデメリット
債務整理をすることで発生し得るリスク・デメリットは下記の6つです。
- ①金融事故情報が掲載されて各種ローン契約の締結ができなくなる
- ②官報に債務整理をした事実が掲載される
- ③整理手続きによって資格制限を受ける
- ④整理手続きによって一定以上の財産を処分しなければいけない
- ⑤保証人や連帯保証人に債務が移る
- ⑥闇金からの勧誘が来る
まずは、債務整理で発生し得るリスクやデメリットについて詳しくお伝えします。これから債務整理を検討されている方は、ぜひ参考にしてください
①:金融事故情報が掲載されて各種ローン契約等が難しくなる
債務整理をすると、その事実が信用情報機関に掲載されます。「信用情報に事故情報が掲載される=ブラックリスト入り」であるため、各種ローン契約の締結やクレジットカードの作成、発行が難しくなります。
信用情報にキズがあっても、審査を行うのは各業者であるため「ブラックリスト入り=100%審査に通らない」とは言い切れません。0.数%の確率で審査に通る可能性がありますが、ほぼ100%難しいと思っておきましょう。
ただし、債務整理をしたあと5年~10年経過すれば、信用情報から事故情報が消えます。日本の信用情報機関は下記3社ありますが、それぞれの信用情報掲載期間は5年~10年程度です。
信用情報機関 | 主な加盟業者 | 事故情報掲載期間 |
---|---|---|
CIC | 消費者金融系・信販会社系 | 5年 |
JICC | 消費者金融系 | 5年 |
KSC | 銀行系 | 5年~10年(個人再生・自己破産は10年) |
債務整理のデメリットとして、信用情報にキズがつく。ことが挙げられますが、最長で5年~10年経過すれば回復する。と思っておけば良いでしょう。
参考:CIC|CICに登録されている信用情報は、どれくらいの期間登録されているのですか?
参考:JICC|信用情報の登録についてのQ&A
参考:KSC|情報の登録期間
②:官報掲載によって債務整理の事実が周囲の人にバレる可能性がある
債務整理手続きのうち個人再生を選択された方は合計で3回、自己破産を選択された方は合計で2回、官報へその債務整理をした事実が掲載されます。
官報とは、国が毎日発行する機関紙であり債務整理の情報のほか政令や法律等あらゆる情報を発信しています。債務整理の情報欄では、本人の氏名や住所、事件番号等が掲載されてしまうため、家族や知人・友人、職場の人にバレてしまうリスクはあるでしょう。
しかし「官報」と聞いて、いまいちピンとくる方が少ないように、国の機関紙を閲覧する方はほとんどいません。とくに、いわゆる一般人の方であれば官報とは無縁です。
主に官報を閲覧する方は下記の方です。
- 金融関係者
- 闇金業者
- 信用情報機関
官報は全国の官報販売所と呼ばれる場所でしか販売されておらず、そもそも購入すること自体が困難です。「絶対に官報を閲覧しよう」と思えば、図書館やインターネットでの閲覧も可能ですが、そこまでして官報を閲覧しようとする方は少ないでしょう。
仮に、インターネットで毎日閲覧されている方でも、特定の人物を見つけ出すのは困難です。過去にさかのぼって閲覧しようとすれば、料金が発生するため、わざわざ閲覧しようとする方はいないでしょう。
また、過去には自己破産者の情報を閲覧できる「自己破産マップ」と呼ばれるサイトも存在していましたが、現在はありません。仮に「○○(あなたの氏名) 債務整理」で検索しても、ヒットすることはないので安心してください。
債務整理をすることで、人にその事実がバレてしまう可能性は0ではないため、その点リスクと言えますが、過度な心配をする必要はないでしょう。
③:整理手続き次第では資格制限を受けるため一定期間就けない職種がある
3つある債務整理手続きの中で、唯一「自己破産」を選択されたときは、一定期間就けない仕事(資格制限)があります。その結果、家族に自己破産をした事実がバレたり、職場に自己破産の事実を伝えなければいけなかったりするなどの事情が起こり得るでしょう。
自己破産によって受ける資格制限は下記のような職種(資格)の方が当てはまります。
- 弁護士や司法書士、税理士等いわゆる「士業」の方々
- 警備員
- 生命保険募集人
- 宅地建物取引士
参考:破産による資格制限
資格制限を受ける期間は破産手続開始決定後から免責許可決定時までです。免責許可がおりた時点で、復権が認められるため、今まで同様の職種に復職可能です。
一方で、破産手続開始決定後、最終的には免責不許可になったときは破産者として最長10年間は、復権(復職)ができません。
資格制限に該当する職種に就いている方は、自己破産以外の債務整理手続きも合わせて検討してください。
④:整理手続き次第で一定以上の財産を処分しなければいけない
債務整理手続きのうち、個人再生や自己破産を選択された方は、一定以上の財産を換価処分しなければいけません。
そもそも、個人再生(民事再生)手続きは裁判所に対して借金の返済不能であることを申し立てて、借金を大幅に減額してもらう手続きです。当然、換価性の高い自分の財産はすべて処分しなければいけません。
自己破産は裁判所に対して、借金の返済が困難であることを申し立てて、今抱えているすべての借金を免責してもらう手続きです。一定以上の財産はすべて換価処分し、債権者に分配するのは当然でしょう。
自分が持つ財産を守りながらも借金を減額したり免責したりすることは、債権者の心証を考えれば絶対にありえません。しかし、債務者本人に処分できるだけの財産がないときは、そのまま債務整理手続きができます。
「換価処分できる財産がない=債務整理ができない」といったことはないので安心してください。仮に、無一文の方、一切の財産を有しない方であっても債務整理手続きは可能です。安心して弁護士へ相談してください。
⑤:(連帯)保証人に債務が移る
連帯保証人や保証人がついている債務(借金)を債務整理すれば、当然、(連帯)保証人に債務が移ります。債務整理をした本人が抱えている債務はなくなっても、債務そのものが消滅するわけではないので、必然的に債務が移るので注意してください。
(連帯)保証人が付いている債務を整理するときには、前もって相談することが大切です。(連帯)保証人に対して、突然請求が来られても困るだけでしょう。前もって相談しておけば、他の対応策も模索できるでしょう。
なお、(連帯)保証人もろとも借金の返済が困難であるときは、両者同時に債務整理を行うこともできます。このときの注意事項としては、同じ専門家(弁護士等)に相談することです。お互い別々の弁護士へ相談すると、また1から説明をしなければいけません。
一方で、お互い同じ弁護士であれば、事情等も把握しているため比較的スムーズに解決できるでしょう。費用面でも面倒を見てくれる可能性があるため、よほどの事情がない限りは同じ担当者へ相談してください。
⑥:闇金から融資勧誘の電話・DMが届く
債務整理のうち、個人再生や自己破産をすると闇金から融資勧誘の電話やDMが届くようになります。
個人再生や自己破産の手続きを行うと、その過程で2~3回程度官報へ情報が掲載されてしまいます。官報に掲載されている情報の中には、あなたの住所や氏名が掲載されているため、それを閲覧した闇金業者はあなたへDMを送ります。
債務整理をされた方は、信用情報機関に事故情報が掲載されているため、通常の消費者金融等で借り入れができません。このことに漬け込んで「ブラックでもOK」などと謳い、あなたを勧誘します。
万が一、闇金からの勧誘があったときは、一切の無視を徹底してください。誤って闇金と関わりを持ってしまったときは、早い段階で弁護士へ相談してください。
闇金に対する借金の返済は、原則として行わなくても良いことになっています。余計なトラブルに発展する前に、早め早めに弁護士へ相談するよう心がけましょう。
債務整理のデメリット・リスクを回避する方法はある?
債務整理手続きによっては、先にお伝えしたリスクやデメリットの回避が可能です。そもそも債務整理には下記3種類があり、それぞれで発生し得るリスクが異なります。
- 将来の利息をカットして元金のみの完済を目指す「任意整理手続き」
- 今ある借金のすべてを大幅に減額(最大で100万円まで)できる「個人再生手続き」
- 今抱えているすべての借金を免責できる「自己破産手続き」
それぞれの債務整理に回避可能なリスク・デメリットはあるのか?についてお伝えします。これから債務整理を検討されている方は、各リスクを把握したうえでどの債務整理手続きを行うか検討してください。
整理手続き次第で回避できるデメリットはある
債務整理手続き次第では回避できるリスク・デメリットはあります。
債務整理手続き | ①事故情報の掲載 | ②官報掲載 | ③資格制限 | ④財産処分 | ⑤債務移行 | ⑥闇金からの勧誘 |
---|---|---|---|---|---|---|
任意整理 | ○ | ☓ | ☓ | ☓ | △ | ☓ |
個人再生 | ○ | ○ | ☓ | △ | △ | ○ |
自己破産 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
○=リスクあり
△=リスクあり(一部)
☓=リスクなし
債務整理ごとの結果は上記のとおりとなりました。④財産処分について「一定上の財産を処分しなければいけない」のは、個人再生も自己破産も同じです。しかし、個人再生は住宅ローン特則を利用することで、住宅を残しておくことができるため「△評価」になっています。
また、⑤債務移行について、いずれの債務整理手続きを行っても保証人や連帯保証人に債務が移転します。しかし、任意整理や個人再生については、減額部分のみ(連帯)保証人に請求が行くケースが多いため「△評価」になりました。上記内容を踏まえたうえで、今後どの債務整理手続きを行うか検討してください。
もっともリスクが少ないのは任意整理手続き
債務整理手続きの中で、もっともリスクが少ないのは任意整理手続きです。任意整理手続きは、債務整理の中で唯一、裁判所を介さない手続きです。
債務者と債権者の間に弁護士等の専門家が間に入り、現在発生している利息や将来発生する利息等をカットし、元金のみの完済をするよう「交渉」を行います。裁判所の手続きではないため、債権者が「NO」といえば、交渉は成立しません。
しかし、多くのリスクを回避できるため、できるだけ低リスクで借金を減額されたい方は、任意整理を検討されてみてはどうでしょうか。
信用情報は5年〜10年で回復する
すべての債務整理手続きに共通しているリスクとして「①信用情報にキズがつく」という事実があります。
信用情報にキズがつくことで、各種ローン契約の締結が難しいなど、日常生活で弊害となる可能性もあるでしょう。しかし、債務整理後5年~10年経過すれば、信用情報が回復します。
回復後は、改めて消費者金融等からお金を借りたり、クレジットカードを作成したりできます。当然、各種ローン契約の締結もしやすくなるでしょう。ただ、一度事故を起こしてしまった会社では、信用情報回復後も新規契約はできないので注意してください。
まとめ
今回は、債務整理のリスクについてお伝えしました。今回お伝えしたことをまとめると下記のとおりです。
- 債務整理によって発生し得るリスク・デメリットは全部で6つ
- 債務整理によって発生し得るリスク・デメリットは、債務整理の手続次第で回避可能
- すべての債務整理手続きに共通している「信用情報にキズがつく」問題は、最長5年~10年程度で解消される
債務整理を行うことによって発生し得るリスク(危険性)は少なく、むしろ懸念すべきはデメリットです。債務整理をすることによって、信用情報にキズがついたり財産を差し押さえたりするデメリットがあるとのことでした。
債務整理は法的に借金を減額したり免責したりする手続きであるため、当然、自身にも多くのデメリットやリスクが発生するでしょう。借金の減額率と債務整理によって発生し得るリスクを天秤にかけたとき、圧倒的に債務整理が勝るのであれば迷わず債務整理をしてください。
中でも、自分で許容できる範囲内のリスクは受け入れつつ、許容できないリスクについては徹底的に排除すれば良いです。自分にあった債務整理手続きを選択肢、借金の根本解決を図ってみてはどうでしょうか。