自己破産とは、債務者の財産をすべて免責(責任を免れること)にして、破産者の財産をすべて債権者に分配する手続きです。
自己破産手続きをすることによって、債務者側は借金の返済を免れるという最大のメリットを受けられます。一方で、お金を貸している債権者は、本来返してもらえるはずだったお金を返してもらえません。
このように、自己破産手続きは債務者側が大きく得をする債務整理手続きです。
とはいえ、すべてにおいて債務者が有利なのか?といえば、そう言うわけではありません。実際、債務者側にも大きなデメリットや影響は発生するでしょう。
そこで今回は、自己破産とはどのような手続きなのか?についてお伝えするとともに、自己破産のメリットやデメリット、手続きの流れなど網羅的にご紹介しています。自己破産等は何か?悩まれている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
自己破産とはどのような手続き?
自己破産とはあなた自身が抱えている借金の返済が困難であることを裁判所に申し立て、現在抱えているすべての借金を、免責にしてもらう債務整理手続きです。
免責とはその責任を免れることを意味します。つまり、自己破産をすることによって、あなたが返済義務を負っていう借金の返済を免れるのです。何らかの事情で借金の返済が苦しくなった方は、自己破産をすることで借金が0になることを意味します。よって、その他の債務整理手続きと比較しても、相当な経済的メリットが得られるでしょう。
まずは、自己破産とはどういった債務整理手続きなのか?について、詳しくお伝えしていこうと思います。借金の返済が苦しく感じている方は、ぜひ参考にしてください。
借金をすべて免責(0)にする手続き
自己破産とは、あなたが抱えているすべての借金を免責(責任を免れる)債務整理手続きです。
本来、あなたが自分で抱えた借金は自分で返済をしていくのが当たり前です。しかし、人はお金を借りたあとでイレギュラーなことが発生して借金を返済できなくなってしまうこともあるでしょう。
たとえば、事業で失敗をしてしまう方がいるかもしれませんし、お金を借りた後で病気や怪我をしてしまった方がいるかもしれません。そのような方に対して、裁判所の判断で借金の返済を免除するのが自己破産です。
もしも、自己破産やその他の債務整理手続きがこの世に存在していなければ、お金を借りたあとに万が一のことがあると、債務者はどうすることもできません。返済できる能力がないにもかかわらず、借金の返済を求められ続ければ、債務者自身が追い込まれていくことになるでしょう。
このように、いつどこで何があるかわからないからこそ、自己破産という手続きが存在しているのです。
なお、自己破産手続きは「破産法」という法律に基づいて、さまざまなルールを定めています。自己破産は債務者が一方的な利益を得られる反面、債権者が大きな不利益を受ける制度です。そのため、細かなルールを破産法内で定めています。
このあとの本文でも詳しくお伝えしているので、ぜひあわせて参考にしてください。
非免責債権は破産後も残る
自己破産は原則すべての借金が免責の対象になりますが、非免責債権に該当する借金については免責されません。この非免責債権には下記のような7つの債権が含まれているので、注意してください。
債権の種類 | 内容 |
---|---|
租税等 | 税金や各種健康保険料等が含まれます。 |
破産者(あなた)が悪意であたえた不法行為に対する損害賠償請求 | 悪意であたえた損害賠償請求権は非免責債権に該当します。悪意ではない場合、免責債権となり得ます。 |
破産者が故意もしくは重大な過失のもとであたえた損害賠償請求 | たとえば自動車事故を起こした場合に請求されている損害賠償請求などが該当します。ただし、破産者に重大な過失や恋がなければ免責可能。 |
養育費等 | 養育費や婚姻費用分担義務などが該当します。その他、各種義務が非免責債権に該当。 |
雇用関係に基づいて発生した義務 | 給料や報酬などが該当します。 |
破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権 | 破産者であるあなたがその債権者に対して借金があることを知りながら、債権者名簿に記載しなかった場合は、その借金も非免責債権になります。ただし、破産者が知らなかった場合は免責の対象になり得ます。 |
罰金等 | 罰金刑を受けている場合は、その罰金を免責されることはありません。 |
上記のように「債権を免責」といっても、実際はすべてが対象になるわけではありません。現在までに税金を滞納している方や、保険料を滞納している方が自己破産をしても免責になることはありません。
また、各種義務によって支払い義務を負っている債権についても、免責になりません。養育費や婚姻費用分担義務が該当するとのことでした。
また、「重大な過失のもとであたえた損害賠償請求」や「悪意であたえた不法行為の損害賠償請求」というものがあります。これらは各事情によって判断が分かれるため、難しい部分でもあります。
たとえば、「悪意であたえた不法行為の損害賠償請求」の場合で、夫が浮気をして妻に対して慰謝料支払い義務を負っているケース。このケースでは、不法行為に対する損害賠償であるため、非免責債権になるかと思われがちです。しかし実際には「妻に害をあたえよう」と思って行った不法行為ではないため、免責債権になり得ます。
さらに、「重大な過失のもとであたえた損害賠償請求」の場合、あなたが飲酒運転で交通事故を起こした場合は「重大な過失」であるため、当然非免責債権になります。しかし、一般的な交通事故の過失レベルであれば、免責をされる可能性があるでしょう。
このように、免責債権・非免責債権でも大きく異なるため、自己破産手続きを進める際には、司法書士や弁護士にすべての債務を伝えるようにしてください。
すべての債務者が対象の手続き
自己破産手続きは借金を抱えているすべての人が対象です。誰でも「借金の返済が苦しい…」と感じたときに、破産の申し立てができるので安心をしてください。
ただ、破産手続きの申し立てをしたからといって、かならずしも免責許可がおりるとは限りません。先ほどお伝えした非免責債権もそうですが、あなた自身が自己破産をするに相応しくない場合は、免責にならない恐れもあります。
自己破産は原則誰でもできますが、かならずしも免責許可がおりるとは限らないということだけは、覚えておいてください。
自己破産の種類と費用相場
大きな括りで「自己破産手続き」といっても、実際には下記3種類の破産手続きがあります。
- 同時廃止事件
- 管財事件
- 少額管財事件
大きく分けると同時廃止事件と管財事件に分けられますが、管財事件を細分化すると「管財事件」および「少額管財事件」の2種類になります。合計で3種類の破産手続きがあると思っておいてください。
そして、各破産手続きの違いは手続きの複雑さです。順番は同時廃止事件→少額管財事件→管財事件の順で複雑な手続きになります。そして、手続きが複雑になる分、免責許可決定までの期間や破産手続きにかかる費用が大きく異なります。
つまり、同時廃止事件として破産手続きを開始できれば、比較的簡単に費用も抑えて免責許可を受けられることになるでしょう。
では、どのようにして同時廃止事件と管財事件が決まるのでしょうか?その主な理由は下記の2つです。
- 破産者に財産があるかどうか
- 免責不許可事由に該当するかどうか
あなたに相当な財産があるときや、過去に自己破産を経験したことがあったり借金を作った理由がギャンブルだったりする場合(免責不許可事由)は、管財事件になることがあります。たとえ、あなたが個人であっても、管財事件として扱われることもあるので注意してください。
なお、自己破産はあなたが持っているマイナスの財産(借金)とプラスの財産をすべてまとめて清算する債務整理手続きです。よって、詳しく借金や財産情報を把握する必要があるため、自己破産の原則は管財事件であることを覚えておいてください。
基本的には管財事件で行われますが、そこまでする必要がない人に限っては同時廃止事件になる。と考えていただければ良いでしょう。それでは早速、各破産手続きの概要や期間、費用等をお伝えします。
同時廃止事件
同時廃止事件はわざわざ管財事件として扱う必要がない、破産手続きの場合に選択されます。
そもそも自己破産手続きは、破産者が持つ財産をすべて集めて換価処分(お金に変えて処分)し、債権者に平等に分配します。そのためには、破産管財人を設定して破産者の財産管理を行わなければいけません。
しかし、そもそも破産者に財産がなく、財産管理を必要としない場合には管財事件を選択する意味がありません。そして、同時廃止事件の場合は破産管財人に支払う報酬もなくなるため、コスト的にも抑えられるのが特徴です。
つまり、同時廃止事件とは破産者に一切の財産がなく、破産管財人を選出する必要がない場合に選択される手続きと思っておいてください。
実際、個人の破産手続きであれば同時廃止事件を選択されるケースも多いです。この手続きは、費用を抑えられるうえにその他の破産手続きと比較して、簡易に進められるため、財産のない個人にはとても重宝されています。
なお、同時廃止事件にかかる費用や手続きにかかる期間は下記の通りです。
同時廃止事件費用 | 30万円前後 |
---|---|
同時廃止事件にかかる期間 | 約4カ月 |
同時廃止事件に必要となる費用は、主に弁護士費用と裁判所へ支払うです。裁判所への費用は1万円〜3万円程度(裁判所によって異なる)ですが、弁護士等へ支払う報酬金額が30万円前後です。合計すると30数万円前後になり得るでしょう。
なお、弁護士や司法書士へ支払う費用も各事務所によって異なります。ちなみに当事務所では、35万円〜承っているのでぜひご相談ください。
そして、同時廃止事件の場合は破産法によって「破産手続き開始決定と同時に破産手続き廃止の決定をする」と定められています。よって、管財事件と比較すれば、とても短期間で手続きを完了させられるでしょう。
参考:破産法|第216条(破産手続開始の決定と同時にする破産手続廃止の決定)
管財事件
管財事件は自己破産の基本になる手続きです。自己破産をする場合には、原則管財事件と進められ、破産者に財産がない場合に限っては同時廃止事件にするという基本は覚えておいてください。
よって、同時廃止事件として認められなかった場合には、すべての人が管財事件になります。管財事件では、まず先に破産管財人と呼ばれる担当者が選任されます。破産管財人は、裁判所で選任する弁護士になるのが一般的です。
そして、選任された破産管財人は破産という法律のもとで「破産手続きにおいて破産管財の管理や処分をする権利を有する」と定められています。
参考:破産法|第2条(定義)
債務者であるあなたは破産手続き開始決定と同時に破産者になります。破産者が有する財産はすべて破産管財に属するため、破産者に変わって財産を管理したり処分したりできる人が破産管財人と思っておけば良いでしょう。
自己破産とは、破産者が持つマイナスの財産とプラスの財産をすべて清算する手続きです。つまり、あなたが持っている財産はすべて換価処分され、すべての債権者に対して平等に分配されなければいけません。そのためには、破産管財人のような第三者の管理者が必要であるためです。
管財事件になった場合は、破産管財人が選ばれることになるため費用や破産手続きに要する期間が長期になることもあります。そのため、多くの方が「できれば同時廃止事件が良い…」と思うでしょう。
しかし、下記に該当するような方は、原則として管財事件として扱われるので覚えておいてください。
- 財産を有する人
- 免責不許可事由に該当する人
まず、破産者が財産を有している場合は、その財産をすべての債権者に平等に分配しなければいけません。そのため、管財事件として破産管財人を選定して、財産を管理したり適切に処分をしたりしなければいけません。
また、破産者が持っている財産状況を適切に調査をする必要もあります。破産手続きは債務者側が大きなメリットを受け、債権者側が大きなデメリットを受けます。そのため破産法に従って、少しでも債権者の利益を保護するために必要な場合は管財事件になり得るでしょう。
そして、免責不許可事由に該当する人も管財事件になる恐れがあります。免責不許可事由とは、「自己破産をするに相応しくない人」です。たとえば、ギャンブルで借金を作ってしまったような方は、破産手続きで保護をする必要がありません。
しかし、破産者がギャンブルをしてしまった理由や反省の具合等によっては、裁量免責(裁判所の判断で免責をすること)が認められることもあります。(免責不許可事由や裁量免責については、後述します)
たとえば、競馬が大好きで1,000万円の借金を作ってしまった方がいたとしましょう。このように私利私欲のために多額の借金を作ってしまった方が破産をすれば、債権者がとてもかわいそうではないでしょうか?
よって、このようなケースでは破産管財人が「この破産者をこのまま免責にして良いのか?」について調査を行うのです。調査の過程で、ギャンブルをやめて反省していたり、ギャンブルを断つ努力をしているならば、裁量免責を認めるよう裁判所へ提案をしてくれます。
そして、このような管財事件にかかる費用や期間は下記の通りです。
管財事件にかかる費用 | 50万円以上 |
---|---|
管財事件にかかる期間 | 1年程度 |
管財事件にかかる費用も主には弁護士へ支払う報酬と裁判所へ支払う報酬です。管財事件の弁護士報酬は、一般的には30万円前後が相場です。しかし、裁判所へ支払う報酬の中に「予納金(破産管財人に支払う報酬)」が含まれるため、とても高額になる恐れがあります。
一般的には20万円〜50万円程度が相場ですが、破産者の財産状況によってはさらに高額になる恐れがあります。よって、最低でも50万円程度、場合によっては数百万円になることもあると思っておきましょう。とくに、法人としての破産は高額になる傾向です
少額管財事件
少額管財事件とは、管財事件の一種でありながら裁判所へ支払う予納金を少額にする手続きです。少額管財を選択されるケースは、破産者の財産が少ないなどの理由から、破産管財人の業務負担を軽減できる場合です。
個人の破産者や零細企業など、経済的あまり余裕がない方でも手続きを進められるようになっているのが、少額管財事件と思っておいてください。
少額管財事件の場合は、裁判所へ支払う予納金も20万円程度と安く抑えられるため、50万円前後で手続きを進められます。通常の管財事件と比較すれば、数十万円から数百万円程度の差が発生することもあるでしょう。
いずれの手続きも自分で選択できるわけではありませんが、破産者の負担をできるだけ軽減できるように準備されています。
自己破産の流れとは?
自己破産の大まかな流れは下記の通りです。
- 専門家へ相談
- 書類作成〜破産申し立て
- 破産手続き開始決定
- 破産管財人による財産の処分
- 免責許可決定
次に、自己破産を検討し始めてから実際に免責許可を受けるまでの流れについてみていきましょう。あわせて各項目の注意事項についてもお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
ステップ1専門家へ相談
まずは自己破産を検討している時点で司法書士や弁護士に相談をしてください。このとき、かならずしも自己破産をすると決めていなくても大丈夫です。「借金の返済が苦しくなってきた…」という思いで相談をしていただいても問題ありません。
というのも、借金の返済が苦しいからといって、かならずしも自己破産をすることが正解とは限らないからです。あなたの状況や希望次第では、任意整理や個人再生といった、その他の債務整理のほうが良いことも考えられます。
もちろん「自分は自己破産をしたい!」という思いを持って相談をしていただいても大丈夫です。自己破産をするにせよしないにせよ、まずは専門家へ相談をするようにしてください。
自己破産手続きの相談先は弁護士・司法書士どちらでも問題ありません。ただ、司法書士の場合は代理権がないため、少額管財にできなかったり、破産者が裁判所に行く回数が増えたりなどの影響が出るでしょう。
ただし、一般的に見れば個人の自己破産は同時廃止事件として進められるケースが大半です。同時廃止事件として進められる場合は、弁護士も司法書士も行える業務に大差はありません。
一方で、弁護士に支払う費用と司法書士に支払う費用を比較すれば、司法書士のほうが安く抑えられる傾向です。よって、自分の状況に合わせて司法書士に相談をするべきか、弁護士に相談をするべきか検討してください。
なお、弁護士や司法書士に債務の整理を依頼した時点で、あなたに対する借金お取り立て等はすべて停止します。これは、貸金業法という法律によって定められていることであるため、驚くほどピタッと止まるので安心してください。
その後は一時的に返済義務が停止し、破産手続き後に免責許可決定を受けた場合にはそのまま借金返済義務を免除されます。
ステップ2書類作成〜破産申し立て
弁護士や司法書士と委任契約を締結したあとは、順次申し立てへ向けた準備を進めていくことになります。自己破産手続きはその性質上、とても多くの書類提出を求められます。
弁護士や司法書士で作成する書類ももちろんありますが、破産者自身で用意しなければいけない書類も複数あるでしょう。とくに収入関連書類や財産状況を知らせるための書類は、確実に記さなければいけないため注意してください。
また、配偶者等がいる破産者の場合は配偶者の収入証明書類や、通帳の入出金明細等を提出しなければいけません。よって、この準備期間の中では、家族との話し合いも含まれていると考えて良いでしょう。
【自己破産申し立てに必要な書類一覧】
- 自己破産申立書
- 自己破産を申し立てるために必要な書類です。あなたが申し立てを行う裁判所の様式に従って必要事項を記載してください。
- 陳述書(報告書)
- 陳述書(報告書)とは、あなたが自己破産に至った経緯や反省点、今後どうするのか?について記載します。書類はあなたが申し立てを行う裁判所で入手できます。なお、破産者自身で記入したものを「陳述書」、弁護士等が作成したものを「報告書」と呼びます。
- 住民票・戸籍謄本
- 破産者本人のものだけではなく、家族全員分が必要になります(一人暮らしをしている場合でも世帯全員分)。なお、発行から3カ月以内の住民票や戸籍謄本を提出しなければいけません。
- 収入証明書類
- 給与明細書や源泉徴収票などが必要です。個人事業主等の場合は、確定申告処理等が該当します。
- 預金通帳のコピー
- 破産者が持っている口座すべての預金通帳コピーを提出してください。なお、過去2年分程度の提出を求められるのが一般的です。
- 居住地がわかる書類
- 賃貸借契約書や、自宅を所有している方は不動産登記簿謄本が該当します。
- 資産目録
- 資産状況がわかるものを目録で記した書類です。様式は各裁判所によって用意されているので、そちらを参考にしてください。この書類では、あなたが持っている一定額以上の財産をすべて記載しなければいけません。かならず漏れのないように記入してください。
これらの書類を弁護士や司法書士と一緒に準備をしてください。その後、裁判所に対して破産手続きの申し立てを行います。
なお、上記書類はあくまでも一般的な書類です。破産者の状況次第ではその他の書類を求められることもあります。もしも、他に必要な書類が出てきた場合には、可能な限り準備をする努力をしてください。それが破産手続き開始決定や免責許可に影響をあたえます。
ステップ3破産手続き開始決定
裁判所への申し立てが完了すると、あなた・弁護士(司法書士)・裁判官の3者が集まって自己破産をするに至った経緯などを説明します。ただし、場合によっては破産をする本人は出席する必要がないこともあります。
その後、とくに問題がなければ破産手続き開始の決定を受けて、管財事件の場合は破産管財人の選定が行われる流れです。ただし、同時廃止事件として進められる場合には、破産手続き開始決定と同時に免責手続きに移行されます。
ステップ4破産管財人による財産処分
管財事件として破産手続きが進んだ場合は、破産管財人による下記のことが行われます。
- 面接
- 財産の処分
- 債権者集会
まずは、破産管財人と破産者の代理人弁護士とで面接を行います。ここでは主に破産者の財産状況調査したり、隠し財産がないかどうかを調査したりすると思っておいてください。破産者自身はとくに何かをする必要はありませんが、何か問われた際には答えるようにしてください。
その後、破産者が持っている財産をすべて換価処分します。換価処分とは財産をお金に換えて処分をすることを言います。破産管財人が財産を管理したり処分したりできる権限を有しているため、破産者が何かする必要はありません。
換価処分が終了すると債権者集会を開いて、自己破産をするに至った経緯や事件の概要、換価処分されたお金の配当について説明を行います。
ステップ5免責許可決定
すべての手続きが完了すると、裁判所から免責許可決定を受けることになります。
自己破産手続きは破産手続き開始決定を受けてすぐに、借金の返済義務が消滅するわけではありません。すべての手続きが完了して、免責許可を受けて初めて消滅します。その点を混同しないようにしてください。
なお、免責許可決定後は2回目の官報掲載が行われます。そして、すべての手続きが完了します。
免責不許可になった場合は借金が残る
免責不許可になった場合は、借金の返済義務を消滅させることができません。よって、今後も借金を返済し続けなければいけない状況になるでしょう。
とはいえ、相当な事情がない限りは免責不許可になることはありません。万が一、免責不許可になってしまった場合であっても、その他の債務整理や即時抗告によって対応できる可能性が高いです(対処法は後述)。
そのため、免責不許可に対して過度に心配をする必要はないでしょう。また、仮に免責不許可になったとしても、官報にその事実が掲載されるだけであって、債権者に通知がいくわけではありません。
債権者は官報を見ない限りあなたが免責許可を得たのか、免責不許可になったのかを知り得ません。債権者側も破産手続き開始決定時点で返済を諦めていることも考えられるため、免責不許可になっても取り立てが来なくなる可能性もあるでしょう。
そのような場合には、消滅時効の援用を目指すという方法も良いです。一般的な貸金業者に対する借金の場合は、5年経過すれば消滅時効の援用が可能です。万が一、免責不許可になった場合は、担当の専門家とよく話し合って今後について検討してください。
自己破産をするメリット・デメリットとは?
自己破産手続きは、あなたが抱えているすべての借金を免責にできるという、最大のメリットがあります。しかし、その一方で本来返済を受けられるはずだったお金を得られないという、大きな損失を受ける債権者がいることも忘れてはいけません。
そのため、債務者側に一方的に有利になるようなことはありません。自己破産をすることによって、債務者側もある程度のデメリットを受けることになるでしょう。次に、自己破産をした場合のメリットとデメリットについて詳しくお伝えします。
自己破産をする3つのメリット
自己破産をするメリットは下記の3つです。
- 借金が全てなくなる
- 最低限の財産は手元に残しておける
- 強制執行をされていても止められる
まずは、自己破産をした場合に受けられるメリットについてみていきましょう。
借金がすべてなくなる
自己破産で免責許可を受けることによって、あなたが抱えている借金のすべて(非免責債権を除く)が消滅します。これは、自己破産をするうえで最大のメリットと言えるでしょう。
あなたの借金総額が数百万円あろうが、数億円あろうがいくらでも裁判所の判断で免責にすることができます。
あなたが「借金の返済が苦しくなってきた…」という場合であっても、最終的には自己破産手続きがあります。このことを知っておくだけでも、お金を借りて新しいことに挑戦をできたり、設備投資や自己投資ができたりもするでしょう。
もしも自己破産という制度がなければ、借りたお金はどのように頑張っても自分自身で返済しなければいけません。経済困窮者の最終的な救済措置こそが、自己破産手続きであると思っておきましょう。
最低限の財産は手元に残しておける
自己破産をした場合は、原則破産者の持つ財産はすべて破産財団に属し、債権者に平等に分配されます。しかし、自己破産手続きそもそもの目的は「債務者の経済生活再生の機会を確保すること」です。よって、最低限度生活に必要な財産だけは処分しなくても良いことになっています。
このように、自己破産をしても処分しなくても良い財産のことを「自由財産」と呼び、自由財産に含まれる財産は下記の通りです。
自由財産の範囲
- 新得財産
- 差押禁止財産
- 99万円以下の現金
- 自由財産の拡張が認められた財産
- 破産管財人によって破産財団から放棄された財産
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
新得財産
新得財産とは「新たに得た財産」のことを言います。つまり、破産手続き開始以降に新しく得た財産のことです。
たとえば、あなたが破産手続き開始決定後に50万円程度の腕時計を購入したとしても、今回の破産手続きでは破産財団に属しません。なぜなら、破産手続き開始後に得た新得財産であるためです。
差押禁止財産
差押禁止財産とは、そもそも差し押さえることを禁止されている財産のことを言います。たとえ破産手続きであっても、差押禁止財産に指定されているものまでも、破産財団に入れることはできません。
なお、差押禁止財産には下記のようなものが含まれています。
- 生活必需品(テレビや冷蔵庫等の家電製品や寝具、衣類等が該当)
- 破産者の1カ月分の食料等
- 破産者の職業上、必要不可欠な道具等
等
つまり、破産者がこれから日常生活を送っていくうえで必要不可欠なものは、差し押さえられることはありません。ただし、あまりにも高価なものや、複数ある場合で生活に影響をあたえないものは差し押さえの対象になり得ます。
99万円以下の現金
自己破産手続きにおいては、最低限度の生活費として99万円の現金を残しておくことができます。この「現金」には預貯金等は含まれず、あくまでも現金として保有している金額を指します。
自由財産の拡張が認められた財産
本来、先にお伝えした3つ(新得財産・差押禁止財産・99万円以下の現金)は、あらかじめ自由財産として定められているものです。しかし、破産者の実情に応じて、自由財産の拡張が必要と認められるケースがあります。
たとえば、世帯人数が多くて99万円の現金では、標準的な生活を2カ月間送ることができないような場合などです。このような場合は、破産者自らが裁判所に対して自由財産の拡張を申し立て、認められた場合には財産を処分せずに済みます。
また、日常生活を送るうえで自動車が必要不可欠な場合、裁判所に自由財産の拡張を申し立てることで残しておけることがあります。とはいえ、一般的(よほどの高級車ではない限り)には、新車登録から7年程度経過した自動車は換価処分の対象にはなりません(諸条件あり)。
破産管財人によって破産財団から放棄された財産
破産管財人によって放棄された財産も、換価処分の対象から外れます。というのも、破産管財人はあなたの財産のうち、換価処分するのが難しい財産については、裁判所の許可を得て放棄することができるのです。
たとえば、一部のマニアにしか売却できないような財産や、買い手を見つけることが難しい財産は放棄することがあります。
どのような財産が放棄されるかは定められていませんが、実際に破産管財人が換価処分できるかどうかを調査して最終的な決定を下します。
強制執行後でも差し押さえを止められる
借金を滞納し続けていると、最終的には強制執行にてあなたの財産や給料を差し押さえられてしまいます。しかし、自己破産手続きを開始することによって、強制執行を止められるのもメリットです。
強制執行が始まってからそれを強制的に止めるためには、自己破産や個人再生といった法的手続きを検討するしかありません。もちろん、借金を全額返済できれば、強制執行を止められますが、その他の方法としては法的手続きしかないでしょう
つまり、現時点で強制執行が開始されてしまっている方は、早急に弁護士や司法書士に相談をして、自己破産を含めた法的手続きの検討を開始してください。
自己破産をする4つのデメリット
自己破産は債権者側が大きな損害を受けるため、債務者であるあなた側にもいくつかのデメリットが発生します。あなたが自己破産をすることによって受けるデメリットは、下記の通りです。
- 信用情報にキズがつく
- 官報に自己破産をした情報が掲載される
- 資格制限により、一定期間就けない職がある
- 一定以上の財産を換価処分しなければいけない
次に、自己破産をすることによって受ける恐れがある4つのデメリットについて、詳しくみていきましょう。
信用情報機関にキズがつく
自己破産をすることで、あなたの個人信用情報にキズがついてしまいます。これによって、あなたは一定期間クレジットカードの作成や各種ローン契約の締結が難しくなるでしょう。
なお、日本国内にはCIC・JICC・KSC(全銀協)、合計3社の個人信用情報機関があります。その中で、CIC やJICCは免責許可決定から5年経過すれば、自己破産の情報が消滅します。
しかし、KSCのみ官報に掲載された情報を10年間保存し続けるため、万が一KSCに加盟している債権者がいた場合には、しばらく信用取引が難しくなるでしょう。(KSCは主に銀行系が加盟しています)
あなたの信用情報から自己破産をした事実(異動情報)が消えた時点で、あなたはスーパーホワイト(一切の情報がない状態)になります。そうすることで、審査通過率がアップするでしょう。
ただし、ある程度の年齢の方がスーパーホワイトであると、逆に破産等を疑われて審査が厳しくなる傾向です。よって、情報が消えたからといって直ちに、信用取引が可能になるとは限りません。その点は注意してください。
官報に自己破産情報が掲載
自己破産をすることで、国の機関紙である官報に合計2回情報が掲載されます。この官報はインターネットや紙面で、誰でも閲覧できる状態になっているため、家族や友人、同僚等近しい人にバレてしまう可能性があります。
そのため、自己破産をすることによってその事実が誰かにバレてしまう可能性があるというのは、自己破産のデメリットと考えて良いでしょう。
なお、掲載されるタイミングは「破産手続き開始決定時」と「免責許可決定時」の2回です。官報に掲載する目的は、債権者に対して「破産手続き開始を決定しました」あるいは「免責許可決定を下しました」と知らせるためです。
よって、官報にはあなたの氏名や住所、事件番号等詳細に記載されてしまいます。しかし、あくまでも目的は「債権者へのお知らせ」であり、破産事件を起こしてしまったあなたに対する罰ではありません。
また、一般の方が官報を閲覧できるといっても、毎日膨大な量の情報が官報には記載されています。その中で特定の人物を見つけ出すことは非常に困難です。また、国の機関紙である官報を日常的見る方は少数です。
官報に掲載されるからといって、過度に不安を感じる必要はないでしょう。ただ、可能性としてはバレるかもしれないと思っておいたほうが良いでしょう。
資格制限により一定期間就けない職がある
自己破産をした場合、破産手続き開始決定から免責許可決定を受けるまでの期間、一定の資格を制限する資格制限を受けることになります。もしもあなたが、資格制限の対象職に就いている場合は、その期間は資格を使った仕事に従事できません。
主な資格制限はこちら
- 士業関係(弁護士・司法書士・税理士等)
- 生命保険募集人
- 警備員
等々
もしもあなたが資格制限の対象職についている場合、仕事を辞めないまでも、休職や異動をしなければいけないかもしれません。万が一、資格制限を隠してその職に従事していた場合は、各資格の法律によって罰則を受ける恐れがあります。
また、資格制限対象になることで必然的に会社に自己破産を知らせなければいけません。そういった部分でもデメリットを受けることになるでしょう。
免責不許可事由だった場合
免責不許可事由だった場合は、当然復権は認められません。というのも、破産法によって当然復権(資格制限の解除)は下記のように定められています。
- 免責許可の決定
- 破産手続同時廃止決定の確定
- 再生計画認可の決定
- 破産手続き開始決定から、詐欺破産罪の有罪判決を受けることなく10年経過した場合
つまり、万が一免責不許可事由だった場合は、そのまま10年間経過しなければ当然復権はしません。復権を急ぐ方は、個人再生手続きによって再生計画認可を受けるしかないため、担当弁護士等と今後の対応を協議されてみてはどうでしょうか。
一定以上の財産は換価処分の対象
自己破産手続きはあなたの借金を免責にする代わりに、あなたの持っている財産をすべて換価処分して債権者に分配をします。よって、先ほどお伝えした自由財産を超えた財産はすべて、換価処分(お金に変えて処分すること)の対象になってしまいます。
自由財産とは、新得財産や差押禁止財産等があります。また破産者本人が裁判所に申し立てて認められることによって、自由財産の拡張が可能になることもあるでしょう。どの程度の財産を差し押さえられてしまうのかについては、各裁判所に相談をしてください。
自己破産をするべき人の特徴とは?
自己破産は借金に苦しんでいる債務者の最終手段です。というのも、自己破産は他の債務整理手続き(任意整理・個人再生)と比較しても、デメリットが多いためです。
まだ返済能力があるならば、自己破産ではなく任意整理や個人再生を選択されたほうが良いのではないか?というケースもよく見かけます。では、どういった方が自己破産を検討するべきなのでしょうか?次に、自己破産をするべき人の特徴について詳しくお伝えします。
借金の返済が困難な人
「借金の返済能力がない人」や「借金の返済がこんな人」は、自己破産を検討するべきでしょう。他の債務整理手続きでは、かならず借金が残ってしまうため、借金の返済自体が厳しいと感じている方の選択肢は自己破産一択です。
また、任意整理や個人再生によって借金を減額できなかった人も、自己破産を検討したほうが良いでしょう。たとえば、任意整理や個人再生を検討したが、債権者の同意を得られなかったような場合です。このような状態になると、必然的に自己破産しか選択肢はなくなるでしょう。
まとめると、下記のような方が自己破産を検討するべきです。
- 病気や怪我で収入がない、もしくは大幅に減額した方
- 生活保護受給者(生活保護費で借金返済をできないため)
- 任意整理や個人再生ができなかった方
もちろん、上記に該当する以外の方も自己破産手続きは可能ですし、検討しても問題ありません。少しでも「借金の返済が苦しい…」と感じている方は、司法書士や弁護士へご相談ください。
資格制限の対象ではない人
先ほどもお伝えしたように、自己破産には資格制限があります。よって、資格制限の対象になり得る方は、あえて自己破産を選択する必要はないでしょう。
逆に、資格制限の対象にならない方は、中途半端に借金を残すくらいならすべて免責にできる自己破産がおすすめです。他の債務整理になくて、自己破産のみにあるデメリットといえば、唯一「資格制限」のみです。よって、資格制限の対象にならない方は積極的に自己破産を検討して良いでしょう。
自己破産ができないケースとは?
自己破産手続きは、債権者が一方的に大きな損害を受ける債務整理手続きです。よって、一般的にみて「自己破産をするに相応しくない場合」は、自己破産をできなくなります。
そして、破産法では下記の項目に該当する場合は、免責不許可事由に該当するとしています。
- ギャンブルや浪費で作った借金
- 財産を隠したり他人に贈与したりした場合
- 特定の債権者のみに返済をした場合
- 破産申し立て以前に偽って借金をした場合
- 借金で購入した商品を換金した場合
- 7年以内に免責許可を受けている場合
- 裁判所や破産管財人の調査に協力をしなかった場合
ただし、上記に該当する場合であっても、裁判所の判断で免責許可を受けられる「裁量免責」があります。次に免責不許可事由に該当するケースと、裁量免責について詳しくみていきましょう。
1:ギャンブルや浪費によって作った借金
あなたが借金をした理由がギャンブルや浪費である場合は、免責不許可事由に該当します。なぜならば、私利私欲を満たすために、借金をしてしまった債務者を救済する必要はないためです。
ギャンブルや浪費はいわゆる贅沢であり、やらなくても生活はできますし、生きてもいけるはずです。しかし、自分の欲に打ち勝つことができず、多額の借金を抱えてしまった方をわざわざ債権者が不利益を受けてまで免責許可を下す必要はないでしょう。
はっきり言ってしまえば、ギャンブルで作った借金を自己破産で免責にされてしまったら、債権者があまりにもかわいそうです。よって、ギャンブルや浪費等で作ってしまった借金は、原則自己破産で免責許可はおりません。
ただし、あなたが破産手続き開始時点でギャンブルや浪費をやめ、本当に生活債権を目指している場合には、裁量免責が認められることがあります。当然、ギャンブル依存症である方は病院での治療等も必須です。
また、万が一破産手続き開始決定後等にギャンブルを辞められていないことが発覚した場合には、当然免責不許可になる恐れがあります。本当に辞める覚悟と努力をしなければ、裁量免責は認められないと思ってください。
2:財産を隠したり他人に贈与したりした場合
自己破産手続きは、あなた(破産者)が持っているプラスの財産もすべて申告しなければいけません。その財産はすべて換価処分して、すべての債権者に平等に分配されます。
しかし、あなた(破産者)が特定の財産を隠して破産手続きを行った場合、債権者側が受けられるはずの利益を著しく損なってしまいます。
ただでさえ債権者は大きな損害を受けているにもかかわらず、さらに債権者の行為によって被害を拡大させるのは絶対に許されません。万が一、財産隠しが発覚した場合には、当然免責不許可事由に該当するので注意してください。
なお、裁判所によっては過去1年以内に他人に贈与したものなども、調査対象になることがあります。たとえばあなたが、知人に対して高級な腕時計を無償で贈与していた場合、「財産を隠す目的で他人に贈与した」とみなされる恐れもあります。
自己破産によって元金均等返済される財産は、あくまでも破産者本人のもののみであるため、このような方法で財産を隠す者もいるためです。
疑わしいことがあるときは正直に伝えること、そして絶対に財産を隠したり、債権者が不利になるような行為をしたりしないこと。この2つを徹底してください。
詐欺破産罪として刑事罰の対象になり得る
財産を隠したり他人に贈与したりして、債権者に不利益をあたえるようなことをした場合は、免責不許可になるだけではありません。詐欺破産罪として刑事罰の対象になる恐れもあるので注意してください。
万が一、詐欺破産罪として有罪判決を受けた場合には、借金は免責できないどころか懲役刑や罰金刑を受ける恐れがあります。
過去には、約8億円相当の財産を隠そうとした事件も発生しています。この事件では、懲役3年執行猶予5年の有罪判決が下りました。
このケースでは金額が高額だったこともあり、とても重い判決が下されました。しかし実際に、個人や少額でも詐欺破産罪として有罪判決を受けることはあります。自己破産という手続きの性質を理解し、絶対にこのようなことが起こらないようにしてください。
3:特定の債権者にのみ支払いをした場合
特定の債権者のみに借金を返済する行為も、破産法によって禁止されています。たとえば、あなたが友人からお金を借りていたとしましょう。
借金は司法書士や弁護士に債務の整理を委任した時点で支払い義務が止まるため、当然その友人への返済も禁止されます。ところが、「このままいけば借金の返済をしなくて済むから、友人にだけお金を返済しよう」と言って実際に返済をした場合、免責不許可事由になります。
破産者としても「せめて友人や家族等、近しい人にだけは借金を返済したい…」そう考える気持ちはわかります。しかし、実際に返済をしてしまうと、特定の債権者(友人)だけ特別な利益を得ることになるため絶対にやめてください。
自己破産はあくまでも、すべての債権者に対して平等でなければいけません。よって、特定の債権者のみに返済をする行為は絶対に避けてください。
4:破産申し立てより1年前に偽って借金をした場合
破産申し立てをした日以前から1年以内に、身分等を偽って借金をした場合は、免責不許可事由に該当します。たとえば、年収を偽ってクレジットカードの限度額を引き上げたり、お金を借りたりしたような場合です。
「破産申し立てより1年以内」というのがポイントで、「直近で相手を騙してお金を借りた=破産することを前提でお金を借りられるだけ借りた」と、かなり悪質に捉えられてしまうためです。
また、実際にお金を返すつもりがないにもかかわらず、返すと偽ってお金を借りたり、身分を偽って実際にお金を借りた場合は詐欺罪になります。免責不許可になるだけではなく、詐欺罪として厳しい罰則を受けるので注意してください。
5:借金で購入した商品を格安で売却していた場合
借金をして購入した商品を明らかに安い価格で売却した場合は、免責不許可事由に該当する恐れがあります。たとえば、換金目的で10万円のノートパソコンをクレジットカードで購入し、5万円で売却した場合などが該当します。
このようなケースでは、返済できる見込みがないのに換金をする目的で借金をしたと判断されるため、免責不許可事由に該当するでしょう。
また「格安で売却」というところがポイントで、実価格と大差がなければ良いのか?という点で判断が分かれます。実際、「思っていたものと違ったけど返品ができなかった」などの理由から、購入した商品を売却することもあります。
そのため、格安でなければあまり問題はないように思われます。しかし、自己破産を検討しているならば、借金で購入したものを売却することは避けたほうが良いでしょう。
6:7年以内に免責許可を受けている場合
破産手続き申し立て以前7年以内に、免責許可を受けたり個人再生(民事再生)による再生計画認可を受けている場合も、免責不許可事由に該当します。これは、「短期間で何度も借金で失敗している」と判断されてしまうためです。
万が一、1度目もギャンブルによる借金、今回もギャンブルによる借金となれば、免責不許可になる可能性が非常に高いでしょう。
一般的にみて、7年間という短期間で何度も破産事故を起こすことはあり得ません。1度目での反省が足りなかったのではないか?また同じことを繰り返すのではないか?と思われてしまうため、非常に厳しく判断されることになるでしょう。
7:裁判所や破産管財人の調査に協力しなかった場合
裁判所や破産管財人の調査に従ったり協力しなかったりした場合も、当然免責不許可事由に該当します。自己破産という制度を理解すれば、なぜ裁判所や破産管財人が関わっているのか、なぜ協力をしなければいけないのかわかるはずです。
すべて破産者であるあなたの生活債権のために、協力してくれていることを理解してください。
破産者自身が裁判所や破産管財人に協力できなければ、手続き自体を進めることもできません。当然、長引けば債権者にも迷惑をかけてしまうでしょう。破産者ひとりの自覚のない行動によって、たくさんの人が迷惑を受ける可能性を理解してください。
指定された日時に裁判所へ出向く、破産管財人に聞かれたことには答える、必要書類は遅滞なく準備するなど徹底してください。なお、破産者自身の仕事が忙しくて、なかなか協力をできないことがあるかもしれません。
そのような場合であっても、まずは裁判所や破産管財人、代理人が誰のために行動をしているのか?理解してください。そして、可能な限り周りに合わせる努力をしましょう。どうしても、日程調整が難しいならば、相談をするように心がけてください。
自己破産によって自分が受けられるメリットと債権者が受けるデメリットをしっかり理解し、正しく行動するように心がけてください。
免責不許可事由でもおりることがある!(裁量免責)
免責不許可事由についてお伝えしてきましたが、これまでにお伝えした事実に該当する場合は、原則免責許可がおりません。しかし、裁判所の判断で免責許可を下す「裁量免責」というものがあります。
裁量免責とは、実際に免責不許可事由に該当するようなケースでも、破産者の状況を鑑みると免責許可決定を下したほうが良い場合に裁判所の判断で免責ができる制度です。
たとえば、ギャンブルで作った借金でも、破産者本人が反省して2度とギャンブルをしないように努力をしている場合です。このようなケースでは、「免責不許可事由に該当するけど、チャンスをあたえて生活再建を目指してもらったほうが良い」と判断されるでしょう。
裁量免責は各裁判所の裁判官が判断をするため、「〇〇だから裁量免責」ということがありません。個別事情ごとに判断をすると思っておいてください。
自己破産ができないときはどうすれば良い?
自己破産手続きは誰でも申し立てをすることはできますが、最終的に許可がおりるかどうかは、あなたの状況や裁判所次第です。万が一、あなたが免責不許可事由に該当してしまい、自己破産をできなかった場合はどうすれば良いのでしょうか?
最後に免責不許可に終わった場合に検討するべき3つのことについて、下記の通りお伝えします。
- 免責不許可後1週間以内に即時抗告をする
- 他の債務整理手続きを検討する
- 返済できない場合は消滅時効の成立を目指す
最後に、自己破産が成立しなかった場合の対処法について詳しくお伝えします。
免責不許可後1週間以内に即時抗告をする
自己破産の免責不許可決定がなされた場合で、その判決に納得ができない場合は、判決が出てから1週間以内に即時抗告をすることができます。この即時抗告とは、自己破産に対する異議申し立てであり、内容としては「判決に納得ができません」というものです。
即時抗告は自己破産を申し立てた地方裁判所を管轄する、高等裁判所でなければいけません。また、期間も1週間と非常に短いため、免責不許可決定を受けてすぐに即時抗告の検討を始めてください。
なお、即時抗告をしたからといって、かならず判断が覆るとは限りません。場合によっては、その判決が確定することもありますし、覆ることもあるでしょう。
ただ、実務的には免責不許可事由に該当する場合であっても、ほとんどの確率で裁量免責が認められます。実際、免責不許可になるのは全体の3%前後が相場です(その年によっては0%のことも…)。
そのため実際は、相当な理由がなければ免責不許可にはなりません。よって、仮に即時抗告をしても、判決が覆る可能性は極めて低いと思っておいたほうが良いでしょう。とはいえ、何もしないよりはマシ程度に考えてください。
他の債務整理手続きを検討
自己破産ができなかった場合は、その他の債務整理手続きを検討するのも良いでしょう。自己破産以外の手続きとしては、下記の2種類があります。
- 「利息」をカットして元金のみを原則3年程度で完済を目指す任意整理手続き
- 借金を100万円もしくは1/10まで大幅に減額して、残金を原則3年で完済を目指す個人再生手続き
内部リンク(個人再生・任意整理)
いずれの手続きも自己破産とは異なり、かならず借金が残ります。しかし、借金そのものを減額することはできます。そもそも借金の返済が困難な方や、無職等で返済能力がない方は利用できませんが、かろうじて返済能力がある方は検討するべきでしょう。
本来であれば、一切借金が残らない自己破産がおすすめです。しかし、自己破産が難しい方にとっては、その他の債務整理手続きが有効な策となり得るでしょう。
返済できない場合は消滅時効の成立を待つ
もし万が一、自己破産もできない、その他の債務整理もできないなどの事情を抱えている方は、消滅時効の成立を目指すしかありません。
消滅時効とは、借金の返済義務が生じてから一定期間経過後は借金の返済義務が消滅する期間のことを言います。消滅時効の成立要件を満たし、実際に援用をした場合には、借金の返済義務が消滅します。
そして、貸金業者等からの一般的な借金であれば、返済予定日の翌日から数えて5年経過した時点で消滅時効の成立要件を満たすでしょう。ただし、消滅時効の更新があった場合には、更新日に起算日が変更されてしまいます。
【消滅時効の更新】
- 裁判所の請求
- 強制執行等
- 債務の承認
万が一、債権者側から裁判所を介して督促状等を送付されている場合には、消滅時効が更新されてしまいます。また、実際に強制執行等を受けている場合も、同様に更新がされるので注意してください。
さらに言うと、債権者側から督促状が届いた場合は半年間の延長がなされるので注意してください。これらはすべて債権者側から行われることであるため、破産者がどうにかできるものではありません。
しかし、債務の承認については破産者自身が行うものになります。これは、あなた自身が借金の存在を認めてしまうことを言います。たとえば、「◯月◯日までにはお支払いします」とか実際に1円でも返済した場合です。このような場合には、更新されてしまうので注意してください。
なお、自己破産をした場合で(少額)管財事件として扱われ、免責不許可になった場合は消滅時効の更新が認められます。一方で、同時廃止事件として扱われた場合には、時効の更新は認められません。
また、自己破産後の免責許可・不許可は官報によって知らされます。直接裁判所から債権者に通達が行くわけではありません。そのため、債権者側が気付かぬうちに、消滅時効が成立していることも考えられます。
もしも、自己破産によって免責不許可を受けてしまった場合には、そのまま消滅時効の成立を目指すのも有効な手段と言えるでしょう。
まとめ
今回は、自己破産とは何か?について、さまざまなことをお伝えしました。
自己破産手続きとは、債務者のマイナスの財産をすべて清算し、そのうえで破産者が持つ財産をすべての債権者に平等に分配する、債務整理手続きとのことでした。自己破産は債務者側が大きなメリットを受けられる反面、債権者側が大きなデメリットを受けます。
そのため、これから自己破産をする破産者に対しても、さまざまなデメリットを受けることになります。とくに、他の債務整理と大きく異なる点は、一定以上の財産処分と資格制限です。
自己破産をする場合には、自分の持っている一定以上の財産をすべて処分しなければいけません。自分の借金も面性になるのだから、当然といえば当然です。とはいえ、やはり厳しい対応と感じるのは間違いないでしょう。
また、資格制限によって一定期間就けない職があるのも、自己破産特有のデメリットです。自己破産は、メリットも大きいですがデメリットも大きいため、どのように借金問題を解決するのか?については、しっかり考えておいた決断をしたほうが良いでしょう。
今回お伝えした自己破産の概要について、ぜひ参考にしてください。