「毎月しっかり返済しているのに全然終わりが見えない」「毎月の返済額が家計を圧迫して苦しい」などというように、借金生活は債務者の生活にも心にも負担となるもの。
計画的に返済をつづけていたとしても完済まで無事にたどり着ける保証はなく、どこかのタイミングで”借金を返せない”という事態に追い込まれることはすべての債務者に起こりうるものです。
ただ、「返せないのなら仕方がないか」とはならないのが借金の厄介なところ。カードローン・クレジットカードのキャッシングなどを含め、すべての借金は貸主との契約に基づいている以上、契約通りに返せないとなると数々のデメリットが発生し、借金苦の末、厳しい末路をたどることになります。
そこで、今回は、借金を返せないとどのような末路に至るのか、そして、そうならないためには今のうちからどんなことを心がけて借金生活に向き合う必要があるのかについて分かりやすく解説します。借金を返せないときの救済措置である”債務整理”についても紹介するので、ぜひ最後まで参考にしてください。
借金を返せないときに生じるデメリットは6つ
返済日にお金を用意できず借金を返せないと、債務者には次の6つのデメリットが発生します。
- 遅延損害金が発生する
- 債権者から督促が繰り返される
- 信用情報に傷が付く
- 残債を一括請求される
- 法的措置で財産等が差し押さえられる
- 家族に迷惑がかかる
いずれのデメリットも債務者を経済的・精神的に追いつめるものです。それぞれのデメリットの内容を把握して、「これらのペナルティが深刻になる前に借金問題を解決しよう」という意識に繋げていきましょう。なお、これらのデメリットについては以下のリンク先の記事でも詳しく解説しています。あわせてご一読ください。
借金を返済しないとどうなる?滞納し続けるデメリットと回避する方法もあわせて解説借金を返せないと遅延損害金が発生する
返済日に借金を返せないときに最初に生じるデメリットは”遅延損害金”。返済日に間に合わなかったことに対する罰金のようなイメージです。
たとえば、次のような形でカードローン等の規約には遅延損害金についての定めが記載されています。
第5条(遅延損害金)
期限の利益を喪失した場合は、支払わなければならない元金に対し、 契約条件欄記載の割合(年365日(閏年366日)の日割計算)でその翌日以降完済に至る迄の遅延損害金を支払う。
引用元:アイフルカード会員規約
ここから分かるように、遅延損害金について押さえるべきポイントは次の3点です。
- ①遅延損害金は借金「元本」を基準に算出される
- 遅延損害金は、毎月の返済日に間に合わなかった”月額返済額”を基準に計算されるわけではなく、”元本総額”を基準に求められます。たとえば、100万円の借金を毎月2万円ずつ返済しているケースで滞納が生じた場合、遅延損害金の算定基準は2万円ではなく100万円ということ。遅延損害金が高額になる傾向が強いのはこれが原因のひとつです。
- ②遅延損害金は日割りで発生する
- 遅延損害金は1日単位で発生するもの。つまり、滞納翌日から延滞が解消されるまで毎日発生しつづけるため、それだけ債務者の返済負担は重くなることを意味します。
- ③契約所定の遅延損害金年利率に基づいて算出される
- 債権者との間で締結した契約内容次第ですが、多くのカードローン商品等において遅延損害金年利率は20%(利息制限法の上限)と定められていることが多いです。たとえば、総額100万円の借金について返済日に払えない状態になると、毎日約548円ずつ遅延損害金が増えていく計算になります(1カ月で約16,438円)。
滞納を解消して遅延損害金の発生を防ぐためには、契約所定の月額返済額に加えて発生済みの遅延損害金を含めて返済しなければいけません。
延滞期間が長くなるほど家計への負担は重くなるので、できるだけ早い時期に滞納状況を解消するのが完済への近道です。
借金を返せないと督促が繰り返される
借金を返せないときに発生する2つ目のデメリットは”債権者からの取り立て”です。どの時期から督促がスタートし、どの程度の頻度で繰り返されるかは債権者次第ですが、お金を払いたくても払えない状況の債務者にとってはストレス要因でしかありません。
一般的に、債権者側からの督促は次のような方法で行われます。
- 電話連絡:滞納翌日~数日後、未払い状態を債権者が確認したタイミングでスタートする。
- 郵便物の送付:滞納1週間程度を目安に、遅延損害金を加算した請求書が同封される。
債務者のなかには、「お金を払えないのだから電話に出るだけ無駄」「消費者金融からの郵便物なんて開封しないで捨ててしまった」という対応をとる人も少なくありません。
借金問題から目を背けたくなる気持ちは当然のことですが、債権者からの督促は絶対に無視しないでください。なぜなら、着信拒否などの不誠実な対応をとってしまうと「返済の意思がない」と判断されて、より厳しい回収手段をとられる可能性が高くなるからです。
後述するように、借金を返せないままの状態がつづくと、最終的には債務者の財産等を差し押さえることによって債権回収が行われます。そして、どのタイミングで債権者が法的措置に繰り出すかは債権者自身が決めることです。
ということは、「債務者が自分から素直に借金を返してくれないのなら、債権者側としても強制的に回収するしかない」という考えに至ってしまうのは当然のことでしょう。
したがって、今現在お金を払えるかどうかにかかわらず、まずは債権者に対して返済の意思を示しておくことによって、強制執行に踏み出すタイミングを遅らせることができます。その間に、家計をやりくりして返済資金を用意したり、専門家への相談に時間を使えるはずです。
債権者からの電話にはかならず出る・不在着信には折り返す・担当者との会話は真摯に対応する・郵便物が届いたら自分から連絡をするなど、できるだけ丁寧に債権者と向き合いましょう。
借金を返せないと信用情報に傷が付く
借金を返せないままだと、債務者の信用情報に傷が付きます。
信用情報とは、各人の年収・勤続年数・ローンやクレジットカードの契約情報などの個人情報のことです。日本では次の3つの機関が信用情報の取り扱い業務を担当しています。
引用:お借入れすると、借入れ金額などの情報が信用情報機関に提供されます – 日本貸金業協会HP
そして、借金を返せないとき、多くのケースにおいて滞納期間が約2カ月頃の時期を目安に、信用情報機関に滞納情報(事故情報)が登録されることになります。いわゆる「ブラックリストに登録された状態」のことです。
信用情報に傷が付くと(ブラックリストに登録されると)債務者の日常生活には次のような弊害が発生します。
- クレジットカードが使えなくなる
- 新規発行はもちろんのこと、現在所有中のクレジットカードも、不定期に実施される与信審査や更新のタイミングで使用不可に。クレジットカードの発行が前提のETCカードも使えなくなる。なお、クレジットカードの支払いを滞納した場合、当該カードは滞納翌日~数日以内に利用停止になる点に注意が必要です。
- 新しい借金・ローン契約が結べなくなる
- すでに借金を抱えている状態では新たに借入をする必要はないようにも思えますが、ブラックリストに登録されると消費者金融などからの借入以外にも、たとえばカーローン・住宅ローンの審査にも通らなくなります。マイホームを購入できない・通勤のための車が手に入らないなどの現実的な問題が生じうる点に注意が必要。
- 携帯電話の端末代金を分割払いできなくなる
- 近年、携帯電話・スマートフォンの端末代金は数万円~10万円を超えるものも。ただ、携帯電話端末代金の分割払いはローン契約の一種だと考えられるので、新規のローン契約ができない以上、スマホの購入代金も一括でしか支払えなくなります。
- その他のデメリット
- たとえば、子どもの学費のために奨学金を申し込む際には人的担保として連帯保証人が必要ですが、ブラックリストに登録された人には連帯保証人資格が認められません。また、賃貸物件の入居審査のタイミングで信用情報が照会されるケースがあるため、物件によっては入居できない可能性もあります。
なお、ブラックリストへの登録は一生つづくものではなく、(延滞状況次第ですが)長くても5年程度です。
そして、事故情報が抹消されたかどうかは”開示請求”によって知ることができるので、たとえば借金問題を解決した後、住宅ローンなどを検討する場合には、ローン審査を申し込む前にご自身の信用情報を確認することをおすすめします。
借金を返せないと残債を一括請求される
借金を返せない状態がつづくと、滞納分だけではなく、借金の残債を一括請求されることになります。残債の一括請求が行われるのは債務者が”期限の利益を喪失“したタイミング。契約内容にもよりますが、一般的には延滞期間が2カ月を過ぎた時期です。
期限の利益を分かりやすく説明すると、「借金の分割払いを認めてもらう権利」のこと。たとえば総額100万円の借金を毎月2万円ずつ返済できるのは債務者に”期限の利益”があるからです。もし期限の利益がないとすれば、いきなり借金全額の返済を求められても拒絶できないことになります。
そして、借入時に締結した契約書における”期限の利益喪失条項”に抵触する事情が発生すると、その時点で債務者は期限の利益を喪失することに。その結果、今まで認められていた分割返済が不可能になり、借金の残債を一括返済する義務が発生します。
ここでのポイントは、「毎月の返済額さえ払えない債務者にとって残債全額を用意するのは不可能に近い」ということ。そして、残債の一括請求も返せないままでは、最終的には債務者自身の財産が差し押さえられることになります。
したがって、残債の一括請求は債権者側からの最後通牒であり、法的措置が差し迫っていることが分かるサインだとお考えください。
借金を返せないと法的措置をとられる
借金を返せないと、最終的には債権者(または代位弁済をした債権回収会社)が法的措置によって債権の回収を行います。具体的には、債務者の財産などが差し押さえられるということです。
もっとも、債務者が所有するすべての財産がいきなり差し押さえられるわけではありません。債権者が法的措置を開始した場合には裁判所から支払督促等の方法で郵便が届きますし、その都度債務者側には反論の機会が与えられます。また、債務者の生活に最低限必要な財産などは”差し押さえ禁止財産”として強制執行の対象外です。
したがって、「ある日いきなり身ぐるみはがされて路頭に迷う」というような事態にはおちいらないのでご安心ください。
ただし、「借金を返せない状態=債務不履行(契約違反)」です。つまり、裁判所による公正な判断が下されると、債務者には勝ち目がありません。
その結果、強制執行手続きがスタートしたにもかかわらず債務者側で何の対抗策もとらなければ、次の財産などが処分されることになります。
- 給与
- 毎月確実に勤務先から債務者に振り込まれる給与は「回収の確実性が高い」と判断されるので、優先的に強制執行の対象にされやすいもの。債権執行手続きでは勤務先が直接手続きに巻き込まれるので、会社の経理担当者などに借金のことを知られてしまいます。
- 預貯金
- 債務者の預貯金から債権回収が期待できそうなケースでは、銀行が手続きに巻き込まれる形で強制執行が行われます。ここで注意を要するのが、強制執行の対象となった口座を開設している銀行との間でローン契約等を締結している場合。当該ローン契約における期限の利益喪失事由に「強制執行されたこと」が掲げられていることが多いため、ローン残債を一括請求(口座残高と相殺)されることになります。残高が充分であれば問題ないのですが、不足額があると口座を凍結されるリスクにまで発展するのでご注意ください。
- 債務者名義の財産
- 土地・建物・車などの不動産、自宅内にある債務者名義の動産(差し押さえ禁止財産以外)はすべて強制執行の対象になりうるものです。
どの財産が差し押さえられるかは債権者次第です。つまり、債務者からすると、どの財産が差し押さえられるか分からないということ。これでは、「会社に知られるかもしれない」「マイホームがなくなるかもしれない」という不安に苛まれることでしょう。
強制執行で財産などが処分されると二度と取り戻すことはできません。したがって、借金を返せないまま呆然と事態の推移に身を委ねるのではなく、返済するために工夫する・債務整理を利用するなどの方法に着手して最悪の事態に追い込まれないように気力をふりしぼってください。
借金を返せないと家族に迷惑がかかる
ここまで紹介した数々のデメリットは、すべて借金の借主である債務者自身に生じるものです。
もっとも、借金を返せないことが原因で生じるデメリットは、間接的に債務者の家族にも波及するおそれがあります。たとえば、次のような場面で家族にも迷惑が及ぶことになるので注意が必要です。
- 家族が連帯保証人になっているケース
- 借金やローンを契約するときに家族が連帯保証人になっていることもあるはず。主債務者が滞納すると連帯保証人はいつ全額を一括請求されてもおかしくない立場に置かれますし、連帯保証人が一括請求に応じられないと、別途遅延損害金が発生したり、信用情報に傷が付くおそれも生じたりします。
- 債務者がブラックリスト登録された影響が出るケース
- 債務者名義で発行していたクレジットカードが使えなくなるため、付帯サービスとしての家族カードも使用不可になります。また、住宅ローンを組めなくなると家族全体の生活プランにも支障が出ますし、奨学金の保証人になれないために子どもの学費を工面できないおそれも。
- 遅延損害金が負担になるケース
- 借金残債次第では遅延損害金の負担が高額になることも。家計を圧迫する要因になるため生活レベルが下がり、今まで通りに食費・娯楽費などを用意できない可能性も生じます。
- 強制執行が家族に影響するケース
- 同居家族がいる場合、強制執行でマイホームが処分されると家族も生活拠点を奪われることに。また、自宅内の動産も処分されるおそれがあるため、(債務者の負担で購入したものと判断される)家族が使っていたものも取り上げられるリスクがあります。
ここから分かることは、単身で生活している場合を除いて、借金問題は家族全体を巻き込む危険性があるものだということです。
借金を返せないとき、非情な現実的問題から目を背けたくなるのは当然のこと。ただ、今借金問題に向き合わなければ、自分だけではなく家族にも迷惑がかかってしまいます。
早期に解決に向けて動き出せば、かならず家族への悪影響を回避・軽減できるはず。できるだけ早いタイミングで債務整理などの方法を検討しはじめましょう。
借金を返せないときの対処法は3つ
それでは、借金を返せないときの対処法を解説していきます。次の3つのポイントを押さえましょう。
- 適切な現状分析(返済継続の可能性を判断する)
- 自力で完済できそうなら返済継続のために工夫をする
- 自力で完済できないなら債務整理を利用する
あくまでも大まかな目安ですが、まだ滞納していない・滞納日数が浅い状況なら自力返済の道(①→②)を、すでに深刻な滞納状況にある・返済を継続する気力がないのなら(①→③)のプロセスをたどることになります。
それでは、各ポイントごとに詳しく見ていきましょう。なお、債務整理を検討すべきタイミングについては以下のリンク先の記事でも紹介しています。「自分で判断できる自信がない」という方は、ぜひ今後の選択の参考にしてください。
【債務整理を検討すべき8つのタイミング】早めの対策が借金生活から楽に抜け出すポイント借金状況を正確に把握する
借金を返せない債務者が最初にするべきことは”現状分析”。なぜなら、次のように、完済まで返済を継続できるか否かによって今後目指すべき方向性が変わるからです。
- 完済の見込みがある → 家計節約などの方法を駆使して滞納なく完済を目指す
- 完済の見込みがない → すみやかに債務整理を利用して借金状況の改善を目指す
今後の方向性について適切な判断を行うためには、毎月の支出項目を整理・借金総額や返済計画を把握するのがファーストステップ。毎月の収入のなかから余裕をもって毎月の返済額を用意できるかを計算しましょう。
ただ、借金生活が長期に及んでいる債務者のなかには、「借金残債総額が分からない」「どこから借り入れたかも忘れてしまった」という人も少なくはないはず。自分がどれだけの借金を抱えているかが分からなければ、ふたたび借金を返せない事態におちいりかねません。
そこで、借金状況について不安のある方は、自分の借金総額を知るために信用情報機関に開示請求をしておくのがおすすめです。次のように一定の費用がかかりますが、返済状況を漏れなく把握できるでしょう。
信用情報機関 | 開示請求方法・手数料 |
---|---|
日本信用情報機構 (JICC) |
・WEB、郵送(1,000円) ・窓口(500円) |
株式会社シー・アイ・シー (CIC) |
・WEB、郵送(1,000円) ・窓口(500円) |
全国銀行個人信用情報センター (KSC) |
・郵送(1,000円) |
なお、家計管理診断(日本貸金業協会HP)では毎月の家計の問題点や返済シミュレーションをチェックできます。他にも無料の家計簿アプリなども豊富なので、使いやすいものをご活用ください。
借金を返せるように工夫する
借金を返せると判断した場合には、滞納なく完済できるようにしっかりと工夫していきましょう。なぜなら、言われるがままに返済をつづけるだけでは借金はいつまでも減らないですし、万が一払えない状況に追いこまれると遅延損害金等のデメリットが発生することになるからです。
たとえば借金の自力完済を目標とする場合、次のポイントを押さえて家計改善に取り組みましょう。
- 節約できそうな支出項目を見つける
- 家計のなかでも節約できるポイントは意外と多いもの。光熱費・スマホを安いプランに変更したり、不必要な生命保険・サブスクを解約したりするなど、支出を減らして借金を返しやすいように家計に余裕を作りましょう。
- 自宅の不用品を売却する
- 浪費癖が原因で購入してしまったブランド品などを売却すればまとまったお金が手に入るはず。滞納分の解消・繰り上げ返済に使えます。
- 収入アップを目指す
- 副業や単発アルバイトなどで収入を増やせば借金を返しやすくなります。また、会社によっては資格手当が支給される職種もあるので、そのような制度を狙って昇給を目指すのも選択肢のひとつです。
- 繰り上げ返済で完済を近づける
- 繰り上げ返済とは、翌月分以降の返済額を前もって弁済する返済方法のこと。繰り上げ返済分は利息の支払いに充てられることはなく、すべて元本に充当されるので完済日が前倒しになります。
- 一括返済で借金生活を終わらせる
- 一括返済とは、ボーナス月など、まとまった収入があったタイミングで残債を一括で返す方法のこと。
- 毎月の返済額を増額する
- たとえば、毎月2万円ずつ返済していたところを増額して3万円ずつ返済すれば、それだけ元本の減りがはやくなるので完済が前倒しに。家計に余裕が生まれたタイミングで返済額の変更を申し出よう。
滞納することなく借金を返しきるためには、無理をして返済額を用意するのではなく、「毎月着実に返済できる体力をつけること」が重要です。
節約をしながら家計に余裕を作ることができれば、繰り上げ返済・返済額の増額などの方法を組み合わせながら自力完済を目指しましょう。
なお、借金を早く返す方法については次のリンク先で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
借金を早く返す方法は意外と簡単?どうしても返済できないなら債務整理を検討しよう
借金を返せないなら債務整理を利用する
現在抱えている借金総額や完済までのシミュレーションをした結果、どうしても完済まで返済を継続するのが難しい場合には、できるだけすみやかに債務整理の利用を検討してください。
たとえば、「今は努力すれば借金を返せそうだが、数年先の完済予定日まで努力を継続するのが難しそうだ」という場合も、今の時点で債務整理を利用してしまった方が得策。なぜなら、完済をできないのであれば、無理をして返済を継続すること自体が無駄な努力に終わってしまうからです。
つまり、「自力完済できない」という未来がかなりの蓋然性をもってやってくるのなら、今の時点で債務整理をして返済状況を改善してしまった方が債務者にとって利益が大きいということ。次の3つの債務整理手続きのなかから、ご自身の状況に応じて適切なものを選択しましょう。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
それぞれの手続きごとにメリット・デメリットがあるので、具体的に確認していきましょう。
任意整理なら借金の元本だけの返済に切り替えられる
任意整理とは、債権者と毎月の返済額・今後の返済計画などについて直接話し合う債務整理手続きのことです。
裁判所を利用せずに交渉できるので手続きが楽ですし、多くのケースでは利息の支払いも免除されます。つまり、「利息さえなくなれば借金を返せるのに」とお悩みの債務者におすすめの債務整理手続きです。
ただ、他の債務整理手続きと同じように、メリットだけではなく、デメリットも発生する点に注意しなければいけません。次のメリット・デメリットを総合的に考慮したうえで、手続き選択にお役立てください。
- 任意整理のメリット
- ・利息の返済義務が免除されることが多い(返済総額を減額できる)
・連帯保証人への迷惑を避けられる
・原則3年~5年で完済できる
・交渉次第では毎月の返済額も減額できるケースがある - 任意整理のデメリット
- ・元本の返済は継続しなければいけない
・任意整理後に借金を返せないと再交渉の余地がなくなる
・他の債務整理に比べると借金の減額効果が弱い
・約5年ほどブラックリストに登録される
なお、任意整理については「任意整理とは何ですか?」で詳しく解説しています。あわせてご一読ください。
個人再生なら借金元本額を減額できる
個人再生とは、裁判所を利用して一定額まで借金の元本額を減額し、原則3年で完済できる返済計画を作り直す債務整理手続きのことです。
任意整理よりも踏み込んで借金を減らせるだけではなく、住宅ローンの特則が用意されているのでマイホームを手元に残すことができます。つまり、「自宅を手元に残しながら借金を返せるようにしたい」という債務者におすすめの債務整理手続きです。
もっとも、個人再生で返済状況を改善するためには、裁判所の認可要件を充たす必要があるなどの高いハードルをクリアする必要があります。次のメリット・デメリットを考慮したうえで、個人再生の適否をご判断ください。
- 個人再生のメリット
- ・借金総額に応じて減額を狙える
・特則を利用すれば住宅ローンだけは今まで通りの返済を継続できる
・自己破産とは異なり、ギャンブルが原因の借金でも認可を目指せる - 個人再生のデメリット
- ・安定した給与を得ている必要がある
・借金総額が100万円以内だと元本の減額は受けられない
・所有する財産が多いと充分な減額を受けられないリスクがある
・約5年~10年ほどブラックリストに登録される
なお、個人再生については「個人民事再生とは何ですか?」で詳しく解説しています。あわせてご一読ください。
自己破産なら無職でも借金の免責を狙える
自己破産とは、どうしても借金の返済を継続できない債務者が利用できる最終的な救済措置のこと。裁判所の免責許可決定を獲得できれば、原則としてすべての借金返済義務が免責されることになります。
任意整理・個人再生では、債務整理後数年間は返済を継続するのが前提です。しかし、債務者のなかには、無職・非正規雇用の人など、「収入状況に照らすと完済まで借金を返せない」という人も少なくないでしょう。
このような人のために自己破産という救済措置は用意されており、「一度に借金生活を終わらせることができる」という強力なメリットを得ることができます。
もっとも、借金がなくなるということは、それだけ債権者側が損をするということ。債権者だけが一方的に損失を押し付けられるのは不公平です。
そこで、自己破産を利用する債務者には次のようなデメリットが生じることになるので、メリットと比較衡量したうえで、自己破産に踏み切るかをご判断ください。
- 自己破産のメリット
- ・借金返済義務の免責を狙える
・客観的に返済不能であることが条件なので、無職・フリーターでも利用できる - 自己破産のデメリット
- ・(自由財産以外の)債務者名義の財産が処分される
・養育費や罰金など、一部の非免責債権に分類される借金は免責されない
・ギャンブルが原因の借金など、免責不許可事由が存在すると借金が残る(別途、「裁量免責」という制度を利用できる)
・破産手続き中、職業制限を受ける資格・仕事がある
・約10年ほど、ブラックリストに登録される
なお、自己破産については「任意整理とは何ですか?」で詳しく解説しています。あわせてご一読ください。
借金を返せないときは司法書士へ相談を
借金を返せないときは、今後の方針について早期に判断することが何より重要です。「返済をつづけるのなら工夫をする」「これ以上借金を返せないのなら債務整理を利用する」という2つの方向性のどちらに進むべきかをまずは検討しましょう。
ただ、債務者にとってこの判断は簡単なものではありません。特に、借金を返せないという心理的・経済的に圧迫された状況のなかでは、冷静な分析ができないのも仕方のないことです。
そこで、借金を返せないとお悩みの方にとって救いとなるのが司法書士などの専門家への相談。法律の専門家に依頼をすれば、「自力完済を目指すべきか」「どの債務整理手続きを利用すべきか」などについて、丁寧にアドバイスをもらえるでしょう。
ひとりで悩みを抱えているだけでは状況はどんどん悪化するだけです。「誰かに相談できた」という安心感も得られるので、まずは司法書士などにお問い合わせください。