借金を減額する3つの方法!返済が間に合わないなら頼れる手段を実践しよう

借金を減額する3つの方法!返済が間に合わないなら頼れる手段を実践しよう

本来、借りたお金は契約通りに返さなければいけません(民法第587条)。

ただ、借金は知らずしらずのうちに増えてしまうもの。どれだけ家計を節約しても借金が減りにくかったり、解雇などが原因で収入が減少したりすると、返済の継続が難しくなることもあるでしょう。

そこで、この記事では、“合法的に”借金を減額する方法を3つ紹介します。家計が苦しい現状を放置しても状況は今以上に悪化するだけです。積極的に対応策をとることで、厳しい家計状況を改善しましょう。

ただし、それぞれの方法ごとに特徴やデメリットがあるので注意が必要です。債務者の状況に応じて適切な方法を選択してください。

この記事の監修者

近藤邦夫

司法書士法人 浜松町歩法務事務所」代表司法書士。 愛知県岡崎市出身。 昭和64年早稲田大学法学部卒業。 長年にわたり、債務整理を行い、 また宅地建物取引士の資格を生かし、不動産登記や商業登記も行なっている。

目次

【借金を減額する方法1】おまとめローン

借金を減額する1つ目の方法として、おまとめローンの活用が挙げられます。

おまとめローンとは、複数の借金を1つにまとめる商品・サービスのことです。

あくまでも貸金業者などの金融機関が提供するサービスの1つなので、裁判所などの専門機関とかかわらずに利用できる手軽さがあります

それでは、おまとめローンのメリット・デメリットについて、それぞれ見ていきましょう。

参考:2 総量規制にかかわらず、お借入れできる貸付けの契約があります – 日本貸金業協会

おまとめローンのメリット

おまとめローンのメリットは次の4点です。

  1. 総量規制を気にせずに借り換えできる
  2. 返済窓口の数を減らせる
  3. 毎月の返済額を減らせる
  4. 低利息で借り換えられる

法的手続きを踏まずに現在の返済状況を楽にできるので、それぞれのメリットについて確認していきましょう。

総量規制を気にせずに借り換えできる

おまとめローンは総量規制の例外貸付けに該当するので、収入と借り入れ総額を気にせずに借り換えできます。

総量規制とは、”年収の1/3を超える借金はできない”という原則のことです。年収の1/3を超える借金を抱えてしまうと債務者の健全な生活が脅かされるリスクが高まることから、貸金業者からの借り入れ額には条件が加えられています。

ただし、年収の1/3を超える借り換えであったとしても、利息条件などを総合的に考慮すると債務者側のメリットが大きいと考えられる取引があるのも事実です。

そして、おまとめローンには多くのメリットがあると考えられるので、総量規制が及ばない商品として扱われます。

返済窓口の数を減らせる

おまとめローンに借り換えれば、返済窓口の数を減らせます。

たとえば、A社・B社・C社の3社から各100万円ずつ借り入れをしている場面を考えてみましょう。

毎月の返済日が異なると、毎月ABC社それぞれのために3回の返済日をこなす必要があります。毎月複数回の返済日に備えるのは手間がかかりますし、払い忘れて滞納するリスクもあるでしょう。

この状況で、ABC社のすべての借金をX社のおまとめローンに借り換えをすると、ABCからの借金がなくなり、「X社だけから300万円を借りている」という状況を作り出せます。

これなら、毎月1回の返済日にお金を用意するだけで管理が楽になるので、手間も払い忘れのリスクも避けられるはずです。

毎月の返済額を減らせる

ほとんどのおまとめローンを利用すれば、毎月の返済額を減らせるというメリットが得られます。

先ほどのABC3社からの各100万円の借り入れをX社にまとめる例を前提に、毎月A社に3万円、B社に2万円、C社に2万円を返済しているとすると、毎月返済に必要なのは7万円です。

ここで、X社のおまとめローンを利用すると、毎月の返済額を債務者が自由に設定できるので、たとえば家計に無理が生じない4万円に減額することも可能になります。差額の3万円は生活費や預貯金など、自由に使えます。

もちろん、金融機関ごとに提供するおまとめローン商品の内容が異なるので一概にはいえませんが、おまとめローンなら「毎月の返済額を減額したい」という希望もかなえられるでしょう。

低利息で借り換えられる

ほとんどのおまとめローンは通常のカードローンなどと比べて低利息条件で設定されているので、毎月あたりの利息負担額は軽減されます。

特に、おまとめローンの総額が増えるほど低利率になるので、借金総額が多い債務者はおまとめローンに借り換えた方が利息面ではメリットが大きいはずです。

たとえば、ABC社からの各借り入れの利息条件が利息制限法の上限金利ギリギリの15%のケースを考えてみましょう。今のままの年利条件では、債務者側の利息負担はかなり重い状況です。

その一方で、おまとめローンの種類にもよりますが、低金利のものなら1%代の利率から借り換えできるものもあります。

債務者を借金生活に縛りつけている諸悪の根源は「利息」なので、利息条件が緩やかになるほど返済負担は軽減されるでしょう。

MEMO
おまとめローンは、消費者金融系のものと銀行系のものに大別できます。銀行系の方が低利息条件での借り換えが可能なので、債務者にとって有利です。ただし、その分借り換え審査が厳しくなる点にご注意ください。

おまとめローンのデメリット

続いて、おまとめローンのデメリットを説明します。

返済管理を楽にして毎月の返済負担額も軽減できるおまとめローンですが、借り換えの際には次の4点のデメリットに注意が必要です。

  1. 厳しい審査がある
  2. 借金総額が減るわけではない
  3. 返済期間が長期化する
  4. 最終的な返済総額が増えるリスクがある

それでは、各デメリットについて考察していきます。

厳しい審査がある

おまとめローンに借り換えるためには厳しい審査に通らなければいけません。

また、低金利条件で借り換えが可能な銀行系おまとめローンの方が借り換え審査は厳しい傾向にあります。

希望者全員がおまとめローンへの借り換えができるわけではないのでご注意ください。

借金額が減るわけではない

おまとめローンは複数の借り入れを一本化するだけなので、元本総額が減るわけではありません

ABC社からそれぞれ100万円ずつ借り入れているケースなら、X社に借り換えをしても借金総額は300万円のままです。

したがって、借金総額を減らして返済負担を軽減したい場合には、おまとめローンではなく後述の債務整理をご検討ください。

返済期間が長期化する

おまとめローンに借り換えをすると、毎月の返済額を減額できる代わりに、完済までの返済期間が長期化するリスクがあります

たとえば、ABC社からそれぞれ100万円借り入れているケースにおいて、各社に毎月2万円ずつ返済している状況について考えてみましょう。

(利息を考慮しない前提で)毎月2万円ずつ(合計6万円)返済すると、すべての借金を完済できるのは50カ月後です。

これに対して、X社に300万円の借金を一本化して毎月の返済額を4万円に設定すると、完済までには75カ月かかります。

したがって、毎月の返済負担が軽くなるメリットの代償として返済期間の長期化は避けられません。

返済期間の長期化を防いでスムーズに完済を目指そう

返済期間の長期化を避けられない性質があるおまとめローンですが、次の方法を活用すれば、返済期間を短縮できます。

  • 繰り上げ返済:翌月分以降の支払いを前倒しする方法
  • 毎月の返済額の増額:返済額をアップする

現在複数の借り入れの返済に困っている債務者のなかには、返済期日に間に合わせるために家計管理がおろそかになっているという人も少なくないでしょう。

おまとめローンへ借り換えれば毎月の返済状況が落ち着くので、家計は経済的に安定します。

すると、次第に家計から返済額を用意しやすくなるはずなので、繰り上げ返済・返済額の増額も容易になるでしょう。

したがって、これらの手段を臨機応変に採用すれば、おまとめローンの”返済期間の長期化”というデメリットを克服できると考えられます。

最終的な返済総額が増えるリスクがある

返済期間が長期に及ぶ結果として、最終的な返済負担総額が借り換え前よりも増えるリスクが生じます。

というのも、契約するおまとめローンの融資条件と返済スケジュール次第では発生する利息総額が膨れあがる可能性があるからです。

借り換え前は【高い利率で(比較的)短期間】借り換え後は【低い利率で長期間】、それぞれ利息が発生します。状況次第では後者の方が利息の発生総額が増えるのは明らかです。

したがって、「最終的な利息発生額も抑えたい」と希望する債務者は、おまとめローンに借り換える前に返済シミュレーションを実施して、完済までの返済プランを丁寧にご検討ください。

【借金を減額する方法2】過払い金返還請求

2つ目の借金を減額する方法は、過払い金返還請求です。

過払い金とは、利息制限法に定められている上限金利規制(利息制限法第1条)に違反する融資条件で”払い過ぎていた”利息のこと。本来支払う必要のないお金なので、返還請求で取り戻すことができます。

それでは、過払い金返還請求のメリット・デメリットについて見ていきましょう。

MEMO
借金元本額に応じて、次のように異なる上限利率が定められている。特に、2010年6月に貸金業法が改正されてグレーゾーン金利が撤廃される前から借金を返済している債務者については、過払い金が発生している可能性が高いので注意が必要。

  • 10万円未満:年利20%
  • 10万円以上100万円未満:年利18%
  • 100万円以上:年利15%

参照:貸金業法のキホン – 金融庁

過払い金返還請求のメリット

過払い金返還請求のメリットは、お金が手元に戻ってくるということです。

過払い金として戻ってくる金額が残債より高額なら、その時点で借金返済生活は終了します。

その一方で、過払い金が残債より少なくても残債の返済に充当されるので、借金の完済が楽になるはずです。

過払い金返還請求のデメリット

借金返済中の債務者が過払い金返還請求をするときには、次の3つのデメリットに注意しなければいけません。

  • ブラックリストに登録されるリスクがある
  • ゼロ和解をされるリスクがある
  • 過払い金の計算に手間がかかる

以下では、それぞれのデメリットについて解説します。

ブラックリストに登録されるリスクがある

過払い金返還請求は借金を減額する方法として有効な法的手続きですが、“残債よりも過払い金が少ないケース”に限ってはブラックリストに登録されるというデメリットが生じます。

なぜなら、過払い金で残債すべてを補うことができれば債権者とのかかわりは終了しますが、過払い金が残債に満たない以上は「今後の返済計画の見直し」が必要になるからです。

ブラックリストに登録されると、次のような弊害が日常生活に生じます。

  • 新たな借金・ローンを契約できなくなる
  • クレジットカードが使えなくなる
  • 保証人の資格を失う
  • 賃貸物件の入居審査に通りにくくなる
  • 携帯電話・スマホ端末代金の分割払いができない

ただし、ブラックリストに登録されるのは5年程度だけですし、債務整理を利用した場合にもブラックリストへの登録は避けられないので、過払い金請求のデメリットとしてそこまで懸念する必要はありません。

MEMO
「ブラックリストへの登録」とは、正式には「信用情報機関に事故情報が登録されること」を意味する。信用情報機関とは、人々の信用情報(年収・勤続年数・ローン状況など)をまとめて管理する組織のことです。

ゼロ和解をされるリスクがある

過払い金返還請求によって借金を減額するためには過去の取引履歴をチェックする工程を踏まなければいけませんが、過払い金返還請求を察知した債権者側からゼロ和解を提案される可能性があります。

ゼロ和解とは、「債権者・債務者間に一切の債権債務関係がないこと」を旨とする和解のことです。

過払い金返還請求をすれば残債以上の金額と取り戻せたはずなのに、気軽な気持ちでゼロ和解に応じてしまうと、過払い金返還請求が認められなくなってしまいます

注意
このように貸金業者などは自分たちが損をしないための方策を次々にうってくる可能性があります。これでは、法律にうとい債務者本人だけでは知らないうちに損をしてしまうでしょう。したがって、過払い金返還請求でお金を取り戻すときには司法書士などの専門家の助けを借りるのがおすすめです。

過払い金の計算に手間がかかる

過払い金返還請求で借金の減額を目指すときには、債務者側で過払い金の発生額を特定しなければいけません。

その際には、取引履歴を確認、引き直し計算をした後で、貸金業者との間で交渉を進める必要があります

この作業を債務者個人が行うには労力・時間がかかるでしょう。仕事などの合間をぬって行わなければいけない債務者にとっては大きなストレス要因にもなりかねません。

司法書士などの専門家に依頼をすればほとんどすべての手続きを代行してくれるので、債務者は今まで通りの生活を送りながら過払い金を取り戻すことができます。

【借金を減額する方法3】債務整理

3つ目の借金を減額する方法は、債務整理です。

債務整理とは、借金の返済で苦しむ債務者のために、合法的に借金を減免できる救済措置のこと。

任意整理・個人再生・自己破産の3種類の手続きのなかから、債務者が希望するものを選択して、借金生活で疲弊した家計状況の改善を目指せます。

それでは、各債務整理手続きについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。

任意整理なら債権者と話し合って完済を目指せる

任意整理とは、裁判所を利用せずに債権者と直接借金の減額を交渉する債務整理手続きのことです。

任意整理の具体的な手続きの流れについては、「任意整理とは何ですか?」をご参照ください。

それでは、任意整理による借金減額にはどのようなメリット・デメリットがあるのかについて具体的に見ていきましょう。

任意整理のメリット

任意整理のメリットとしては次の2点が挙げられます。

  • 将来利息の発生を抑えられる
  • 家族に知られずに利用しやすい
将来利息の発生を抑えられる

任意整理の減額交渉では、一般的に「将来利息の発生を抑える」という内容で合意が形成されます。

つまり、任意整理で和解案が成立した後は元本だけを返済すればよいとされるので、任意整理前よりも完済に近づきやすくなるでしょう。

ただし、”交渉をスタートしてから和解案がまとまるまでの期間”については、利息が発生するとされるのが一般的です。

したがって、「返済総額をできるだけ減額したい」と希望する債務者が任意整理を利用する場合には、できるだけ早期に和解交渉をまとめた方が有利になると考えられます。

家族に知られずに利用しやすい

任意整理は裁判所を利用せずに手続きを進められる債務整理なので、裁判所からの郵便物などが自宅に届くことはありません。

したがって、家族に借金の事実を知られるリスクを抑えられます

ただし、任意整理後は3年~5年の期間をかけて返済を継続しなければいけません。

その間、家計を適切に管理して毎月の返済額を用意しなければいけない以上、同居家族の協力を得た方がスムーズに完済までたどりつけるとも考えられるでしょう。ご家庭の事情などを考慮してご判断ください。

任意整理のデメリット

次に、任意整理のデメリットを紹介します。

他の債務整理手続きと比較するとデメリットは小さいといわれますが、以下2点には注意が必要です。

  • 債権者が応じてくれないと交渉さえできない
  • 和解案成立後は原則3年は返済生活がつづく
債権者が応じてくれないと交渉さえできない

任意整理は債権者を強制的に交渉のテーブルに引き出すことはできないので、債権者が応じてくれなければ和解交渉自体を進めることができません。

これは、“裁判所を利用せずに柔軟に交渉を進められる”というメリットの代償です。

したがって、強制力をもって債務整理を進めたい場合には、自己破産・個人再生をご利用ください。

MEMO
任意整理には債権者への強制力はありませんが、司法書士などの専門家に依頼すれば交渉に応じてくれる可能性が高まります。たとえば、「任意整理交渉に応じてくれなければ別の債務整理で大幅な減額を狙う」などのような駆け引きを交渉材料に使ってくれるからです。
和解案成立後は原則3年は返済生活がつづく

任意整理なら将来利息の分だけ借金を減額できますが、和解成立時点までの借金はそのまま残るので、原則3年程度は借金返済生活が続きます。

返済を継続できるだけの資力があれば問題ありませんが、十分な収入がなければ和解案をまとめるのは難しいでしょう。

したがって、「今すぐ借金生活から抜け出したい」「これ以上返済を続けるだけの余裕はない」という債務者は、任意整理ではなく自己破産による解決を目指すのがおすすめです。

注意
たとえば専業主婦のように収入が一切ない債務者の場合でも、収入のあるパートナーが返済を確約してくれるのなら、任意整理で和解案をまとめられる可能性があります。「収入はないが任意整理を利用したい」というニーズを満たす余地はあるので、司法書士などの専門家までご相談ください。

個人再生ならマイホームを手元に残せる

個人再生とは、裁判所における手続きによって、利息だけではなく借金元本まで減額を狙える債務整理手続きのことです。

個人再生の具体的な手続きの流れについては、「個人民事再生とは何ですか?」を参考にしてください。

それでは、個人再生のメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。

個人再生のメリット

個人再生で借金の減額を狙う場合には、次の2点のメリットが得られます。

  • 借金元本額を大幅に減額できる
  • 住宅ローンの特則がある
借金元本額を大幅に減額できる

個人再生では、将来利息だけではなく、借金元本も大幅に減額できるというメリットが生まれます。

つまり、将来利息しかカットできない任意整理と比較すると、個人再生の借金減額効果は相当大きいと考えられるでしょう。

どれくらい借金を減額できるかについては、次のように借金総額に応じて減額率が決められています(民事再生法第231条)。

  • 100万円未満:全額弁済
  • 100万円以上500万円未満:100万円まで減額
  • 500万円以上1,500万円未満:借金総額の1/5まで減額
  • 1,500万円以上3,000万円未満:300万円まで減額
  • 3,000万円以上5,000万円未満:借金総額の1/10まで減額

たとえば、抱えている借金総額が200万円なら100万円まで減額可能ですし、800万円なら160万円まで借金を減らせます。

このように、個人再生は任意整理よりも踏み込んで借金を減額する方法だと考えられるので、「できるだけ完済までの過程を楽にしたい」と希望する債務者にはおすすめの借金減額方法です。

注意
個人再生の減額率の原則論はここで紹介した通りですが、例外的に債務者が一定の財産を所有している場合には「清算価値保障原則」が働くので、債務者の最低弁済額は割高になります。このように、個人再生を利用する場合には今後の返済計画を決めるにあたって複雑な事情を考慮する必要があるので、司法書士などの専門家への相談を強くおすすめします。
住宅ローンの特則がある

個人再生では”住宅資金特別条項”(民事再生法第196条~206条)という特別ルールが定められているので、住宅ローンだけは従来通り維持したまま他の借金の減額を狙うことができます。

この特別ルールがなければ、住宅ローン返済中のマイホームは抵当権等が実行されて処分されかねません。

しかし、個人再生の住宅資金特別条項のおかげで、債務者は今の居住環境を追い出されることなく家計の改善を狙えます

したがって、自己破産による自宅処分を嫌いながらも任意整理以上の減額を求める債務者には個人再生がおすすめです。

MEMO
住宅資金特別条項の適用を受けるためには詳細な要件を充たす必要がある。債務者個人では判断がつきにくいので、必ず専門家までご相談ください。

個人再生のデメリット

個人再生で借金の減額を求める場合のデメリットは次の3点です。

  • 一定の安定的な収入が必要
  • 家族に隠すのが難しい
  • 手続き・要件が複雑なので債務者本人だけでは進めにくい
一定の収入がなければ個人再生は利用できない

任意整理以上に借金を減額できるとはいえ、個人再生でも計画案の認可後は約3年~5年をかけて残債の完済を目指さなければいけません。

したがって、個人再生で借金の減額を目指す債務者には継続的な安定収入が求められるので、無職や非正規雇用の人が認可を受けるのは難しいでしょう。

収入面に不安がある債務者は、自己破産による免責を狙うのがおすすめです。

家族に隠すのが難しい

個人再生は裁判所を利用する債務整理手続きなので、家族に隠したまま手続きを進めるのは簡単ではありません。

また、個人再生計画が認可された後の返済生活を考えると、同居家族のサポートがあった方が家計管理も適切に行えるはずです。

したがって、「どうしても家族に知られるのを避けたい」という人は任意整理を選択するのがおすすめですし、個人再生にこだわるのなら家族に正直に話をしておくのが無難だと考えられます。

手続きが複雑なので債務者だけで進めにくい

個人再生は、任意整理・自己破産と比べて手続き・要件が複雑です。

ここまで紹介したように、たとえば、借金の減額幅を考えるときには清算価値保障原則も考慮する必要がありますし、住宅資金特別条項の要件充足の判断も簡単ではありません。

さらに、そもそも給与所得者等再生・小規模個人再生のいずれの手続きで借金の減額を目指すのかなど、検討すべき法的問題が山積しています。

したがって、自己破産・任意整理に比べると債務者本人だけでは手続きを進めるのが難しいと考えられるので、かならず司法書士などの専門家のアドバイスを求めましょう。

自己破産なら今すぐ借金返済から解放される

自己破産とは、裁判所における手続きを利用して、債務者が抱えているすべての借金の返済義務を帳消し(免責)にする債務整理手続きのことです。

つまり、任意整理・個人再生は借金を”減額”する方法ですが、自己破産は借金を”免除”する方法だと位置づけられるので、厳しい家計状況に追いこまれている債務者にとっての最終的な救済措置だと考えられます。

ただし、「返済義務の免除」は債務者側から見れば大きなメリットをもたらす一方で、債権者側から見れば「貸したお金を回収し損ねる」という大きなデメリットを強いるもの。本来、法的には対等であるはずの当事者間に不公平をもたらすものです。

そこで、自己破産では債権者・債務者の利益調整を行うために、手続きのなかにいろいろな特徴が盛り込まれています。

「借金生活から抜け出したい」という希望から自己破産の利用を検討している債務者は、事前に注意点などをしっかり押さえておきましょう

なお、自己破産の具体的な手続きの流れについては「自己破産とは何ですか?」を参考にしてください。

自己破産のメリット

自己破産のメリットは次の2点です。

  • 借金返済義務からの解放
  • 無職でも利用できる手続き
ほとんどすべての借金返済義務から解放される

自己破産の最大の魅力は、原則としてすべての借金返済義務が免責されるので、手続き終了後には、晴れて借金返済生活から抜け出せるという点です。

返済生活がつづく限り、債務者は経済的にも精神的にもプレッシャーを受けるもの。自己破産ならすべてのストレス要因から一度に脱却できるので、借金問題の早期解決を希望する債務者におすすめでの債務整理手続きです。

注意
例外的に、自己破産後にも借金返済義務が残る「非免責債権」というものが存在する。税金・罰金の滞納分や悪質な損害賠償責任、養育費などがこれに当たる。借金総額のうち非免責債権の占める割合が高いと自己破産の実効性に疑問が残るので、事前に専門家の判断を仰ごう。
無職でも利用できる

自己破産では収入要件が課されていないので、会社員はもちろんのこと、収入面に不安があるフリーター・無職の人でも利用できます

つまり、一定の継続的な安定収入が求められる個人再生・任意整理とは異なり、誰でも生活を立て直すチャンスを与えられる手続きです。

自己破産のデメリット

次に、自己破産のデメリットを押さえておきましょう。

  • 債務者名義の財産が処分される
  • ギャンブルが原因の借金は免責されにくい
  • 手続き中に制限事項がある
債務者名義の財産が処分される

自己破産では、借金返済義務が免除される代わりに、債務者名義の財産が現金に換えられて債権者に配当されます

つまり、債務整理手続き後も今まで通りの環境で生活ができる個人再生・任意整理とは異なり、マイホームやその他財産を手放した状態で生活をリスタートさせなければいけません。

MEMO
もちろん、債務者の財産がすべて処分されると生活の立て直しが不可能に。そこで、一定範囲の財産(自由財産・新得財産など)は債務者の手元に残せるように制度設計されています。処分対象の財産の範囲について事前に目安を立てるのが重要なので、かならず司法書士などの専門家にアドバイスを求めましょう。
ギャンブルが原因の借金は免責されにくい

自己破産では、借金の原因次第で免責されない可能性があることに注意が必要です。これを「免責不許可事由(破産法第252条1項各号)」と呼びます。

たとえば、ギャンブルなどの射光行為、株式取引、買い物などの浪費癖が原因で作った借金の場合には、免責不許可事由に該当するので当然には免責されません

また、他にも、免責不許可事由には偏頗(へんぱ)弁済、破産手続きの進行を妨げる行為なども列挙されています。

したがって、借金の原因に不安のある債務者は、自己破産を申し立てる前に手続き上の戦略をたてるために司法書士などの専門家に相談してください。

MEMO
免責不許可事由に該当する事実があったとしても、「裁量免責」というルールのなかで免責許可獲得を目指すことができます。裁量免責とは、担当裁判官の独自判断で免責を認めるというもの。たとえばギャンブルが原因で借金を背負ったとしても、本人が反省し今後の生活再建を約束しているケースではチャンスを与えても差し支えないと判断されます。
ギャンブルで作った借金も債務整理できる?借金を整理するためにするべきことを解説 ギャンブルで作った借金も債務整理できる?借金を整理するためにするべきことを解説
手続き中に制限事項がある

自己破産を申し立ててから免責許可が確定するまでには数カ月~半年の時間がかかるのが一般的ですが、その間、次のようなデメリットが発生する点に注意が必要です。

  • 職業・資格が制限される仕事がある
  • 郵便物の管理制限
  • 移動の自由を制限される

たとえば、警備員や士業従事者は、破産手続き中は仕事ができなくなります。また、破産手続き中は自分で郵便物を管理できず、出張・旅行をする際にも事前に裁判所の許可が必要です。

破産手続き中の数カ月間とはいえ、これらの制限を嫌う債務者は、自己破産以外の方法で借金の減額を狙うのがおすすめです。

債務者の状況に応じて適切な借金減額方法を選択しよう

以上で紹介したように、どのような形で厳しい返済状況に追いこまれていたとしても、合法的に借金を減額する方法は用意されているので、不必要なまでに思いつめる必要はありません。

ただし、生活を立て直すための方法が与えられているからといって、いつまでも悠長に構えていては事態は日々深刻になるだけです。

借金問題の解決は、「いかに早期に具体的な対策に踏み出すか」がポイント。早いタイミングで解決に向けて動きだすほど、スムーズな生活再建が実現されます

したがって、いつまでもつづく返済生活に疑問を抱き、これ以上の返済継続が難しいと感じるのなら、今回紹介した借金減額方法のいずれかをご検討ください。

また、どの方法が自分に向いているのか分からないのなら、遠慮なく司法書士などの専門家に相談をしましょう。債務整理の実績が豊富なプロなら、債務者にとってもっとも適切な選択肢を提示してくれるはずです。

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