「総量規制オーバーが原因で追加融資を断られた」「総量規制以上に借りることができる裏ワザが知りたい」など、借金生活が常態化している債務者のなかには、借り過ぎとは分かっていても借金を頼らなければ生活費を工面できない状況に追い込まれることも少なくはないでしょう。
確かに、世の中には総量規制オーバーの債務者にも貸し付けてくれる中小の街金業者が存在しますし、また、除外貸付け・例外貸付けなどの枠内で追加融資を受けることも不可能ではありません。
ただ、総量規制は「これ以上借金を抱えると危険だ」という基準を示すもの。総量規制の”裏ワザ”を頼ったとしても、長期的な視点で見れば債務者の経済事情が回復しないのは明らかです。
そこで今回は、総量規制の抜け道と称されるものの内容・危険性について解説します。あわせて、借金問題を根本的から見直す方法も紹介するので、最後までご一読ください。
なお、どこからもお金を借りられないときの対処法については以下のリンク先でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
もうお金を借りられない時の対処法とは?根本的な借金問題の解決方法も解説目次
総量規制の抜け道はリスクと隣り合わせ
総量規制の抜け道及びそのリスクについて考える前に、まずは総量規制というルールについて正確に理解する必要があります。
総量規制オーバーを理由として追加融資を断られてた債務者にとっては「総量規制=悪」というイメージかもしれませんが、実は、総量規制とは債務者自身を守るために定められている法規制です。
ですから、総量規制の抜け道を探るのではなく、総量規制に抵触するほどの借金を抱えてしまった現状に真摯に向き合う必要があるといえるでしょう。
総量規制とは債務者を借金苦から守るためのルール
総量規制とは、個人の借入総額が年収の3分の1を超えることを原則として禁止する制度のことです(貸金業法第13条の2)。たとえば、年収300万円なら借金は100万円まで、450万円なら150万円までとなります。
本来、借金をするか否か・いくら借入れるか・どのような条件で貸付けるかなどについては、私人間で自由に決めることができるはず。なぜなら、金銭消費貸借契約は民事上に分類される取引行為だからです。
ただ、無制限な貸付け行為を許容してしまうと、消費者金融などの貸金業者が経済的に疲弊している債務者につけこむおそれがあります。つまり、貸し過ぎ・借り過ぎは最低限の生活さえ脅かしかねないハイリスクの取引だということです。
そこで、総量規制というルールを定めることによって、貸金業者の貸し過ぎによって債務者が生活を維持できないほどの借金を抱えることを防止するという運用がとられています。
総量規制以上に借りたいときに利用できる抜け道は4つ
あくまでも理屈上の話ですが、総量規制以上に借りたいときの合法的な抜け道は存在します。
具体的には、次の4つの方法です。
- 銀行から借入れる
- 総量規制の除外貸付を利用する
- 総量規制の例外貸付を利用する
- 年収アップで総量規制の範囲を増やす
それでは、総量規制の抜け道と称される4つの方法について、それぞれ具体的に見ていきましょう。
参照:2 総量規制にかかわらず、お借入れできる貸付けの契約があります – 日本貸金業協会
1:銀行などから借入れる
総量規制について定めている貸金業法の適用を受けるのは消費者金融などの貸金業者のみ。つまり、銀行・信用金庫・信用組合・労働金庫・農協などの貸金業者に含まれない金融機関からならば総量規制とは無関係に融資を受けられるということです。
したがって、銀行本体が提供しているカードローン・おまとめローンを利用すれば、総量規制オーバーでも借金できると考えられます。
総量規制オーバーの債務者に銀行がお金を貸してくれる可能性は低い
銀行からの借金は総量規制の対象外になりますが、だからといって「総量規制とは無関係に銀行が融資をしてくれる」というわけではありません。
なぜなら、総量規制に抵触するほど借金を抱えている債務者の信用情報レベルでは銀行の融資審査に通らない可能性が高いからです。
一般的に、消費者金融などの貸金業者と比べて、銀行は融資の際の審査基準が厳しいといわれています(厳しい審査をクリアしたからこそ、消費者金融等よりも緩やかな融資条件が設定されることになります)。
つまり、いわば総量規制よりも厳しい条件が総合的に考慮されるので、高額の借金を抱えている債務者では銀行系商品には手を出せないのが実情です。
銀行のおまとめローンに手を出しても借金問題は長引くリスクが高い
複数の消費者金融から同時に借金をしている多重債務者のなかには、銀行のおまとめローンへの借り換えによって借金問題解決を目指そうとしている人もいるでしょう。
おまとめローンとは、複数社のカードローンなどをひとつにまとめる商品のこと。特に銀行系おまとめローンは低金利条件なので利息負担を軽減できますし、返済窓口を一本化すれば家計管理が楽になる・毎月の返済額を抑えられるというメリットが得られます。
ただし、多重債務者が銀行のおまとめローンには次のようなデメリットがある点にも注意しなければいけません。
- 毎月の返済額を抑えすぎると返済期間が長期化する
- 低金利条件だとしても返済期間が長期化すると利息発生総額が増えるリスクが生じる
- おまとめローン審査も厳しい基準が設定されるので簡単には借り換えできない
- おまとめローン審査に落ちると信用情報にキズがつく
つまり、おまとめローンには「計画的な借金返済生活を送りやすい」というメリットがある反面、いつまでも借金生活が終わらず支払い総額も増える危険に晒されるということです(”計画的な返済生活”がいつまでもつづくというのは計画的だとは言えないでしょう)。
したがって、借金問題解決のために銀行のおまとめローンを視野に入れるのは適切な選択肢ではありません。自分の現在の収入でカバーできないほどの返済状況に追い込まれているのなら、債務整理で返済状況を根本的に見直すべきでしょう。
クレジットカードのショッピング枠も総量規制の対象外
クレジットカード会社は総量規制の対象に含まれますが、総量規制の範囲にカウントされるのはキャッシングサービスのみ。つまり、総量規制ギリギリまで借入をしている状況でも、クレジットカードのショッピング枠を利用して買い物をすることは可能だということです。
なぜなら、ショッピング利用は割賦販売法の適用を受ける立て替え払いの取引だからです。
ただし、ショッピング利用における分割払い・リボ払い・ボーナス払いには「高い手数料」という落とし穴がある点に注意しなければいけません。実際、分割払いやリボ払いの手数料は非常に厳しい条件が定められており、消費者金融の利息並みとなっています。
したがって、「総量規制オーバーの状態だからショッピング利用を上手く活用して生活をやりくりしよう」「ショッピング枠で高価品を購入して転売すれば現金が手に入る」などという抜け道を頼るのではなく、手元にあるお金で生活すること・収入の範囲で生活できないなら債務整理に切り替えることを前向きにご検討ください。
参照:令和2年度改正割賦販売法の関係法令・規定等 – 経済産業省
知人・親族からの個人的な借金も総量規制の対象外
知人・親族など、個人的なお金の貸し借りは総量規制の対象外です。つまり、総量規制オーバーの債務者でも友人などから借金するのは差支えありません。
ただし、個人間でのお金の貸し借りは想像以上のリスクをはらむものですし、曖昧な口約束でやり取りをしてしまうと「貸した、返した」の水掛け論になって深刻なトラブルに発展するリスクも生じます。
したがって、知人や親族からの融資を頼るときには、借用書を用意して、借入総額・返済方法・返済期限・利息条件などについて客観的に証明できる状態を作っておくのがポイントです。
2:総量規制の除外貸付を利用する
総量規制の「除外貸付」に該当する取引なら、総量規制オーバーか否かにかかわらず利用できます。除外貸付該当の借入額は残高にカウントされないので、その後の借入に影響を与えることはありません。
総量規制の除外貸付に該当する代表例は次の通り。これらのものは総量規制の趣旨(=債務者保護)に馴染まないのがその理由です(貸金業法施行規則第10条の21 個人過剰貸付契約から除かれる契約)。
- 不動産の購入・建設・改良のための貸付け(住宅ローン)
- 不動産の購入・リフォームなどのつなぎ資金としての貸付け(売却代金で返済できるもの)
- 自動車購入時の自動車担保貸付け(自動車ローン)
- 健康保険法などに定められる「高額療養費」のための貸付け
- 有価証券を担保とする貸付け
- 不動産を担保とする貸付け(個人顧客・担保提供者の居宅などの自宅担保を除く)
つまり、現在総量規制に抵触するほど借金を抱えている債務者でも、住宅ローン・自動車ローンなどを組むことは禁止されていないということです(もちろん、消費者金融などから高額借入中の債務者が住宅ローン等の審査に通るか否かは別問題です)。これらの取引を総量規制の枠内に含めてしまうと、ほとんどの人が住宅や自動車を購入できないことは明らかですし、適宜必要な医療行為を受けられないリスクも生じます。
ただし、総量規制の除外貸付に該当する目的別ローンによる借入を別目的で使用することは契約違反なので、債権者に知られるとローン契約を解除されるリスクが生じます。借金返済などのために不正利用するのは厳禁です。
3:総量規制の例外貸付を利用する
総量規制の「例外貸付」に該当する取引でも、総量規制とは無関係に資金調達することが可能です。
ただし、例外貸付に該当する取引では、借入額が総量規制の残高にカウントされるため、総量規制オーバーの状態になった場合には「除外貸付」「例外貸付」以外の借金が一切できなくなる点にご注意ください。
総量規制の例外貸付該当取引は次の通りです(貸金業法施行規則第10条の23 個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約等)。
- おまとめローンなど、債務者に一方的に有利な条件の借り換え
- 低利率条件の商品など、借金残高を段階的に減少させる借り換え
- 債務者や家族・親族などの医療費資金のために緊急に必要な貸付
- 社会通念上緊急かつ必要と認められる費用のための貸付け(10万円以下、返済期間3カ月以内などの要件)
- 配偶者の収入と合算した総額年収1/3までの貸付け(配偶者の同意が必須)
- 個人事業主への貸付け(事業計画等から返済能力をチェックする必要あり)
- 新事業を営む個人事業主の開業資金
- 預金取扱金融機関からの貸付を受けるまでの「つなぎ融資」(1カ月以内に返済などの要件)
消費者金融のおまとめローンはハイリスク
先ほど紹介したように、銀行系のおまとめローンが債務者に過度な返済負担を強いるリスクがありますが、消費者金融系のカードローンには銀行系カードローン以上のリスクが存在する点に注意しなければいけません。
なぜなら、深刻な多重債務状態にある債務者にとっては、おまとめローンの活用によって今よりも事態は回復するように見えるかもしれませんが、元々”酷過ぎる状態”だったのが、借り換えによって”少し酷い状態”になったため、相対的に事態が好転したかのような錯覚におちいるだけです。
たとえば、厳しい審査条件が課される銀行系カードローンに比べると、消費者金融系カードローンの審査基準は比較的甘いのが特徴。そのため、多くの債務者が消費者金融系おまとめローンを頼らざるを得ませんが、その代償として厳しい利息条件を課されます。
また、債務者の過去の取引履歴にもよりますが、おまとめローンを滞納した場合に科されるペナルティも消費者金融の方が厳しい傾向に。たとえば、取り立ての態様が厳しかったり、返済期限の猶予交渉がしにくかったりします。
したがって、銀行系のおまとめローンは当然のことですが、消費者金融系のカードローンにも手を出さないのが適切でしょう。現在の返済状況を少しでも改善したいのなら、別商品への借り換えという選択肢ではなく、債務整理という合法の救済措置を活用するのがおすすめです。
パートナーの収入枠を利用して追加融資を受けるなら丁寧なコミュニケーションが必須
現在専業主婦やパート・アルバイトの方は、債務者自身の収入が少ないため少額の借入でも総量規制に抵触してしまうことがあるでしょう。
この場合には、パートナーの年収を合算して総量規制の上限枠を計算できるため、世帯収入の1/3までの借入が可能となります(いわゆる「配偶者貸付」と呼ばれるものです)。
たとえば、妻の年収が90万円なら総量規制の関係で30万円までしか借金できませんが、夫の年収が510万円あれば夫婦合算の収入は600万円となるので、200万円までの追加融資を利用できるということです。
ただし、配偶者の収入を総量規制に組み入れるためには、配偶者の年収を証明する書類・パートナーの同意書・夫婦関係を証明する公的書類を提出しなければいけませんし、パートナー自身の借金総額も審査内容に含まれます。また、債務者本人が返済不能になった場合には配偶者が返済義務の負担を強いられる点にも注意が必要です。
世帯全体で借金を抱えるのは、今後の建設的な人生プランの妨げになるリスクが伴います。「高収入の配偶者の収入を頼って借入総額を増やす」という考え方ではなく、「パートナーの収入を頼って借金問題を改善する」という方向性で動き出すのがポイントです。収入が充分あれば借金の自力完済も不可能ではないので、ご夫婦間で丁寧に話し合いをしてください。
なお、夫婦間で生じた借金トラブルへの対処法については以下のリンク先で詳しく紹介しています。あわせてご一読ください。
妻が借金していた場合、夫に返済義務はある?今後の対処法も詳しく解説個人事業主としての事業用融資を借金返済に充てるのは厳禁
個人事業主が事業用資金の調達目的で借入をする場合には例外貸付に該当するため総量規制は及びませんが、事業用資金として調達したお金を個人的な借金返済に充てるのは厳禁です。
なぜなら、税務申告時に計上のズレが生じて税務調査等の負担を強いられるリスクがあるだけでなく、延滞金・追徴などの負担を強いられる可能性も生じるからです。
また、事業用資金の返済が厳しい状況なら利息を経費計上するなどの節税方法や、個人事業主として債務整理する手段も残されてるので、正攻法で資金繰りに向き合いましょう。
4:年収アップで総量規制の範囲を増やす
総量規制が意味するルールは「年収の1/3までしか借金できない」というもの。つまり、債務者本人の年収が増えれば、それだけ総量規制の借入上限額もアップするので、追加融資を受けることが可能となります。
もっとも、現在勤務中の企業でいきなり収入が増えることは考えにくいもの。多くの場合、昇進・昇給などの時期が決まっているため、臨機応変に収入を増やすのは簡単ではありません。
そこでポイントになるのが、副業を利用して収入を増やすという方法です。会社からの給与以外の収入なら比較的簡単に手にしやすいはずです。
ただし、総量規制の基準に含まれる「年収」とは、給与・年金・恩給・定期的に受領する不動産の賃貸収入・年間の事業所得のみ(貸金業法施行規則第10条の22第1項 年間の給与に類する定期的な収入の金額等)。
つまり、以下のようなものは総量規制の算定基準となる「年収」には含まれないため注意が必要です。
- 宝くじや競馬などによる一時的な収入
- 株式などの投資活動による配当所得
- 個人事業主ではない方のネット等での副業(雑所得に該当するため)
現在では副業解禁の流れが主流になっていますが、会社によっては就業規則で副業を禁止している場合があるので、事前の確認が不可欠です。
また、副業によって定期的に収入を得ることが可能になった場合には、「借入上限額を増やすため」に利用するのではなく、「副業収入を現在抱えている借金問題を解決して家計を安定させるため」に活用することをご検討ください。収入に余裕が生まれたなら、借金生活から抜け出すチャンスといえるでしょう。
なお、借金返済に向けて役立つ副業やその注意点については以下のリンク先でも詳しく紹介しています。あわせて参考にしてください。
借金返済におすすめの副業って何がある?副業をする際の注意点も解説総量規制オーバーで抜け道を探している債務者がやってはいけない3つのこと
総量規制の抜け道を探している債務者の多くは、借金の返済で追われているはず。ネットなどで金策方法を検索しているでしょう。
ただ、経済的にひっ迫した債務者をターゲットにする落とし穴は実にたくさん存在するもの。「借金問題と真正面から向き合う」という確固たる精神がなければ簡単に騙されて想定外のリスクに晒されてしまいます。
総量規制の抜け道を探している債務者がやってはいけないことは次の3点です。
- 街金・闇金に手を出す
- ネットなどで横行している違法取引に手を出す
- 借金問題解決を諦めてしまう
それでは、借金問題で追いつめられた債務者が手を出してはいけない3つのことについて、それぞれ具体的に見ていきましょう。
1:街金・闇金に手を出す
総量規制オーバーを理由に消費者金融等で追加融資を断られたにもかかわらず「借金を頼るしかない」と思い込んでいる債務者のなかには、「総量規制オーバーでも融資可能」などの広告を出している業者に釣られてしまう人が少なくありません。
ただ、貸金業者である以上、総量規制について定める貸金業法を遵守する義務があるはず。これに違反して違法に営業する業者は悪質な街金・闇金の可能性が高いので絶対に関わらないようにしてください。
悪質な街金・闇金から融資を受けてしまうと、次のようなリスクに晒されます。
- 借金を完済させてもらえない
- 違法利息を請求される
- 危険な取り立てで生活の平穏が脅かされる
闇金は債務者を借金漬けにして取引を終了させない
悪質な街金・闇金の目的は、どこからも借入ができない債務者を囲って利益を貪ることです。そのためなら、何かと言い訳を取り繕って「借金を完済できない状況」を作り出すことにも余念がありません。
たとえば、次のような行為で完済を阻まれると、いつまでも借金漬けにされるリスクに晒されます。
- 返済日に電話が繋がらなくなる
- 勝手に口座にお金が振り込まれて「借金をした」という口実を作られる
闇金の利息条件は違法なことが多い
自分たちが違法な貸金業を行っていることを闇金自身もよく分かっているため、検挙リスクを下げるために短期間で高利息を奪い取ろうとするケースが多いです。
たとえば、トイチ(10日で1割)・トサン(10日で3割)・トゴ(10日で5割)などの厳しい利息条件を強要されると、債務者はいつまでも闇金からの借金を完済できません。
そもそも、金銭消費貸借契約における上限金利は年利率15%~20%に設定されています(利息制限法第1条)。つまり、闇金が定める利息条件は明らかに違法のことが多いです。
利息制限法・貸金業法に違反する闇金業者に返済する必要はないので、すみやかに弁護士・司法書士へ闇金対応を依頼して関係を断ってもらいましょう。
闇金の借金取り立てでは債務者に危険が及ぶ
債務者から金銭を搾取する目的で、闇金は非常に厳しい取り立て行為を実施するのが一般的です。
たとえば、次のような取り立てを実施されると債務者の生活の平穏が脅かされてしまうでしょう。
- 早朝深夜にかかわらず1日何十回・何百回も電話をかけられる
- 自宅まで取立人がやってきて「殺すぞ」などの文句で脅される
- 自宅に勝手に侵入して返済するまで退去してくれない
- 職場や近隣住民に嫌がらせをして債務者の居場所をなくしてしまう
- 勝手にデリバリーを注文するなどの嫌がらせ行為をする
これらの取り立て行為は刑法等に違反する犯罪行為の可能性が高いです。被害を受けて身の危険を感じた場合にはすみやかに110番通報をして警察に助けを求めましょう。
2:ネットなどで横行している違法取引に手を出す
総量規制オーバーで資金調達に苦しんでいる債務者のなかには、「簡単にお金が手に入る方法」「即日融資可能」などの宣伝文句を魅力的に感じる人も少なくないでしょう。
ただ、そもそも「簡単にお金が手に入る方法」など存在しません。特に、総量規制に抵触するほど借金を抱え込んでしまった債務者が利用できる「裏ワザ」のような手法には危険しかないとご理解ください。
たとえば、ネットなどで横行している次のような取引に手を出しても借金問題解決にはまったく役に立たないので、絶対に手を出さないようにしましょう。
- 給料ファクタリング:給与債権の事前買取によって給料日前に現金を取得する取引。高額の手数料を取られたり、会社に迷惑がかかったりする。
- 口座買取・口座レンタル:債務者名義で開設した預貯金口座を第三者に引き渡して対価を得る取引。債務者自身が詐欺罪に問われ得る。
- 携帯電話買取:債務者名義の携帯電話を第三者に引き渡す。高額の通話料・通信料を請求されたり、振り込め詐欺などの犯罪行為に巻き込まれたりする。
- ひととき融資:融資の対価として売春行為等を強要される。写真・動画などがネットに晒されたり強請り行為を受けたりする。
3:借金問題解決を諦めてしまう
総量規制オーバーでどこからも融資を受けられない債務者が絶対にやってはいけないのが、借金問題の解決を諦めてしまうことです。
たとえば、借金の返済に追われて誰も助けてくれない状況で、特に家族にも借金の相談をできないほどの孤独に追い込まれてしまうと、借金問題から現実逃避をしたくなることもあるでしょう。
しかし、借金問題から目を背けることにはデメリットしかありません。なぜなら、借金の返済を放置すると次の5つの滞納ペナルティが発生する可能性が高いからです。
- 滞納を解消するまで取り立てがつづく
- 滞納日数に応じて遅延損害金が発生する
- 延滞期間が長期に及ぶとブラックリストに登録される
- 延滞期間が長期に及ぶと残債を一括請求される
- 最終的には強制執行で財産などが差し押さえられる
①滞納翌日~:取り立てがスタートする
借金返済を諦めて滞納が生じると、滞納翌日もしくは数日後から取り立てがスタートします。
督促状・催告書などの郵便物が送付されたり、携帯電話に何度も着信があったり、債務者を精神的に追いつめるでしょう。
また、度重なる債権者からの問い合わせさえ無視してしまうと、自宅訪問や職場への連絡が実施されることもあります。
これでは、債務者本人だけではなく、家族や会社の人にも迷惑がかかってしまうでしょう。
なお、消費者金融などからの督促電話を無視するデメリットについては以下のリンク先でも詳しく解説しています。あわせてご一読ください。
借金の督促電話を無視するとどうなる?放置することで起こり得る5つのリスクとは②滞納翌日~:遅延損害金が発生する
借金の返済期限までにお金を用意できないと、滞納翌日から1日単位で遅延損害金という罰金が科されます。
遅延損害金は年利率20%で算出されることが多いため、利息負担よりも深刻な返済負担となるものです。たとえば、借金残債200万円なら、滞納1日で約1,096円、滞納1週間で約7,671円、滞納1カ月で約33,972円の遅延損害金が発生します。
遅延損害金は滞納を解消しなければいつまでも発生しつづけるものです。借金問題を克服して生活再建を目指すなら、早期に遅延損害金の発生を抑えるために債務整理などに着手するべきでしょう。
③滞納2カ月~:ブラックリストに登録される
延滞期間が2カ月を経過したタイミングで、債務者の滞納情報が信用情報機関に提供されて事故情報(異動情報)が登録されることに。これによって、いわゆるブラックリスト状態におちいります(過去の延滞履歴次第ではもっと早いタイミングでブラックリスト登録されるリスクがあります)。
ブラックリストへの登録によって生じるデメリットは次の通りです。
- クレジットカードが利用停止・強制解約される(ETC機能・家族カードなども)
- 他社のクレカにも新規入会できない
- 新規のローン契約等が一切不可能になる
- 携帯電話の端末代金を分割払いできなくなる(一括で支払えば端末契約・機種変更は可能)
- 子どもの奨学金の連帯保証人・保証人資格が認められない
- 賃貸物件の入居審査・更新審査に引っかかる(信販系保証会社付き物件のみ)
なお、ブラックリストに登録されるデメリットや登録期間中の対処法については以下のリンク先で詳しく解説しています。あわせてご参考ください。
ブラックリストって何?借金を滞納すると掲載される?掲載期間や今後の影響を解説④滞納2カ月~:残債を一括請求される
借金の返済を諦めて2カ月程度が経過すると、債権者から残債の一括返済を求める通知書が届きます。この書面を受け取ると、指定された期限までに全額を用意しなければいけません。
それまでは分割払いが認められていたはずなのに、いきなり残債の一括返済義務が生じるのは、滞納ペナルティとして債務者が「期限の利益」を喪失するからです。
期限の利益とは、「分割払いを認めてもらう権利」のこと。つまり、期限の利益を喪失することによって分割払いができなくなるため、債権者からの一括請求を拒絶できなくなってしまいます。
毎月数万円の支払いさえ難しい債務者にとって、いきなり総量規制オーバー状態の借金数百万円の返済に応じるのは不可能に近いでしょう。このまま何の対処法にも踏み出さなければ、次の項目で紹介する強制執行を避けられません。
⑤滞納3カ月~:強制執行が実行される
債権者の裁量次第ですが、延滞期間が3カ月以上に及ぶといつ強制執行が実行されてもおかしくない状況に追い込まれます。
強制執行とは、債務者の財産などを差し押さえることによって債権回収を目指す法的措置のこと。支払督促・通常裁判というプロセスで「債務名義」を取得した債権者が強制執行手続きに着手するため、何の対抗策もとらなければ次の財産などが差し押さえられてしまいます。
- 給与:毎月の給与手取り額の1/4が給料から天引きされる。手取り額44万円超なら、33万円超の部分が全額天引き。
- 預貯金口座:債権者に知られた債務者名義の預貯金口座残高が全額処分される。口座を開設している金融機関との間でローン契約を締結していると口座凍結のリスクに晒される。
- 債務者名義の財産:動産・不動産にかかわらず処分対象となる。手元に残せるのは最低限の生活必需品などの差し押さえ禁止財産のみ。
たとえば、給与が差し押さえられると会社に連絡がいくので、職場の人に迷惑がかかってしまいます。また、毎月天引きされた給与しか受け取れないため、借金返済中よりも家計がひっ迫するおそれさえ生じかねません。
また、債務者名義でマイホームを購入している場合には、不動産差し押さえによって競売処分にかけられてしまいます。自宅を手放すことになると、家族にも転居・転校を強いられるなどの迷惑がかかるでしょう。
このように、強制執行は債務者の生活を根底から覆す重いペナルティです。総量規制オーバーで誰にも頼れない現状から目を背けるとこのような最悪の事態に追い込まれる危険性があるため、早期に債務整理などの対策に踏み出すべきだと考えられます。
総量規制オーバーの債務者が借金問題解決に向けて考えるべき3つのこと
総量規制オーバーで返済苦にあえぐ債務者が最初に理解するべきことは、「追加融資などを頼らなくても借金問題はかならず解決できる」というポイント。抜け道などを探らなくても、合法的に返済状況を改善することは可能です。
借金問題解決に役立つ方法は次の3つ。現在の返済状況などを総合的に考慮して、どの選択肢を採用するかご検討ください。
- 弁護士・司法書士へ債務整理について相談する
- 家計収支を見直して借金自力完済の糸口をつかむ
- 行政の支援制度などを活用して生活の立て直しを図る
それでは、借金問題に役立つ前向きな解決方法について、それぞれ具体的に見ていきましょう。
1:弁護士・司法書士へ債務整理について相談する
総量規制オーバーの借金を自分で返済できない状況なら、債務整理で借金内容を根本的に見直すのがおすすめです。
債務整理とは、国が認めた合法の借金救済制度のこと。本当なら契約に基づいて返さなければいけない借金ですが、債務整理は例外的・合法的に返済内容を軽減・免責できる救済措置と位置付けられます。
そして、債務整理を利用するなら弁護士・司法書士という法律の専門家に相談してください。
なぜなら、借金問題について専門家に相談することによって次の5つのメリットが得られるからです。
- 債務者の状況に適した債務整理手続きを検討してくれる
- 債務整理の必要性を判断できる
- 債務整理以外の解決方法も提案してくれる
- 専門家に債務整理を依頼すれば返済督促が停止する
- 債務整理費用の不安にも対応してくれる
なお、弁護士・司法書士のどちらに相談するかお悩みの方は以下のリンク先をご参照ください。大まかな目安は、債務整理手続きのフルサポートを希望するなら弁護士に、費用を抑えてポイントを押さえたアドバイスを欲するなら司法書士に、という棲み分けです。
債務整理は弁護士・司法書士のどちらに依頼すべき?ケースごとに上手に使い分けよう専門家は債務者の状況に適した債務整理手続きを検討してくれる
弁護士・司法書士に相談すれば、債務者の状況・希望を総合的に考慮して適切な債務整理手続きを選択してくれます。
実は、債務整理には任意整理・個人民事再生・自己破産の3種類の手続きが存在し、それぞれ次のようなメリット・デメリットがあるために、客観的に状況を勘案して適切な生活再建方法を選択しなければいけません。
- 任意整理のメリット
- ・将来利息の支払い義務が免除される
・借金元本のみの返済だけで良しとされる
・残債の一括請求後でも分割払い計画を作り直せる
・裁判所を利用せずにスムーズに和解交渉を進められる
・連帯保証人への迷惑を回避できる
・他の債務整理手続きに比べて安価・迅速に解決を目指せる - 任意整理のデメリット
- ・債権者が交渉に応じてくれないと手続きを進められない
・和解契約成立後は数年間借金返済生活がつづく
・再作成する分割払い計画次第では毎月の返済額が増える(総支払額は減るが)
・ブラックリストに約5年程度登録される
・他の債務整理に比べると借金減額効果が小さい
- 個人民事再生のメリット
- ・借金残債総額次第で元本自体を減額できる
・マイホーム特則を利用すれば住宅ローン返済中の自宅を残せる
・借金の理由を問わず誰でも利用できる
・自己破産を避けながら減額効果を期待できる - 個人民事再生のデメリット
- ・所有財産が多いほど減額効果を得にくい
・裁判所の手続き負担が重い
・安定した収入を得ていないと認可を受けられない
・手続き終了後は3年間返済生活がつづく
・官報に掲載される
・ブラックリストに約10年間登録される
- 自己破産のメリット
- ・消費者金融などからの借入の返済義務免責を狙える
・無職やフリーターでも利用できる
・免責許可が確定すれば借金生活が終了する - 自己破産のデメリット
- ・非免責債権(税金や養育費・一定の慰謝料など)は免責対象外
・債務者名義の財産などが処分される(手元に残せるのは「自由財産」のみ)
・免責不許可事由が存在すると手続きの難易度が高くなる(管財事件・裁量免責へ)
・破産手続き中に職業制限が生じる仕事がある(警備員・士業など)
・破産手続き中の移動制限・郵便物の管理制限が生じる
・官報や破産者名簿に掲載される
・ブラックリストに約10年間登録される
各債務整理手続きの特徴はまったく異なるものなので、債務者側で自分に見合った手続きを選択しなければいけません。
たとえば、「もう借金生活は嫌だ」と考えるのなら自己破産で免責を狙うべきでしょう。ただ、自己破産にはかなり重いデメリットがついてくるので、「仕事ができなくなるのは困る」「所有財産を手放したくない」という希望があるのなら自己破産以外の選択を探るしかありません。
もし、自己破産を避けるとしてもできるだけ大きな借金減額効果を期待するなら個人民事再生が適切。なぜなら、任意整理では認められにくい「元本自体の減額」を目指せるからです。その一方で、「個人民事再生の費用を捻出するのが厳しい」「できるだけ家族に知られずに解決に向けた糸口をつかみたい」のなら任意整理交渉で実践可能な和解計画作成を目指すべきでしょう。
このように、どの債務整理手続きを選択するべきかについては、制度内容を熟知したうえで、債務者の置かれた状況を客観的に分析する作業が不可欠です。法律の素人では判断がつきにくいため、できる限り弁護士・司法書士のアドバイスを参考にして手続き選択をするべきでしょう。
なお、総量規制オーバーの債務者にとっての救済措置である「債務整理」については以下のリンク先でも詳しく紹介しています。あわせてご一読ください。
国が認めた借金救済制度ってなに?救済制度である債務整理の内容を徹底解説専門家に相談すれば債務整理の必要性を判断できる
弁護士・司法書士に相談したからといって、「かならず債務整理に踏み出さなければいけない」というわけではありません。
先ほど紹介したように、債務整理手続きにはそれぞれデメリットも存在します。そして、弁護士・司法書士に相談すれば「そもそも債務整理を頼る必要があるのか」という大前提から検討してくれるため、余計な手続きに手を出さずに済むでしょう(債務整理せずに自力完済を目指す場合にはこちらをチェックしてください)。
とはいえ、総量規制オーバーの債務者の多くは何かしらの経済的トラブルを抱えているのは間違いないはず。たとえば、次のような兆候が見られるのなら債務整理を利用するべきタイミングだと考えられるので、債務整理に対して前向きになるべきでしょう。
- 借金癖が治らない
- 借金の滞納癖がある
- 多重債務状態におちいっている
- 総量規制オーバーが原因で追加融資を断られた
- 借金生活が原因で精神的な負担が生じている
- 収入が減少して家計に不安が生まれた
- 結婚などの人生の転機で借金問題と前向きに向き合う気持ちになった
なお、債務整理に踏み出すべきタイミングの見極め方については以下のリンク先でも紹介しています。あわせて参考にしてください。
【債務整理を検討すべき8つのタイミング】早めの対策が借金生活から楽に抜け出すポイント借金問題に強い専門家に相談すれば債務整理以外の解決方法も提案してくれる
債務者に与えられた法的アプローチは債務整理だけではありません。
債務者の置かれた状況次第ですが、弁護士・司法書士は次の2つの方法も視野に入れて生活再建の可能性を探ってくれます。
- 過払い金返還請求:消費者金融などと長期取引をしている債務者が対象。手元にお金が戻ってくる可能性もある。
- 消滅時効の援用:債権者からの取り立てが長期間停止している場合に返済義務の消滅を狙える。細かい要件・手続き上の注意点を踏まえる必要があるため、専門家の判断を仰ぐべき。
専門家に債務整理を依頼すれば返済督促が停止する
弁護士・司法書士に債務整理を依頼すれば、その時点で貸金業者等からのすべての返済督促が停止します(貸金業法第21条1項9号)。これによって、債務者は取り立てストレスから解放されるでしょう。
債務者から依頼を受けた専門家は、委任契約を締結してすぐに債権者に「受任通知」と呼ばれる書面を送付します。受任通知は、「債務整理を開始する旨」「手続きに弁護士・司法書士が介入する旨」「債務者本人への取り立てを停止する旨」を伝えるものです。
ただし、専門家が受任通知を送付してくれるのは債務整理を依頼したときだけ。「受任通知だけの送付」を依頼することはできないのでご注意ください(債務整理と受任通知送付はセットだと考えましょう)。
専門家は債務整理費用の不安にも対応してくれる
総量規制オーバーの債務者のなかには、「弁護士・司法書士に相談したいが費用が不安」「債務整理をするだけのお金を用意できない」とお悩みの方も少なくないでしょう。
確かに、債務整理という法的措置を積極的に活用する以上、どうしても一定の費用負担を避けられません。
ただし、専門家サイドも債務者の家計がひっ迫していることは重々承知しているため、相談料無料・費用の分割払い・法テラスの債務整理費用立替制度との連携などの手厚いサポート体制を用意してくれているのがほとんどです。
「お金がないから債務整理もできない」と諦めるのではなく、費用面の不安もそのまま相談してみましょう。
なお、債務整理費用を用意できない場合の対処法については以下のリンク先でも紹介しているのでご参考ください。
債務整理費用が支払えない場合はどうする?費用が用意できなくても債務整理をする方法を解説2:家計収支を見直して借金自力完済の糸口をつかむ
総量規制に抵触するほど借入総額が増えてしまった債務者でも、債務整理せずに自力完済を目指すことは不可能ではありません。
たとえば、次のようなステップを踏んで自力完済が可能かを判断してみましょう。
- 取引明細などを確認して借金残債総額をチェック
- 完済までの返済スケジュールを再確認
- 支出の節約・収入アップなどで返済計画を実践できるか検討
- 安定した返済生活を送れるなら繰り上げ返済・返済額の増額で完済前倒し可能かを判断
総量規制に抵触するほどの借金を抱えているのなら、しっかりした家計管理を前提として積極的に借金を減らす努力をしなければ高額の利息負担を強いられます。
返済工夫を凝らして完済を前倒しできる状況なら自力完済を目指すのも間違いではありませんが、当初の返済スケージュールをこなすだけで精一杯なら躊躇なく債務整理に踏み出すべきでしょう。
なお、返済計画の見直し方については以下のリンク先で詳しく紹介しています。あわせてご一読ください。
借金の返済計画はどうやって立てる?無理なく完済を目指せる返済シミュレーションの作り方3:行政の支援制度などを活用して生活の立て直しを図る
総量規制オーバーの借金を抱える債務者のなかには、生活費の工面さえ難しいという人も少なくないでしょう。
生活基盤が崩れると借金生活に向き合うことも難しくなるため、行政などのサポートを頼るのがおすすめです。
たとえば、次のような支援制度が用意されているので、お住まいの自治体相談窓口までお問い合わせください。
総量規制の抜け道は解決に役立たない!借金問題に向き合う覚悟が必要
総量規制オーバーの借金を抱える債務者にとって大切なことは、総量規制の抜け道を探すのではなく真正面から借金問題と向き合う勇気をもつことです。
裏ワザなど利用しなくても借金問題は合法的に解決できます。
そして、弁護士・司法書士に相談すれば債務者に見合った生活再建方法を提案してくれるはず。解決に向けて動き出すタイミングが早いほどスムーズに返済状況を改善できるので、早期にお問い合わせください。